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わざとみんながいるところで何度も大きな声で誘うので、当然のことながら上司の耳にも入りました。
「今までのことは置いといて、これからは君と仲良くやっていきたいんじゃないのか。会社としても、そうしてもらえると助かる」
そう上司に言われて、私も観念しました。
業務命令となれば仕方がありません。
その週の週末、彼に連れていかれたのは郊外の廃墟のようなところでした。
けっこう広いところです。
「俺はいつもここでやっているんだ」
その場所は、前は何かの工場だったところで、建物は残っていませんが土台のコンクリートはそのままで、たしかにスケボーをやるにはいい場所に見えました。
「じゃあ手本を見せるから」
彼は私にヘルメットや保護具を渡すと、さっさと滑り始めました。
そして私が防具をつけ終わったころ、わたしのところにやって来ました。
「やってみてよ」
「やったことないんだけど」
「大丈夫、大丈夫。俺が押すから」
私がスケボーに乗ると、彼ががっちりと私の腰の辺りを抱え込みました。
「それじゃあ、行くぞ」
掛け声とともに彼が私を押し始めました。
「そーれっ」
ゆっくりだったのは、最初の短い時間だけでした。
あっと言う間にスピードが上がり、ほぼ全力で走るぐらいの速さになりました。