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チキンハート  作者: 27サグマル
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7.黒龍の洞窟-2

『お?』

「……来た?」


 いつもの訓練を終えてステータスを見ると、ついにレベルがノルマを達成していた。


 名前:ケイ


 種族:シャドウフレアチキン


 Lv:70


 ついでに種族もダークフレイムチキンからシャドウフレアチキンに変わっていた。

 この洞窟に来てから二回目の進化な訳だけど、相変わらずニワトリだった。

 ……まあ良い。何が出来るのか、後でいろいろ試してみよう。


「……この勢いで、人化もできると良いんだけど」

『そうだなぁ』


 サーシャについて広間に行くと、そこには先客がいた。


「あれ~、ケイさんまた進化しました~?」

『まだニワトリだけどね』


 この数年のうちに手首と足首から先の封印が解けたナナは、よく楽しそうに絵を描いている。

 出来はあまり良いとは言えないどころか直視できない感じだけど……本人が楽しんでいるんだから良いんだ。うん。


『あくまで今の自分の姿を元に、変化させていくイメージで……』


 身体から流れ出した魔力が、闇となって纏わりつく。

 いつもここまでは順調なんだけど……どうも前世の姿のイメージが強すぎるらしくて上手くいかない。

 でも、その日の僕はいつもと違った。


『あ、なんかイケそう?』

「おお~?」


 闇の蛹の中で、自分が解けるような感覚。

 やがて闇は僕の身体と同化し、視界が開ける。

 驚いたように固まるサーシャと目があった。


ど……だ(どうだろう?)、ぅ」


 あれ、声がうまく出ないな……。

 念話で改めて尋ねる。


『どんな感じ?』


「……良いっ」


 サーシャは少しの沈黙の後、グッ! と力強く親指を立てた。


「わ~、格好良いです~!」


 目をキラキラさせるナナ。


 これは期待大だ!

 どんなイケメンになれたのやら?


 そう思っていると、サーシャが魔法で地面から鏡を出してくれた。


 細マッチョな長身。

 黒の革ジャン。

 前世とあまり変わらない平凡な顔。

 そして――立派な赤髪。


「な……じゃこゃ、ぁあ!?」

 なんじゃこりゃぁああ!?


 いや、別に赤髪が悪いわけじゃない。

 問題なのはその形だ。

 端的に形容すると、こうだろう。――鶏冠(トサカ)ヘア。

 アンテナや槍を連想させる尖った赤髪は硬く鋭く、たぶん頭突きしたら刺さる。

 世紀末にヒャッハー汚物は消毒だーとか叫んでるアイツらが隣にいたら凄く馴染みそうな。

 折角の黒皮ジャンがそういう方向でマッチしているのが辛い。


「……人型で喋るのは、慣れるのに時間がかかるから」


 鏡を引っ込めたサーシャがそう教えてくれるけど、今はそれどころじゃない。


『封印だ! この姿は封印す……あれ?』

「……嫌、なの? でも、変身も慣れないと上手くできないけど」


 簡単にはニワトリに戻れないって……!?

 というかサーシャ、本当に不思議そうに首を傾げるのやめて!

 一人世紀末男は、洞窟の隅で膝を抱えるのだった。

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