73.クミシェル-3
「お腹が空きましたねぇ……」
「空いたねー……」
「そろそろお昼にする?」
「賛成ー」
「じゃあ、おかずは適当に作るから先に食べてて」
「分かっ――ん?」
荷物からおにぎりとお茶を取り出そうとしたリーザ。
その動きが途中で止まる。
え、何か変なこと言ったかな?
「……料理できるの?」
「そりゃ僕も自前の万能鍋くらい持ってるし」
「いや、道具じゃなくて腕前の方」
「まあね。洞窟にいた時も少しは作ってたから」
「そ、そうなの……洞窟?」
「ああ、ベルのお世話になってた時ね」
話しながら四次元袋から取り出した鍋に油を入れて、火で軽く熱しておく。
鍋とは言うけど今は底を浅くしてるからフライパンみたいなものだ。
野菜と肉を水筒の水で洗った後、風の刃で適当な大きさにカット。
味付けは……時間優先で、シンプルに塩と胡椒で良いか。
順番に具を鍋に投入し、適当に炒めていく。
魔法ってこういうとき便利だな。
食材洗う水とか使う道具をかなり減らせるし。
魔法ナシで同じことしようと思ったら……もっと多くの水とまな板とナイフ、あと炒める箸がいるところだ。
もっとも、日本ならお湯だけで作れるインスタント食品なんてものがあったんだけど。
「出来たよ」
「早っ!」
「頂きます。あ、美味しいですねー」
「良かった。一応そのうち店売りの料理を超えるのが目標だからね」
「あんたはどこを目指してるのよ……」
完成した炒め物を差し出す。
二人には概ね好評って感じで一安心。
でも……こういうのも良いな。
魔王が片付いたら料理人志望に転身しても良いかもしれない。
「にしても、ケイがこっちに来てからどんな風に過ごしてたか知らないのよね。何、まだ隠すようなことでもあるの?」
「そういえばリーザにはまだ話してなかったねー。そんな面白い話でもないと思うけど」
「私にはって……エルザには話してたってこと!?」
「軽く、ですけどねー」
「いや、単にタイミングの問題だって」
「ふーん……なら、今話してくれても良いわよね?」
念の為、風で辺りの様子を確かめる。
まぁ、こんなところで聞き耳立ててる人なんているわけないか。
どこから話したもんかな……。
最初からが妥当か。
色々と考えながら、僕は口を開いた。




