83.クミシェル-13
僕らが落ちた落とし穴の分岐は三つ。
とすると、エルザはナジン含むハウンズの三人と行動していることになる。
ハウンズのメンバーだけで行動してるより安心か。
リーザたちも、特に怪我してる様子はない。
それにしても……なんであの落とし穴は分かれてたんだろう?
「やあ、無事なようで良かった!」
「ケイ!?」
「兄貴!」
子供の前でやるのも悪いし、賊は足裏から影の槍で貫くに留めて生き埋めにする。
皆の顔が、何かもの言いたげな感じになった気がした。
「どうかした?」
「ケー兄、今の敵は……?」
「ん? あー……まあ、地獄に直行、みたいな? それとリーザはどうしたの?」
「いや……別に。大したことじゃないし、後で良いわ」
「じゃあ行こうか。と言っても、声を頼りに駆け回ってただけだから道よく分からないんだけど」
「ケイの索敵で取り逃がしの無いようにしながら奥へ進みましょ。そのうちエルザたちとも合流できるでしょ」
「「「おう!!!」」」
方針が固まったところで移動を再開する。
進むに連れだんだん現れる賊の数も増えてきたな。
――っと。
少し先の大部屋の中で待ち伏せていた賊に、これまで同様の処理をしてから埋める。
始末する前に一応きちんと確認してるけど、今のところ他の冒険者と出くわすことはない。
「ケイ、どれくらいの賊を消してる?」
「全部合わせて二十四人」
「そ、そんなとこだろうと思ってたけど……体力の方は大丈夫なの?」
「そっちはまだ余裕があるね。――ん」
「どうしたの?」
「えっと……」
最初に引き受けた怨念分もあるし、迷路のような構造上の影響もあって消耗は少ない。
それより問題なのは……今、僕の鼻を刺激した臭い。
いやに饐えた、どこか生臭いこの感じは……。
進行方向の脇にある大部屋を影で探ると、生きてる人の反応があった。賊の気配はない。
……気が滅入る。でも、放っておくわけにもいかない。
「ごめん、少し先行する。危険なこととかじゃないし……ちょっと待っててほしいなー、なんて」
「ケイ?」
駆影術で大部屋に入る。
……うん、当たってほしくはなかったけど、予想通りだった。そこにあったのは多分ありがちな光景なんだと思う。
虚ろな目で倒れている、無残な姿の女の人たち。
とりあえず炎で彼女らの身体についた汚物を焼き払う。
さて、どうしたものか……。
こんな姿で近づいたら負担になるだろうからニワトリ化。というか最初からそうしとくべきだった。
風魔法で補助しつつ全員の身体を袋から出した毛布で包み、ついでに気絶させる。
部屋の中の負の念も呪詛として取り込んで――。
「ケイ?」
「コッ」
半ば反射的に人化。後続の少年たちには見られずに済んだ。
風で浮かせている彼女らを見て、事情は察せられたらしい。言葉を選ぶような沈黙が降りた。
怨念……たぶん、ここで死んだ人が僕らの入ってきたところに捨てられてたんだろう。
それなら、近くにあの入口かそこと繋がる経路があるはずだ。
キュシャにあった山の洞窟を探った時の要領で探知すると、予測が正しかったと証明された。
「……近くに最初の入り口がある。一回引き返して、皆はそこでこの人たちを護衛しながら待ってて。エルザたちは僕が戻って探すから」
「待って」
「待たない。今の面子の中でこの人たちといるべきなのはリーザだし、リーザだけじゃ万が一があるかもしれないからハウンズの皆にも一緒にいてもらうべきだよ」
「そもそも、あの通路には罠が――」
「ちゃんと考えがある。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏色即是空空即是色――」
ハウンズたちの手前、適当なことをもっともらしく呟きながらニワトリ化。
目を丸くしてるけど子供の柔軟な心で納得してもらうしかない。勢いで話を進める。
『出来れば使いたくなかったけど、こんな奥の手があってね。さ、しっかり掴まって』
「お、おうっ」
「……もふもふだ」
「あんたって、ホントに……!」
頭を抱えるリーザも含め、乗るのを待つより早く背中に風で運ぶ。
罠のあった通路も飛び越え、一気に外へ出た。
全員を突入前に潜んでいたところへ降ろす。
『じゃ、ここはよろしく!』
一言だけ告げて引き返す。
リーザたちとは無事に合流できたけど、急がないといけない状況は何も変わってない。




