表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/69

壁の向こう側

遅くなったうえ短くてすみません。改稿時に改題しました。


 イムホテプと独眼の商人は息を飲んだ。

 ガゴンッと大きな音がした。

 スピュリマ元将軍の腕がついに牢の壁を貫通したのだ。


「常人離れした力ですね」

「よせよイム。そんなに褒められると照れちまうだろ」


 独眼の男が壁の向こうをのぞいた。


「これは…隠し通路?」


 手元の明かりで照らしても、先が見えないほど長いようだ。

 壁穴をすこし広げて、小柄な順に通り抜ける。

 商人、イムと続く。

 スピュリマが大きな体を捩じ入れる。


「将軍は無理ですよ」

「ここで諦めるわけにはいかん。もし通路が狭くなったら掘り広げてでも行く」


 二人が慌てて退くと、スピュリマは体で穴を広げながら通路に転がり込んだ。

 ガラガラと一面の壁が崩れ落ちる。


「……」

「……」

「……」


 「進みましょうか」と、イムホテプは将軍の規格外さについて考えるのを放棄した。


 自分の同僚であれば「少しは考えて行動しろ」と叱るところだが、仮にも他国の元将軍である。

 きっと野性的な勘で戦局を乗り切って来たに違いない。コレを使いこなすアシリア前国王の器は大きかったと、認めざるを得なかった。


「私が先頭を、将軍は殿しんがりでお願いします」


 通路を進むにつれて、これが王宮のいろんなところにつながっているのがわかった。上部に時々小さな穴が空いていて、そこから音が聞こえるのだ。


 はじめは神殿なのか、祈りの詞だった。しばらく進むと、謁見の広間の真下に来たようだった。


「王宮書記官の声だ」スピュリマ将軍が小声で言う。

「誰と話しているのか…聞いたことの無い声だ」と顔の広い商人の男が言った。

 もしここにタムカルムが居たら、「あり得ない」と叫んだかもしれない。イムホテプは列の先頭だったことに感謝した。驚嘆した顔を見られずに済んだからだ。

 上方の声に耳を澄ます。




「これはこれは、遠路はるばるお越しいただき、ありがとうございます。事前におうかがいしていればお迎えにあがりましたものを」

「先に部下を送ったのですが、途中で行き違いになったのでしょう。門の警護が厳しいようですし。以前からご依頼の件でしたので急ぎ駆けつけました」

「そうおっしゃいますと、もしや?」


 王宮書記官が期待で目を輝かせる。その前に、10キュービット四方ほどの木箱が運ばれて来た。

 その蓋を、秀麗な青年がはずした。鈍い光が並んでいる。


「ご所望の鉄剣でございます。

ヒタイト帝国王に代わり、第二王子スミュルナがお持ちしました」








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ