表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チキンハート  作者: 27サグマル
72/133

72.クミシェル-2

 駆けだしたエルザの速度に合わせて、間合いを保ちつつ後退。

 投げつけられたナイフを傷つけないよう注意しながら早々に叩き落とす。

 穂先を返して逆に持った短槍で、少しずつ攻撃を速くして反応速度を測る。


「――へえ」

「ふッ……!」


 けっこう速いな。

 じゃあ、対処できる限界近いスピードで畳みかけ――。


「っ!?」

「いきます、よっ……!」


 防御を考えず捨て身で突っ込んでくるエルザ。

 槍を受けて崩れた体勢のまま、強引に肉薄してくる。

 咄嗟に両手に持ち替えた短槍で受けると、勢いの乗った斬撃はナイフとは思えないくらい重かった。


 いつのまにか攻守が逆転してるな。

 防御に徹するってことがないからか、リーザと同じようにはいかない。

 一心不乱に振るわれるナイフを防ぎつつ、その視界の端に収まるように風弾を生成。見やすくなる程度に黒炎も組み合わせる。

 まぐれじゃ避けられないくらいのサイズに調節。さて、気付くかな?

 当たったら吹き飛ぶくらいの魔力を込めて弾を放つ。

 果たして、エルザはあっさり風弾を躱し攻撃を続けた。それから数合ほどで大きく飛び退る。


「なら、これで!」

「お、速い!」


 大きく身を(たわ)めたエルザの総身に力が漲る。

 これまでの比じゃないスピードで迫る姿はまるで自らを一つの弾丸に昇華させたかのようで、常人なら思わず竦みそうな迫力があった。

 真正面から槍で受けると、身体が浮き上がるほどの衝撃。

 直後、甲高い音を立ててナイフが砕け散った。

 エルザの動きは一切鈍ることなく、空いた手で槍を押しのけ残るナイフを一直線に突き出してくる。


「はぁッ!」

「え、まだ続けるの!?」


 思わず出た声も聞こえてないらしい。

 槍を回転させて掴む手を振り払い、その動きでナイフも弾く。


 まぁ頃合いかな。

 適当なところで切り上げないとエンドレスになりそうだし……。


 両手を弾かれた隙を埋めるような頭突きを躱し、僕はそのまま後ろに跳んで距離を取る。


「『碧掌』!」

「くっ!?」


 駆け出そうとしたエルザの真上から強めに風を叩きつける。

 きちんと動きを抑えられているのを確認し、僕は槍を収めた。

 なんとか動こうとしていたエルザも少しして大人しくなる。


「うー……参りましたー……」

「お粗末様でした」


 ……あれ、なんか言葉のチョイスを間違えた気がする。

 でも、こういう時ってなんて言えば良いんだろ?

 とにかく魔法を解くと、エルザはくたりと地面に座り込んだ。


「はぁ……あんたたちって、本当に強いのねー」

「そこは積み重ねてきたレベルがあるから。ちなみにエルザはどれくらい?」

「71ですー」

「そういえば、僕が人里に降りてきたのもレベル70になってからだったな」


 確かベル曰く「レベルが60もあれば人間に後れを取るようなことはまずないだろう」だっけ。

 70ってのは安全マージンとか言ってた気がする。

 ……エルザって、実は半端なく強い?

 元は戦いなんかと無縁なメイドってこともあって、まだ技術面に伸びしろがありそうだけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ