46.東海-3
「はぁ……なんか私、普通にお荷物だったわね……」
『仕方ないんじゃない? 今回の相手はそれこそ数も経験も上回ってたんだし』
「もう少しレベルを上げたり経験を積んだりすれば変わってきますよー」
「うーん……」
悩んでいる様子のリーザはそれきり黙り込む。
殺し殺されって状況が大丈夫なのか気になる。でも話題が話題だけに聞き方選ぶな……。
できるだけ負担はかけたくないけど、勇者である以上は避けられないことだし考えは早いうちにはっきりさせといた方が良い。
でもやっぱり聞き方選ぶな……。
っていうか「曇りない純粋な魂」の勇者が人を殺すのってどうなんだろ?
正直できないと困ることだけど、それで純粋じゃなくなって勇者じゃなくなる――とかはもっと困る。
かといって人殺したのに純粋な魂ってどうよ? とも考えられるし。
むぅ…………分からん。
ま、能力も及ばないのにアレコレ考えてもドツボに嵌るだけだよね!
出来ることを出来る範囲でやろう。
駄目だったらその時はその時で良い。
一時的に止まっている船では、各部の点検に船員たちが走り回っている。
そういう知識が無い下級船員? みたいなのは休んでるみたいだけど。
「――それにしても、『毒鮫』の奴らがこんなとこまで流れてきてるなんてよ」
「北海が魔王の関係でピリピリしだしただろ? そっから脱落してきたらしいぜ」
お、さっきの海賊たちのことかな?
結構気になる話をしてるみたいだ。
そっと耳を傾けてみると、二人で話していたところに別の船員がやってきた。
「さっきのって、鮫んとこの二番隊だろ?」
「マジかよ。道理でヤバい相手だと思ったぜ」
「ああ。姿は見当たらねーが、あの双槍使いがいなけりゃ全滅してたかもな」
「でもアイツ確かに恩人だけどよ、おっかなくなかったか? 化物みてぇな強さで海賊共を薙ぎ払ってんのに本人は感情が無いのかってくらい淡々としててよ」
「人間離れしてたな。俺ぁアイツが黒龍の化身だって言われても信じられるわ」
「コッ!?」
っとと、危ない危ない。
話題が僕に移ったから聞くのやめようって思った瞬間にコレだよ!
まあ眷属だけどね。
これが世間の一般認識だったとしたら、人間はベルを……というか七龍を甘く見過ぎてる。
自分が弱いと識別できる強さの上限も低いのかな?
レベル10から見たらレベルが億でも兆でも一緒、みたいな。
今は魔王を警戒してるから大丈夫だと思いたいけど、人間が調子に乗って龍に喧嘩売るようなことがありそうで怖い。
僕が知ってるだけでも、そういうパターンで良いことのあった試しがないのに。
「――アイツ、どこ行ったんだろーな」
「お前も見てねえのかよ? 見落とすような外見じゃなかったと思うんだがよ」
「黒龍サマは暴れ足りずにどっかへ飛んでったのさ」
「ハハ……。まさか、な」
船員たちはまだ何か話してるみたいだけど、無視。
どうせ聞いても碌なこと話しちゃいないはず。
それにしても、強いところから厄介な海賊が流れてきたって?
帰りもこの東海を通るのに、治安が悪くなるのは困る。
しかも二番隊って言うからには一番隊とか、下手すれば本隊みたいなのもいる訳だし。
国に頼りたいところだけど……脳内で、さっきの海賊たちと前に会った朱鷹騎士団を比べてみる。
……微妙なラインだなー。
騎士団がそんなに強い方じゃなかったのを考慮しても、海賊の方が割と強いぞ?
いざとなったらまた僕が戦うしかないか。
目立つのは避けたいけど、元の姿になってリーザとエルザだけ連れて逃げるってのも後味悪いし。
もちろん一番良いのは海賊なんかと遭遇しないことなんだけどね。




