29.異世界転生-1――勇者――
復活です。
お詫びに今日は二話更新するつもりです。
次の更新は21時ごろの予定……
「はぁ……」
異世界にでも渡りたいなぁ……。
高二期末のテスト期間は相変わらず宜しくない戦果に終わった。
まあその辺にいるJKならこの時期は大なり小なり似たようなことを考えているはず。
ちゃんと勉強してれば良かったって?
そんなの今誰よりも痛感し――。
バァ……ン
左半身に衝撃、なんか視界が急に慌ただしく動き始める。
急にスローになった世界の中、少し遅れて私は気づいた。
自分が、トラックに撥ねられたことに。
咄嗟に信号を確認する。――青。
運転手の顔を見ると、これまた青。
ってか運転席の側にキソンの缶ビール!? 確信犯じゃない!
実はこの使い方って間違ってるらしいけどもう一回言わせてもらう。
確信犯じゃない!
というか走馬灯モードに入るの間に合ってなくない?
でも私の人生も終わりかー。
あ、これって自分で思い出を振り返らないといけないのか。
勝手に頭を過ぎるものだと思ってたけど、現実はそうもいかないみたいね。
……いくら何でも、着地が遅くない?
走馬灯モード込みで考えても、ちょっと飛び過ぎのよう、な……。
あれ、なんか意識が……薄――。
う……ん。
目を開けると、私はよく分からない空間にいた。
辺りを見回しても何も無い。それは世界そのものさえ例外じゃなかった。
黒くも白くも無く、でも色彩もない。
ただ制服を着た私だけが宙に浮いている。
確か、撥ねられたんだっけ。
天国には思えないけど……地獄に行くほど悪いことした覚えもない。
こんなところで永遠に、とか普通の人なら発狂モノじゃない?
わたし、わるいことしてないよ!
『初めまして』
「うおぅ!? ……ゴホン。――きゃっ!?」
いきなり他の人の声がして、思わず声が出る。
私はJKらしいリアクションで驚いた。
当然、おっさんみたいな反応などしていない。
『大変申し訳なくはあるのですが、貴女の純粋な魂を見込んでお願いがあります』
「なんなりと」
『ありがとうございます! それでも少し言い出しにくいことなのですが……勇者として私の世界を救ってください』
「え、えっと……」
性別も年齢も判じ難い美声は透き通るようで、思わず私は頷いたんだけど。
これは異世界転生ってやつ?
流石にこのお願いを簡単に引き受ける訳にはいかない。
『このままだと、魔王のために数多の生命が犠牲に……どうか……!』
私の前に姿を現した――いや、さっきからいたような?――のは、手を合わせ祈るような涙目でこっちを見る子供だった。
でも急に話がきな臭くなってきたな。魔王?
『世界の悪意が実体を得た存在で、私の世界の者ではその性質上抗えないのです』
「うーん……」
政治とか残念な事情は関係なさそう。
でも私もただの女子高生だし……いや、そこは転生チートとかあるのか。(多分)
だけど、自分の人生のことだからなー……。




