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都市伝 〜近代伝承のススメ〜  作者: スネオメガネ
第5話 ヒトガタ様
19/80

残念なJK達は廃墟に集う

「悪いんだけど、目的地に着いたら、綾子と2人にしてくんない?」


 綾子と、合流する前に、真依が3人に依頼する。


「なんで?」


 涼子が代表して、質問を投げる。


「あの娘と仲直りするために、2人で話したいのよね」


 ウェーブのかかった髪を弄りながら、真依が返事をする。


「ほら、今はなんとなくギクシャクしてるじゃない?それもこれも、私があの娘に嫉妬しちゃったからなのよねぇ。我ながら、器が小さいなぁって、反省してるわけなのよ」


「真依にしては、殊勝じゃない?なんかあったの?」


 涼子が楽しそうに答えるが、真依は、笑いながらはぐらかしていた。


「まあまあ、とにかく、私と綾子は地下に行くから、あんたらは、適当に2階から上でも見といてよ」


 そう言っていた真依が、1人で戻ってきたのは、美奈子達と別れてから、1時間程が経過した後だった。


「綾子、怒って帰っちゃった。まあ、交渉は決裂ってやつ?まいったわ」


 お手上げといったポーズをとる真依。


「なにやってんのよ?...じゃ、肝試しも終わりにする?」


「ま、せっかくだし、4人で探索を続けましょ?屋上まで行って、景色を見ましょうよ」


 肝試しの中止を提案する涼子に真依が言う。


 それならば、と4人で各階を探索する。確かに不気味な雰囲気ではあるが、昼間ということもあり、肝試しというほどの恐ろしさはなかった。


「こんな事なら、夜とかに来ればよかったかな?」


 涼子が笑いながら話すが、由宇が否定する。


「やめてよ!夜なんかにやるなんて言ったら、絶対に来ないんだから!」


「こういうの嫌いなの?」


「あら、由宇、小学校の頃は、こういうの大好きだったじゃない?」


「そうなの?」


「そうよぉ、由宇ったら、怪談とかすごく好きで、そういうTV番組を探しては、ビデオに録って見てたんだから」


「へぇ、意外」


「昔の話よ」


 涼子と真依の話を由宇が無理矢理打ち切ろうとする。


「美奈子も怖い話は、嫌いだわぁ」


「...へぇ」


 美奈子は、いつも話が終わろうとするタイミングで口を開くため、大抵、残念な感じになる。


「それにしても、高2の夏に女だけで集まって、廃墟とか、ありえないわぁ。こんだけ、綺麗どころが集まって、浮いた話の一つもないのかい?」


 と、涼子。確かに状況を見ると、かなり残念なJK達だった。


「いっが〜い、全然、男っ気のない涼子から、そんな言葉が出るなんてぇ」


「...男っ気がないから、出るんじゃないか...」


 美奈子のツッコミに涼子が答える。


「あら?でも、由宇には晃太(こうた)君がいるじゃない?」


「真依!あいつは、そんなんじゃないから!」


「なになになに?由宇君、君、そんな相手がいるのかい?」


 真依の暴露に、涼子が喰い付く。


「だから、そんなんじゃないってば!」


「いやいやいや、小学校の頃なんて、『由宇は、俺が守る!』なんて、言っちゃって、可愛かったんだから」


「同じ小学校の子かい?」


「中学まで、一緒だったんだけど...、残念ながら、ちょっと頭は弱かったのよね。今は、別の高校に通ってるわ」


「ちょっ、やめてよ、真依。...だいたい、小学校の頃、晃太の事好きだったのは、真依の方じゃない?」


「昔の話よ」


 真依が、冷たく言い放つ。その言い方に由宇が、若干引く。


「で、由宇は、晃太君とは今でも会ってるの?」


 涼子が興味津々に聞く。


「...近所だから、たまに挨拶する程度よ。でも、本当にそれだけで、別に好きとか、付き合うとかそんなんじゃないんだから」


「美奈子は、隣のクラスの浅野君がいいなって思うな」


「...へぇ」


 4人は屋上で、そんな事を言い合いながら、時間は過ぎていった。


「なんだかんだ、結構な時間がたっちゃったね。そろそろ帰ろっか?」


 涼子が、口に出した時、真依が何かに気付いた。


「ちょっと、待って。イヤリングを落としたみたい。たぶん、地下で綾子に突き飛ばされた時に落としたんだわ」


「なに?そんなに険悪な感じになったの?仲直りしようとしたんじゃないのかい?」


「まあ、そうなんだけど...、ちょっと取りに行ってくるから、みんなは先に外に出てて」


「1人で平気?」


「大丈夫よ。地下はちょっと暗いけど...」


 そう言って駆け出す真依を3人は見送った。


 ***********************


「きゃ〜!」


 3人が、真依の叫び声を聞いたのは、玄関近くに進んだ時だった。慌てて、地下に向かう3人。


 そこで見たのは、倒れている綾子と立ち尽くしている真依だった。


 地下とは言え、ところどころ、天井(1階の床)に穴が空いており、ある程度、光が届いていたが、その部屋は、一層暗く、夏の熱気を孕んでいた。


「なんで!?なんで綾子がここに...!?」


 涼子が、真依に詰め寄る。


「知らないわよ。大方、脅かそうと部屋に入って、出られなくなったんじゃない?」


 真依の発言に、3人が部屋の扉を見る。


 内側のドアノブが取れて、四角い棒が突き出ていた。つまり、ドアが閉まってしまうと、内側から開けられない形になっていたのだ。


 涼子が、携帯を開く。


「...圏外だ...」


 こんな暑い部屋に何時間いたのだろう?


「熱中症ってやつかしら?」


 真依が、無感情な声を出す。


 3人は、グッタリと動かない綾子と、その様子をテキパキと確認する真依を見ていた。


「あ〜、やっぱこれ、死んでるわ」


 そんな3人に真依が言い放つ。まるで、大して、気に入ってもいない玩具が壊れたかのような、どうでも良さそうな言い方だった。

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