25.リティオ-10
「あ、外じゃ念話はやめてね」
『えー?』
街の手前でユーリに言っておく。
ユーリはまだ念話がそんなに上手くないから、相手を限定できない。
街中でそんな無差別に念話をしたら悪目立ちして困ることを説明する。
『うー……』
「もう少し念話が上手くなるか、人化して喋れるようになれば大丈夫だから」
『ぅ~……』
ここはもう一押し!
「勿論ほったらかしになんてしないよ。それにユーリは賢いから、すぐ話せるようになるでしょ?」
『むー……わかったー』
同意を取りつけたところで、リティオの門をくぐる。
うーん、森に行くにも食事するにも微妙な時間。
というわけで、本屋に向かった。
「――、~~」
「なに、コレが見たいの?」
「~~!」
「はいはい」
本を立ち読みしつつ、ユーリが興味を示した絵本を手に取る。
大陸北部に伝わってる昔話の一つだった。
僕も読書しながらの片手間だけどページを捲ってやると、お気に召したらしいユーリは上機嫌になっている。
そうする内にちょうど良い時間になったんで、僕は読んでいたマンガを買うと本屋を出た。
お昼を食べに目指したのは、前セルジュさんに聞いたお勧めの喫茶店。
ここはメニューが美味しいだけじゃなく、僕が入ってもお客さんがあまり逃げない珍しい店でもある。
店員さんの態度も比較的自然だし居心地が良い。
ユーリの希望もあって、オムライス定食を二つ頼んだ。
ふわりとした卵の食感とどこか優しい味のチキンライスがなんとも言えない。
使ってる食材と調味料は店でも揃えられそう。
となると、やっぱり料理した人の腕だろうなー……。
チキンライスの味付けはともかく、僕が焼いても卵はここまでふわっとならない。
今度また色々試してみよう。
……共食いだって?
まあ人間だって同じ哺乳類の牛とか豚とか食べるわけだし。
それに人化できて黒龍の眷属な僕はニワトリであってニワトリじゃないっていうか?
美味しいから良いことにしておこう。
そういえば、相変わらず豪快な食べっぷりを見せてくれたユーリが猫舌じゃないことが分かった。
スプーンに乗せたまだ熱いオムライスを口に入れちゃった時は心臓が止まりそうになったけど、本人がけろっとしていたからもう一回驚いた。
ちなみに、猫舌度合いで言えばむしろ僕の方が熱いものは苦手っぽい。
満腹でうとうとしているユーリを抱っこしつつギルドに入る。
ギルドの中はまだ割と閑散としていた。
入るときすれ違った人って、もしかして妖魔の大発生の時も残ってた冒険者かな?
掲示板を見たけど特に変わった依頼も無かったし、普通に魔物退治の依頼を請けることにする。
「きれいな猫ですね」
「この前の雨の日に拾ったんです。手のかからない良いやつですよ」
「何かあったらご相談くださいね? 詳しい方をご紹介できると思いますから」
「はい、ありがとうございます」
セルジュさんと軽く話をしつつ、手続きを終えた僕は森へ向かった。
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