表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
都市伝 〜近代伝承のススメ〜  作者: スネオメガネ
第5話 ヒトガタ様
39/80

美奈子の場合

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いしますm(_ _)m

 美奈子は、涼子、由宇と別れた後、すぐに携帯を取り出した。LINEを開き、真依にメッセージを送る。


『今日は、大変だったね

 それにしても、由宇、空気読めなさ過ぎ!

 美奈子だけは、いつでも真依の味方だからね!』


 とりあえず、それだけ送って、携帯をしまい、駅に向かった。ここからの最寄りの駅からは、三駅の距離の所に美奈子の家がある。

 涼子と同じ沿線なので、本来ならば二駅のところに住んでいる涼子とは、一緒に行動する事が多くてもおかしくないのだが、涼子はいつも由宇を優先するため、滅多に一緒に行動する事はない。


 電車に乗り込んだところで、LINEの画面を見る。真依に送ったメッセージに既読の文字がついていない。


 まだ、見ていないのか…。


 溜息を吐きながら、携帯をしまう。

 今日は、色々な事があって疲れた。綾子は、突然死んでるし、死体は動くし、御守りは手に入らないし…。

 そこまで考えて、怖くなった美奈子は、周りを見渡す。人がいれば、綾子も襲っては来ないだろう。


 再び、携帯を取り出す美奈子。LINEの画面を見るが、真依の既読を知らせる文字は、まだついていない。


『祝詞だけでも、きっと効果があるよね?』


 とりあえず、LINEにメッセージを追加する。しばらく見ていても、既読がつかない。

 美奈子は、また携帯をしまった。怒っているのだろうか?警察には真依だけが行けばいい、と発言した事で真依を怒らせてしまったのではないか?


 美奈子は、慌てて携帯を取り出す。


『さっき、警察に行くのは、真依1人で行けばいいって言ったのは、一緒に行くと迷惑をかけてしまうと思ったからであって、決して、真依1人のせいって思ってる訳じゃないからね』


 LINEで真依にメッセージを追加する。これで一安心だ。このメッセージさえ見てもらえれば、嫌われる事はないはずだ。安心した美奈子は、再び携帯をしまい目的の駅を迎えた。


 家に帰ると、ちょうど夕飯時となっており、弟の(たかし)が、料理を運んでいた。今夜は天ぷらと冷麦のようだ。


「崇!ちゃっちゃと食べて、塾に行きな!」


 台所から母の声が響く。受験生の崇は午後から塾の夏期講習で、一度夕飯を食べに戻ってきて、その後、また塾に行く形となっていた。


「美奈子も一緒に食べるでしょ?さっさと着替えてきな!」


 美奈子にも、声が掛けられる。


「は〜い」


 おざなりな返事をして、部屋に戻る。部屋着のTシャツとハーフパンツに着替えるためだ。

 部屋で1人になって、改めて、今日の出来事を思い出してしまう。綾子が這っているシーンだ。薄暗い部屋の中で、ゆっくりと這う姿は、衝撃的だった。思い出したかのように携帯を見る。真依の既読は、まだついていない。

 ふと、真依が綾子に襲われたのではないか、と心配になってくる。仮に真依が襲われたとしても、それは自業自得だから、どうでもいい。ただ、その場合、あの祝詞が効かなかった事を意味するのが嫌だった。

 それに、真依が襲われて死んでしまったとしたら、自分が生き残っても、クラスでの地位が悪くなる。


 いや、涼子も由宇も殺されれば、生き残った女子高生として、悲劇のヒロインになれるかもしれない。そうしたら、その手柄を持って、別のグループに入れてもらえばいいのだ。


 誰のグループがいいだろうか?


 ザキヤマちゃんのグループなら目立つし、クラスでの地位も高い。ただ、ザキヤマちゃんがお笑いキャラだから、その相手をするのは面倒だ。それに、あのグループには、美奈子の嫌いな志保(しほ)がいる。まぁ、あの娘が抜ければ、考えてやってもいいかな?


 そんな事を考えながら、着替えを終え、ダイニングに向かう。崇は、すでに半分程、夕食を減らしていたところだった。


「なに?姉ちゃん、機嫌良さそうじゃん」


「まぁね。あんたは、今から塾?受験生は、大変ねぇ」


「姉ちゃんだって、経験したんだろ?それに、姉ちゃんもすぐに大学受験がくるんだろ?今から勉強しとかないとヤバいだろ?頭良くないんだから」


 崇が生意気な事を言う。


「うっさいわ!美奈子には、美奈子のペースがあるんだから、放っといて!」


 言いながら、ナスの天ぷらを頬張る。冷麦のツユにつけた、天ぷらは、サクっとした食感の後、ジューシーな肉感を味合わせてくれる。


 やはり、油と茄子の組合せは最高だ。


 夕食をしっかりと堪能し、お風呂に入る。綾子の這い寄る姿を思い出してしまったせいで、頭を洗う時は、気が気でなかったが、いつも通り、お風呂で女性アイドルの歌を歌いながら、入浴を済ませた。


 夜、寝る時は、生き残った自分を巡って、繰り広げられるだろうグループの争奪戦を妄想して、幸せな眠りについた。


 ***********************


 翌朝、携帯を見るが、まだ真依の既読がついていないのを見て、不安になった。自分が未読スルーされる訳がないはずなので、やはり、真依に何かあったのではないか?と思ったのだ。


『おは〜

 あれから、一晩経ったけど、みんな無事〜?』


 綾子を含めた5人のグループトークにメッセージを投下してみた。これで、何かあれば、わかるだろう。


 しばらく、LINEの画面を見ていると、2つの既読が付いた。誰だろう?


『私は、無事だよ

 涼子は、大丈夫だった?』


 由宇からの返信が表示される。


 なんで、涼子の無事しか確認しないのか?まずは、美奈子こそ大丈夫だった?が、筋ではないのか?


 思わず、舌打ちする。


 その後は、いくら待っても返信がなかった。既読は2つ付いているのに…。反応したのは、由宇だけだった。


 何なのよ!


 美奈子がイライラして、携帯をベッドに置こうとした、その瞬間、着信が入る。


 携帯の画面は、綾子の名前を表示していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ