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降霊術と思わせつつ、実は…

 放課後、リコと過ごすようになって、僕の学校生活は激変した。今まで、なんとも思っていなかった学校が楽しく感じられるようになったのだ。話し掛けてくる友人も少しずつ増えていった。


「久古くんって、なんか変わったね」


「そう?」


「うん、なんか話しやすくなった気がするよ」


 そう、リコと話すようになってから、他の人と話すのも楽になったのだ。自分の何が変わったのかはわからないが、放課後だけでなく、学校生活自体が楽しく感じられた。


 もちろん、放課後、リコと怖い話を考えるのが一番楽しいのは変わらなかった。


「この間は、記念すべき第1作目の『呪いのカウントダウンメール』ができました。今回は、その時に話題に上がった降霊術系のお話を考えたいと思います」


 仰々しく話すリコに調子を合わせて頷いてみせる。


「ただ、キューには悪いけど、私、降霊術系の話が胡散臭く思えて、しょうがないのよ」


 まさかの告白。


 むしろ、大好物かと思っていた。女子は、コックリさんやエンジェル様とか、好きだと思っていた。もちろん、リコも例外ではなく、好きだと思い込んでいた。


「ひとりかくれんぼって知ってる?」


 もちろん、知っている。ぬいぐるみを使って行う儀式で、かなり危険な降霊術と言われている。


「アレって、目的がイミフじゃない?」


 言われてみると、あの儀式は怖い思いをするのが目的で、他の目的らしいものがわからない。


「コックリさんなら、わかるのよ。あれは、質問に答えてくれるわけだから。まぁ、霊ってだけでなんでも知ってるってのは、ムリがある気がするけど…」


「コックリさんってのは、『狐狗狸(コックリ)さん』って事だから、本来は低級霊じゃなく、神様の使いである狐や狗、狸の霊ってのが神様に代わって、質問に答えてくれる訳だから、なんでも知ってるってテイなんだよ」


「な〜る!じゃ、エンジェル様も同じようなもんね?」


「つまりは、何が言いたいわけ?」


「要はね、霊を呼ぶ必然性が欲しいのよ。質問に答えてくれる、とか願いを叶えてくれるとか、そういうのが欲しいの」


 それを聞いて、僕は家で考えてきたネタを披露する。


「じゃあ、降霊術じゃなくて、反魂法ってのはどう?」


 それを聞いたリコがキョトン顔だけを見せる。


「つまり、リコが考えていたような事は、僕も考えてたってこと。問題は、その降霊術が語り継がれるべきモノかどうかって事」


「そうよ。そこなのよ。あんまり、いい見返りだと皆やりたがるし、見返りが弱いと、語り継がれる事に不自然さが出ちゃう」


「だから、反魂法なんだよ」


「でも、反魂法なんて人類の夢みたいなもんじゃない?都市伝説みたいにヒッソリと語り継がれるレベルじゃないじゃない?」


「じゃ、復活しても別人になってしまうとしたら?」


「…反魂法ってのは、生き残った人がやる事よね?別人になったとしても、生き返って欲しいって思うかってこと?

 答えは、YESだわ。大事な人を失って、なんとか生き返らせる方法が、別人になってしまう方法しかなかったとしても、それでも生き返らせたいと思うに決まってる、って私は思うの」


「だろうね。じゃあ、その反魂法に4人の生贄が必要ってなったら?」


「…一気にハードルが上がるわね。逆にそこまでして、別人としてでも、生き返らせる強烈な動機ってあるのかしら?」


「例えば、財宝や財産かな?」


「財宝?」


「そう、財宝や財産の隠し場所を誰にも伝えずに死んだ場合、生き返らせる意味ってのがあるんじゃないかな?しかも、そういう立場の人達なら、使用人や奴隷とか使ってても不思議じゃない。そういう人達を生贄にするのは、自然じゃないかな?」


「なるほどぉ。確かに」


「その反魂法が、伝承されていくうちに降霊術に変換される。しかも、元々は財宝や財産の在り処を聞くためってところが、『質問に何でも答えてくれる』って変換されていくのも、自然じゃないかな?」


「流石、キュー。それで行きましょう。じゃあ、後は儀式の方法を考えましょう」


「実は、それもある程度考えてあるんだ。『スクエア』っていう都市伝説は知ってる?」


『スクエア』、その都市伝説は、昔からある怪談の一つで、暗い部屋の4隅に立った4人が順番に次の隅にいる人にタッチしていく儀式だ。本来、4人目の人が進む先の隅は、空席になってしまい、1巡で終わるはずなのだが、何故か延々と続いてしまうというものだ。

 延々と続く理由は、本来、空席になっている場所に霊が現れるためだという。


 今回、考えた怪談は、その『スクエア』の派生型だ。


 空席になるはずの場所に人形を置くことで、最後にその人形に霊が降りてきて動き始めるという設定を考えたのだ。その人形が、儀式に参加した人間を殺し、3人殺したところで、4人目と魂が交換できるという、かなりコスパの悪い反魂法を考えたのだ。


 僕は、得意気に、その設定を語って聞かせた。


「かなり、ややこしくて、分かりにくいけど、それくらい複雑な方がいいかもしれないわね?」


 リコは、うまく理解できないのか、あまり乗り気ではない反応を示す。


「あんまり、良くないかな?」


「ううん、全然、そんな事ないよ?その反魂法が降霊術に変換されて、伝えられていくうちに『スクエア』って都市伝説ができたって設定にもできるし、簡単に実行できない感じも、よく出来てると思うよ」


「簡単にできない?降霊術と思い込んでたら、簡単にできるんじゃない?」


「今時、完全に四角い部屋って、なかなかないって私は思うの。だって、家具とか色々配置されるんだもん。学校の教室ですら、後ろはランドセルを置くロッカーがあるから、『部屋の4隅』って条件は引っ越したばかりの何も置かれていない部屋か、廃墟みたいに家具が撤去された部屋くらいしか、ないもの」


 なるほど、確かにそうかもしれない。そこまで、考えていなかったが、言われてみると、案外、よく出来てる気がしてくる。


 僕は、その儀式の内容をノートにまとめ始めた。


 ***********************


 パン!


 急に破裂音が、神社に響く。


 僕は、思わず、ビックリして鉛筆を落としてしまう。何が起きたのか?

 慌てて、周りを見回すと、自転車が4台、神社の敷地内を走り回っていた。

 そのうちの2台は、自転車が倒れた際に変速部分を保護するための突起したガード(ハブステップ)がつけられており、そこに乗る形で2人乗りしていて、計6人の子供が、走り回っていた。

 ハブステップに立っている子供は、ロケット花火とライターを持っており、1人で自転車を乗り回している者は、ハンドルに肘を置いた状態で、爆竹とライターを持っていた。隠れて、観察していると、その6人は、3 VS 3に分かれて、ロケット花火を打ち合ったり、相手の自転車の前カゴに爆竹を入れたりと、かなり危険な戦争ごっこをしているようだった。


 高野だ。


 高野が、取り巻きのメンバーを引き連れて、戦争ごっこをしていたのだ。


「あいつ、本当、バカなガキだな…」


「そう?ガキとは思うけど、高野君は頭は悪くないと思うわよ」


 思わず溢した本音に、リコが意外な反応を示す。僕は、それが気に入らなかった。


「なんで?あんな程度の低い奴のどこが頭が悪くないんだよ?」


「だって、彼、よく授業の内容に文句言って、授業を妨害するけど、その内容って結構センスを感じるし、新しい遊びをすぐに考えて、流行らせるし、本当に頭悪かったら、あんな風に他の子が集まって来ないって、私は思うの」


 リコが、高野を認める発言をするのが、何故か、すごく不快だった。


 僕は、リコを無視して、ノートへの記入に没頭した。

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