3.ニワトリ小屋-3
「……コ?」
ふと、視界の端にアイコンがあるのに気付いた。
脳内にステータス画面のようなイメージが広がる。
名前:ラウネン<=小鳥遊啓太>
種族:ジューシーチキン
Lv:2
あとは下にSTR、VITなどの項目を持つパラメーターが表示されている。
これは夢だという願望がだいぶグラついているが、二つツッコミたいことがある。
ラウネンって誰だよ!
ジューシーチキンとか品種以前に商品名じゃねえか!
……ふぅ、少し落ち着いた。
穴の開くほど念入りにステータスを調べるが、それ以上の情報は得られなかった。
翌朝。
昨日他のニワトリに命じて取っておいた小麦を食べると、僕はおっさんが来るのを待ち構える。
なぜか朝一番を告げたい衝動が燻っているが、あの大声は脱走の時の威嚇用に取っておきたい。
そう……僕は今朝、小屋から逃げるつもりだ。
何故って?
いつ殺られるかも分からない環境とか耐えられないからだよ! 豆腐メンタル舐めんな!
「ほら、エサだべー」
「「「コケー!」」」
って!?
……ああ、そりゃこれだけしかいないニワトリを毎日シメたりはしませんよねー……。
「コケコッコーーー!」
空回った気合を込めて、時間外れの雄叫びが響いた。
そんな肩透かしを食らうこと数日、ついにその日がやって来た。
「さぁて、今日はどのニワトリにすっべー」
セリフ変わらねぇのかよ!
と、状況はそれどころじゃない。
他のニワトリを視線で制した僕は、小扉から外に出る。
「コッコッ……」
意味なく呟きながら、少しずつ距離を開ける。
タイミングを見計らって、家の反対――敷地の外へ駆け出す!
「あっ、おめ――」
チィッ、気づかれたか!
「コッケコオォォオオオ!!」
シャウトの効果はあまり期待してなかったけど、男の動きが鈍る。
その隙に更に加速し、僕は自由の身となったのだった。
次話で普通に喋れるようになります。
念話ですが。。