ターコイズブルー
短いです。
長い睫毛にふちどられた瞳は、透明感のある青緑色。
間近に見つめられ、霖は吸い込まれるような心地がした。
危機感もなくしばらく呆けていたが、肩を引き寄せられると慌てだす。
「ちょ、ちょっと近い近い近い!」
「…何を言っているのか分からぬ」
顔と顔が近づく。
まるで飛んでくるボールを恐れるように、霖は力いっぱい目を閉じた。色気もへったくれもない。
顎に指が添えられ、顔を傾けられる。
次に温もりを感じたのは─
鼻の先だった。
「え?」
「え?」
鼻の先と鼻の先とが触れて、あっさりと離れる。
真っ赤になった霖を見て、ああ、と青年は何かに気づいたように笑った。
「ケメト風の挨拶だ。知らなかったか?」
「紛らわしいわ!」
霖が叫ぶと、屈強な男が部屋に駆け込んで来た。
「殿下、何事ですか!」
「何事も何も、まだコトには至っておらぬ」
しれっと言い放つと、美青年は立ち上がった。
霖はパッと身を離し、逃げようとしたが、足に力が入らない。数歩動いたところで、座り込んでしまった。
「無理をするな。そなたは二週間も寝込んでいたのだ」
抱き上げようと腕を伸ばした王子に、分隊長が立ちはだかる。
「人払いをしていたはずだが?」
「そいつが起きたのならば話は別です。
身元不明の怪しさに納得したわけではありませんので」
玩として譲らない分隊長。
腰に下げられた剣を見て真っ青になった霖。
「先は長いな」
王子は苦笑しつつ、指示を出した。
「侍医を呼べ。
診察のあとは食事にしよう」
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
私事ですが環境が変わり、同じタイミングでパソコンも壊れ、気力を充電するのに時間がかかりました。いつものことですが、更新が遅くなり申し訳ないです。
スマホで入力したので短いですが投稿しました。
今夜も更新予定です。
読んでくださる皆さまに感謝。