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レベル上げ



 

 

 餌! 餌! 獲物!


 猛烈な勢いで獲物をガツガツと口に入れる。

 

 あの日から俺はやる気を出して猛然とレベルアップに励むようになった。

 今までもサボっていたわけでは無い。

 それどころか生に向かって努力していたのは間違いない。


 ただ、あの水龍とやらを見てから俺は生に向ける力のベクトルを変えたのだ。

 安全に成長する隠密志向から危険を犯してでも食いまくり成長するパワーレベリング志向へ。


 こそこそと逃げ回って強敵を避けるより、一刻も早く自分を強化して強敵と出会っても蹴散らせるようになろうというわけだ。


 勿論、こないだ出会った水龍には逆立ちしたって敵いっこ無いだろう。

 しかし、この広い大海原だ。

 あいつ以外にも強い奴はたくさんいるはずだ。

 まだ見ぬ強い奴と出会った瞬間即ゲームオーバーになる事はありえる。


 水龍のような大物とばったり出会う事もある。

 水龍以下の生物などゴロゴロいるだろう。


 そいつらと出会った時に最低限、勝てないまでも逃げ出せるぐらいの実力がなければ困る。


 だから、食う。

 食って食って、自分を強化するのだ。

 どれだけ伸びしろがあるかは分からないが、とにかく食ってレベルアップする。

 まだ、強化できる余地はあるはずだ、それを埋め尽くすまで俺は食い続ける。



 『レベルアップしました』

 『レベルアップしました』

 『レベルアップしました』

 『レベルアップしました』

 『レベルアップしました』

 『レベルアップしました』



 ここ一週間はずっとこの調子だ。



 『現在の貴方のレベルは95です』


 ヒットポイント 0.90

 パワー 0.85

 ドッジ 0.70

 ラッキー 0.65

 ハイディングポイント 高


 


 そろそろレベルが100に近づいて来た。

 キリの良い数字。

 ここらで何か起こりそうな気がする。


 つーか、起こって欲しい。

 何の楽しみも無いので、レベル上げが仕事兼趣味みたいになってしまった。

 

 やることが無いからレベリングしかする事が無いのだ。

 なんせ魚類である。

 暇が出来てもやる事などそうあるわけではない。


 せいぜい交尾に励む小魚達にちょっかいを出して生まれたばかりの卵を盗み食いするぐらいだ。

 精子のかかった卵の食べる事にも慣れた。

 


 刑務所の受刑者がやる事が無いので筋トレに励むよう、サバイバルしかする事のない俺はレベリングに励む。



 


 「ギョァァア!」


 ム、敵だ。リサーチ!


 『スライムオクトパス レベル75』


 体が半透明のタコだ。

 完全に保護色なので不意を突かれるほど接近を許してしまった。


 しかし、このスキル使えないなぁ……

 名前とレベルしか表示されない。


 もっとこう、相手のステータスとかが表示されれば役立ちそうなのだが。

 相手によってはそのレベルさえ表示されなかったりする。


 それに、レベルが表示されたからと言って強さが分かるわけでは無い。

 レベルは絶対的な指標では無いのだ。


 こないだ、海藻にリサーチを使ってみたらレベル100の海藻だった。

 海藻にレベルも糞も無いと思うのだが、とにかくこの世界は色々な物にレベルが設定されているらしい。


 もちろん、その海藻は何の抵抗も無く俺の胃袋に飲み込まれていった。






 


 奴は先制攻撃を仕掛けようと俺にその足を延ばす。

 

 

 「グェクェェ!」


 俺も威嚇しながら応戦する。

 このスライムオクトパスは足の吸盤から消化液を出す。

 絡みつかれると厄介だ。


 俺の知っているタコとは違う。

 俺が元居た世界ではこんな奴は居ないはずだ。

 


 だが



 「ギョァ!」


 俺の触手がスライムオクトパスの頭に突き刺さり、貫通する。

 逆に奴に毒を送り込んで殺してやった。


 殺したのだから、こいつは俺の糧となる。

 

 タコだろうがスライムだろうが構わず食す。

 とにかく、動物なら食えばレベル上げの材料になるのだ。


 

 血と肉と栄養が体中に染みわたる。

 


 ……



 あ、この感じ。

 来たわ。


 『レベルアップしました』


 またレベルアップ。

 だが、ステータスの上昇は微々たるもの。

 

 いよいよ、行き詰ってきたのか。


 そう軽く絶望しかけた時、変化は起きた。




 か、体が熱い。

 燃えるようだ。


 『おめでとうございます! 次の段階へと進む事が可能になる資格を得ました』


 おお、やっぱりか。

 これでまた次のステップに進める。


 


 ん? "可能になる資格"?

 何か、もやっとした表現だな。



 『これより進化認定試験が始まります』


 えっえっ。

 どういう事?

 他にする必要な事があるのか?

 試験? どういう事だ。

 ミジンコからサカナに進化する時は何も無かっただろ。

 すっきり進化させてくれよ。


 『進化認定試験は貴方に設定された特別な討伐対象者を捕食する事により成功となります』


 は?


 『特別討伐対象者が貴方の元へ向かっています。後30秒ほどで戦闘にはいります、ご武運をお祈りします』


 おいおいなんだよそれ。

 

 レベルが上がったら"今から殺しあえ"、的な事を言われた。

 わけがわからん


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