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邪魔な蜘蛛


 『レベルが3アップして103レベルになりました』


 森の木の根元に生えていた朝飯のキノコを食しながら、俺は日課のレベルアップに励んでいた。

 

 しかし、レベルがポンポン上がるのは良いが、早く上がる分1レベルアップに対するステータスの上昇は少ないようだ。


 レベルが100以上に上がるという事は分かった。

 それはつまり、レベルの上限が200とか1000の可能性があるという事。

 いや、もしかしたら上限何てなかったりして?


 俺に許されている事と言えばレベルアップぐらいの物だ。

 結構気になる。


 



 ……


 しかし、あの人間達。いやに薄汚れた粗末な服を着ていたな。

 

 あんなファッション見た事無いぞ。

 まるで、洋物ドラマに出てくる中世の農民のようだった。




 まぁ、どうでもいいか。

 今の俺には他人の事を考察している余裕は余り無いんだ。

 今できる事、今やらなければならない事をやるだけだ。


 成長、それが俺に課せられた至上命題だ。




 


 そこから数日間。


 俺は、体の操作の習得と、獲物狩りに時を費やした。


 独特なこのスライムの体の操作は慣れるまで手間取った。

 しかし慣れてからは楽なもの。

 バウンドするこの体と手を使わずに獲物を捕らえることの出来る便利さには舌を巻いた。



 スライムには手が無い。

 手が無いから体の粘着力のある部分を使って獲物を吸着する。


 外から見ればパッと見、スライムのプルプルした体はどこも全部同じに見える。

 だが実は違う。

 

 弾力のある部分、粘着力のある部分、消化液を出す部分と複数の箇所に分かれている。


 そして、その部分は時と場合に応じて体内を移動するのだ。

 バウンドして移動する場合は弾力のある部分を、物に触れる時は粘着力のある部分を表に出して使い分ける。


 そうする事で、この丸っこい体で狩りや移動など普通の動物と変わらない行動を取る事が出来るのだ。




---

 

 今度は簡単な獲物を捕らえる。

 動物性タンパク質が欲しい。

 

 俺の体はどうやら雑食性のようだが、やはり本来は肉食を好むようだ。

 自然に体が肉を求める。





 「キィ!」


 茶色い小さな四足獣が俺の体からするりと抜け出し、颯爽と森の暗闇へ消えていった。



 あ、しまった!


 さっき森で捕まえたネズミを取り逃がしてしまった。


 せっかく捕まえたのに。

 しくじった。

 捕らえる時は粘着する部分で捕まえたのに。

 消化する段階で消化液を含む部分でなく、

 弾力性のある部分で触れてしまったのだ。


 俺はまだ完全にこのブルースライムの体の操作になれていないらしい。


 もっと学習しなければ。








 「ギェェェ!」


 やばい、あいつだ。

 聞き覚えのある声。

 というか、忘れられない。


 あの耳を切り裂くような鳴き声は。


 アームド・スパイダー。

 蜘蛛だ。



 俺は一目散に逃げる。

 どうやらアームドスパイダーはそこらかしこにいるらしかった。


 この森にはかなりの数が生息しているらしく、少し奥に入ればすぐに見つける事が出来る。

 幸い、俺の方が先に発見する事が多い。

 毎回見つかる前に逃げる事が出来ている。



 ただそうなると、俺の狩りは中断される。

 気に入らない。

 



 近くに奴らの巣があるのかもしれない。


 蜘蛛が集団で巣を作るなんて聞いたことが無いが、"俺の持っている常識"が通用する世界だとは思えない。 


 蜘蛛が徒党を組む。

 この世界なら十分に考えられる。

 武器を持っている事から、奴らには道具を使う知能程度はあると考えられる。


 道具を使う頭があるなら、集団生活をしていてもおかしくない。

 


 

 こないだは偶然落とし穴に落とせたおかげで捕食する事が出来た。

 だが、そんな偶然は何度も起きない。


 出会えば即襲ってくる強敵だ。

 向こうはこっちを餌か何かだと思っている。


 正直、ステータス的にも見た目的にも相手にならない。

 俺は弱者だ。

 今は我慢の時だ。


 いつか奴を倒せるようになるまで力を貯めなければ。



 今に見ていろ。

 俺の成長は早い。

 今はこうして隠れてお前等をやり過ごしているが、いずれ追い抜く。

 お前が畜生らしく武器をガチガチさせて辺りを散策している合間に俺はどんどん成長していくのだ。


 ザマーミロ!







--- 一週間後。







 俺はレベル130になっていた。


 ヒットポイント 24

 パワー 16

 ドッジ 18

 ラッキー 9

 ハイディングポイント 最高



 まぁまぁの成長だ。

 といっても、あの蜘蛛には敵わないが。



 狩れる獲物が増えた。

 最初の頃は小動物や昆虫程度しか取れなかった。


 今は少し大きな物も狩れるようになった。


 例えば




 「ピギー!」



 俺の下で、赤いスライムが喘ぐ。


 お仲間のスライムだ。

 俺と違って、赤色をしているがスライムはスライムだ。


 同族殺し、といった感覚は無かった。

 海の中でも特に区別なくサカナを捕食してたしな。


 スライムになってもそれは一緒だった。



 スライムの行動パターンや食性は俺と似たようなものだ。

 主に動物性タンパク質を求め、森や海辺を彷徨っている。

 夜は地面に穴を掘って中に入り、軽く土や草を被せて寝る。


 

 俺はそいつをほじくり返して同胞のスライムを食い殺すというわけだ。


 「ピィー」


 う!


 赤いスライムが俺を見る。

 その視線は「頼むから殺さないでくれ」と訴えていた。


 なーんでこんな表情豊かなんだろう。

 洋ゲーのスライムみたいに顔の無い化け物なら罪悪感など湧かなかったのに。


 悪いな、俺が生き延びるためだ。

 俺は酸を出し、赤いスライムの体内に注入した。

 南無。


 「きゅー……」


 赤いスライムは静かに断末魔を上げて絶命した。


 捕食すると


 『レベルアップしました』


 また、レベルが上がった。


 着実に強くなってきている。

 心なしか、ジェル状のこの体も大きくなった。


 

 だがしかし、あの蜘蛛に勝てる程ではないだろう。


 もっと強くならなければ。

 もっともっと捕食して、力を蓄える。


 そして近いうちに必ず復讐してやる。

 この森を俺の縄張りにするのだ。




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