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ナワバリ



 『レベルが1アップして42になりました』

 

 数日ぶりのレベルアップ。

 だが、素直に喜べない。


 なぜならば、明らかにここら辺でとれる獲物が少なくなっているからだ。

 理由は分かっている。

 ここら辺を荒らしまわっている奴がいるからだ。



 後で食べようと思っていたウニやらアワビ等の動きの鈍い獲物、それが軒並みやられているのだ。

 先日の飢餓状態を反省し、余裕のある時は捕食が容易な獲物は後回しにしていたのが裏目に出た形だ。

 

 今レベルアップした時に食した獲物も、数時間探し回ってようやく見つけたのだ。

 この遅さは明らかに、俺の成長速度に影響を与えている。



 


 

 なわばりを犯すもの、許せん。


 と言っても、別にマーキングで俺の縄張りだと他人に示しているわけでもない。

 法務局に行って自分の縄張りだと登記しているわけでもない。

 

 俺が勝手にここら辺の海域を自分の縄張りだと思い込んでいるだけである。


 それでも、ここ数日は俺の天下だった土地に他の生物の痕跡を発見した時には、言いようの無い怒りが沸き起こる。

 

 ぶっちゃけて言うと、侵入者を殺してでも縄張りを奪い返したい。



 

 俺は度重なるレベルアップによって体もだいぶ大きくなった。

 先日、俺が仕留めた巨大魚に匹敵する程だ。


 巨大魚と言っても、当時の俺に比べればという意味だ。

 せいぜい15cm、大きくても30cmぐらいだろうか。


 とはいえ、それぐらい大きくなれば文字通り雑魚を一掃するには十分だった。

 ここら辺では俺はトップレベルの大きさになっていた。


 敵無しと言ってもいい。

 そんな俺の今の悩みは、コソ泥に餌を取られる事だ。

 


 今だって俺の獲物を盗もうとどこかに隠れているかもしれない。

 

 「グェッ、グエッ」


 俺は喉を鳴らして周囲を威嚇する。

 野郎、どこに隠れていやがるんだ。


 前触手を振り回しながら海底の小石を吹き飛ばしたり岩場の影を探ったりしたが一向に見つからない。

 

 当たり前か、小さな獲物は目に入りにくい。

 以前は俺がその小ささを利用して強敵から逃れていたが、今度は逆の立場になった。

 大きくなる事も良い事ばかりではない。



 くそー。

 イラつくなあ。

 どうにかしてここを俺だけの狩場にしたい。

 このエリアの主導権を他人に奪われたくない。


 ふと、俺は思い出した。

 そうだ、確かエヴォルポイントというのが溜まっていたはずだ。

 獲物を追いかけることに忙しくてすっかり忘れていた。


 居るかどうかわからない敵の捜索より、まずは自分の強化だ。


 

 えーと、どうすれば使えるんだっけ。


 念じると、機械音声がすぐに反応してきた。


 『貴方が現在所持するエヴォルポイントで開発出来る能力は以下の通りです』



 『スライムのあご

 『地獄アンコウの背びれ』

 『殺人鉄砲魚のうろこ

 『海の主の息子の角』


 『体を小さくする』

 『クラーケンの顎』

 『エビルジョーズの鱗』

 

 

 お、来た来た。

 うーん、便利だ。

 

 

 前回見たことのない選択肢が増えている。

 体を小さくする……これはパスだな。

 せっかくでかくした体を小さくする意味は無いだろう。


 クラーケンの顎、エビルジョーズの鱗。

 これはなんだか強そうだ。


 恐らく顎は攻撃力、鱗は防御力を上げる寸法だろう。


 なんだか本当にゲームみたいだな。


 

 ここは防御を固めよう。

 何時どこで襲われるか分からない世界だ。

 守りを固めるに越したことはない。


 エビルジョーズの鱗で頼む。


 そう機械音声に意思を伝えた途端、体中がムズムズしてきた。


 あああああああ!


 今までの鱗が剥がれ落ちていく。

 痛くは無いが、気持ち悪い。

 

 そして剥がれ落ちた場所から新たな鱗がニョキニョキと生えてくる。


 一分もしないうちに俺の全身は驚くべき変貌を遂げた。

 

 黒っぽく柔らかい鱗から、茶色と赤の入り混じった、けばけばしく派手な鱗に入れ替わった。


 と、思う。

 

 鏡がないから自分の全貌ははっきり分からない。後でよく確認しよう。


 『ハイディングポイントが最高から高に低下しました』


 んん?

 ハイディングポイント、つまり隠ぺい率が下がった。

 他の生物に見つけられやすくなったって事か。


 まぁ、明らかに派手な見た目になったし、これはしょうがないか……



 その時、下半身の方に違和感を覚えた。


 

 見れば、俺の尾びれに近い部分に何者かが噛み付いている。


 俺はリサーチスキルを使用した。

 これで相手が何者かを調べるのだ。


 『凶暴なブリリアント・小魚』

 『凶暴なブリリアント・小魚』

 『凶暴なブリリアント・小魚』

 『凶暴なブリリアント・小魚』

 『凶暴なブリリアント・小魚』

 『凶暴なブリリアント・小魚』


 うお、意外と沢山居た。

 よく見れば、俺の下半身に複数の小魚が噛み付いていた。


 数を頼めば俺を打ち倒せると思ったのか、奴らは小魚の分際で俺に挑みかかって来た。

 だが、パワーアップした俺の敵では無い。

 以前の俺の鱗ならこいつらの顎でも噛みやぶれたかもしれないが、俺の装甲はたった今強化したばかりだ。

 小魚の咬合力程度、物の数では無い。


 あっさりと返り討ちにし、煮干しよろしくむしゃむしゃと食ってやった。


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