23.黒龍の洞窟-9
その翌日、ナナと留守番を頼まれた僕は日課の鍛錬を終えて子虎と戯れていた。
ちなみに僕が鍛錬してる間はナナが子虎と遊んでたみたいだけど、今は昼寝してる。
ナナと子虎の関係は良好。
別にサーシャと子虎も仲が悪いわけじゃないんだけど。
どうも謎のぎこちなさがあるというか……。
「そういえば君の名前を決めないとね」
『んー?』
「あれ、念話できるようになったの?」
『む~』
まだ普通に話すことこそ出来ないにしても、念話に要るリンクみたいなのを繋げられるっぽい。
やっぱろ転生の経験が効いてるのかな?
――と、今は名付けだった。
響いた声は中性的で、判断はし難い。じゃあ名前もそんな感じでいこうかな。
「スノウとかどう?」
『やー』
「じゃあ、ホワイト」
『やー』
「ヴァイス……は男っぽ過ぎるかな? 他には……ネイル」
『むー……』
効果はいまひとつのようだ……。
いかんせん僕も元はただの大学生だし、語彙はそこまで無いんだよなー。
名前に直接意味を持たせる方向から離れてみよう。
ケイが拾ったからエルとか?
んー……。とりあえず、日本の中性的な名前を列挙してみる。
子虎が気に入るのがあれば良いんだけど。
「じゃあ、とりあえず色々言ってみるね?」
『はーい』
「メグミ……リオ……チヒロ……シオン……ユーリ――」
『!』
お、反応あり。
パタパタ揺れていた尻尾がピンと伸びる。
様子を見ると子虎は期待に目を輝かせている、のかな?
なんかちょっと焦らしたくなるけど……まあ、素直に聞いておこう。
「気に入った名前はあった?」
『ゆーりー!』
「じゃあ、君の名前はユーリで決まりだね」
『うん! ゆーりー!』
「ところで、僕の名前は分かる?」
『えーと……けいー?』
「正解!」
上機嫌にじゃれてくるユーリのあざとさは半端じゃないけど、単純に可愛げとして受け止めておく。
日本時代のペットだった犬も猫もすぐにふてぶてしく育った経験が、余計なことは考えず子虎との時間を満喫すべきだと告げていた。
年の離れた弟妹もそんな感じだったしなぁ……。
ホントに可愛い時期なんて一瞬だけなんや!
僕がいなくなった後、日本じゃどんな感じになったのか気にはなるけど……転生前後の記憶がかなり曖昧なせいで、想像もつかないんだよね。
そんなことより、ユーリはどうしよう?
レベルを上げたいけど、ゲームみたいなパワーレベリングは無理っぽいし。
人化覚える前の僕と同じことしても良いんだけど、時間がなぁ……。
まぁ前は僕がしてもらったことだし、自分の番が今になって回ってきたと思えば良いか。気長にいこう。
そんな感じで、その日はそれ以上することもなく一日中ユーリとじゃれて過ごした。




