91.クミシェル-20
後半ニワトリが勝手に暗いです注意
まあ、嫌な予感ほどよく当たるのが現実の厳しいところ。
おまけに予想の更に下を突きつけてくることだって少なくない。
「あ、ケイさん」
ギルドに入ると、セルジュさんは微妙な表情を見せた。
嬉しさと不安がない交ぜになったような……その両方を説明できる状況はちょっと思いつかない。
「どうしたんですか? 街の雰囲気もだいぶ物騒な感じですけど」
「えっとですね……ここから西に、ネサビクという街があったのですが」
「はい」
「昨日、滅びました」
「えっ」
「そして昨夜、ここクミシェル中央の広場に聖獣の骸が投げ込まれました。当の妖魔によって」
え……どういうこと?
いくらなんでも、そんなあっさり街が滅ぶほど妖魔ってヤバかったっけ。
明らかな宣戦布告していくような奴らじゃなかったはず。
嫌な予感が止まらない。
今までと違うって、それだけでこんなにプレッシャーなんだなー……。
「逃げません?」
「ケイ!」
「そうしたいのは山々なんですけどね。支部長が残るって言ってるのに私だけ脱出なんてできませんよ」
「ですか……」
リーザに睨まれるのは分かってたけど、つい口が滑った。
三十六計逃げるに如かずってね。まあ、策なんていずれ尽きるものだけど。
それでもマズそうなら素直に逃げたい。
僕の精神力なんて所詮その程度だ。
それにしても、あの支部長さすがのカリスマだな。
今は街議会に権限を委譲されて防衛を前提にした指揮を取ってるって話だ。
もう救援を求める連絡も済んでいるらしい。
でも、壊滅した騎士団の再編は不十分だから国からの支援は期待できないとか。
「ここだけの話ですが、かなりの危険が予想されています。戦力も足りませんし、ケイさんたちには是非残って頂きたいんですけど……何故でしょう、早く逃げてほしくもあるんです」
誤魔化すように笑って、セルジュさんは言葉を続ける。
リティオでの諦観を浮かべた表情とは違う理由が何なのか。
僕らを心配してくれてる――なんて。
そんな風に思わせなくても答えは決まってるのに。
故意にか無意識にか、セルジュさんは更に背中を押してくる。
その望みに、僕じゃ応えられないかもしれないのに。
「やっぱり……変、ですよね。どちらにせよ片方の気持ちは伏せておくべきなのに。すいません、私も混乱しちゃってるみたいです」
「大丈夫ですよ」
「ケイさん?」
「なんとかなります。……それにいざとなればリーザなんて、僕じゃ足元にも及ばないくらい頼れますし」
「なな、何言ってんのよ!?」
「そうならないようにするのが僕の役目だけどね」
守る相手を予防線にするとか、最低だな。
そうでもしないと耐えられないなんて。
一人で背負えるくらい強くなりたかったのに、まだ足りない。
もっと強く。
この戦いで妖魔を倒して、レベルを上げれば……そうすれば、少しは強くなれるはずだ。
街の防衛依頼はもう出されていた。
書類を取って申請の手続きをする。
「それでは……良いんですね?」
「「もちろん」」
「リーザ様の御心のままに」
「――ありがとうございます。どうか、無事の帰還を」
シリアスとネガティブが比例する主人公




