45.東海-2
海賊と船員の争う間をすり抜けてリーザたちから距離を取った後、一気に上空へ飛び上がる。
高空で人化、自由落下のち着地。
どっかの変身ヒーローみたいだな、なんて。
こんなヒーローがいるもんか。あらゆる意味で。
突然降ってきた世紀末男を、周囲にいた誰もが警戒する。
一気に薙ぎ払いたいところだけど、そうすると船員も巻き込んじゃうしな……。
とりあえず海賊を槍に引っかけて次々に海へ放り投げる。
その合間に確認したのは、矢や魔法で援護する海賊たちの位置。
「クソッ、邪魔をするな!」
「はン、通すかよォ!」
戦局を海賊側に大きく傾けているそこは、後衛を守る海賊たちと突っ込んだ船員たちの激戦地帯だった。
つまり敵と味方が上手いこと分かれてる訳で都合が良い。
ニワトリの脚力に物を言わせて、競り合う前衛を跳び越え後衛のど真ん中に乱入する。
「よっと」
「「「なッ――!?」」」
この程度の相手にわざわざ気合を入れるまでもない。
軽く双槍を振り回すと、後衛の海賊たちは冗談のように吹き飛んで海に落ちた。
ちなみに槍の穂先には魔力を纏わせて刃を殺している。
手加減する気も無いけど、甲板に転がっている死体をこれ以上増やすつもりもない。
「ふぅ」
「ッの野郎、舐めやがって――グハァ!?」
「な、なんなんだコイツハぐォあ!」
「んー……」
「き、来やがった!」
「逃げ――ぅわぁあ……」
何組もの後衛を蹴散らしながら考える。
今たぶん生まれて初めて人を殺してるわけだけど、僕自身はそれをどう感じているんだろう?
……まあ、特に何も感じないな。
悪意全開で襲ってくる敵だし、同情の余地もない。
――ん?
後衛部隊は粗方対処したけど、なんか大声で他の海賊に指示してるっぽいのがいるな。
「失礼」
「! この……、ド畜生がッ」
穂先の魔力を呪炎に変え、その正面に立ち塞がる。
やっぱり指揮官クラスなのか他よりは腕が立つ相手だったらしい。
僕が振った槍に対して肩がピクリと反応した。
まあ結局は微動だにしてないのと大差ないし、長槍で胸板を一文字に斬り裂きつつ剣を弾き飛ばす。
無防備な両の肩口を短槍で突いて呪炎で縛り、後衛を倒して出来た空白地帯に転がしておいた。
戦いが収まった時どうなってるかは知らないけど、たぶん情報を聞き出したりできるんじゃないかな?
その頃にはもう状況は決していた。
良い感じに死角も生まれてたんで、その内の一つに隠れて再びニワトリ化。
ピンチの船員を適当に助けつつリーザたちの元へ戻る。
『無事ー?』
「此方は特に問題ないですー」
『相手が武器に毒とか塗ってなくて良かったね。はい、傷薬』
「ありがとうございます」
『船に生命魔法が使える人がいれば診てもらえるんだけどね』
傷の一つ一つこそ浅いけど、エルザはけっこう血だらけだった。
後ろのリーザに傷一つないのは流石と言っていいと思う。
そのリーザはというと……意外に落ち着いてる感じだった。
でも元はただの女子高生なんだし、無理してないと良いなぁ。
ちなみに海賊のレベルは20~30台くらい。
指揮してた海賊はレベル40ちょいです。




