16.リティオ-7
人間体に戻った僕らが街を歩いていると、到着した騎士団が妖魔の掃討に当たっていた。
サーシャの投網で死ななかったけど拘束されていた連中だ。
まだ影の縛りが完全には解けていないせいで危なげなく倒されていた妖魔を、僕らも通り過ぎがてら倒していく。
元からそこまで強くない上に弱体化してる妖魔相手にニ対一で戦ってるってことは……堅実なのもあるんだろうけど、実力もそれくらいってことかな。
妖魔の手応えも考慮して推測するに、大体レベルは40前後ってところ?
「今来てる騎士団って、人間基準だとどれくらいの実力者なんだろ?」
「……私も詳しくは知らない」
「そっかー」
こんなこと考えだしたらキリが無いのは分かってるけど、他の所で妖魔が大発生した時とか心配になる。
辿り着いた先はもちろん冒険者ギルド。
「ただいま戻りましたー……」
「ケイさん!?」
ギルドに入ると、受付にいたセルジュさんが驚いたように声を上げた。
他の職員の人たちから警戒する感じが薄れていて地味に嬉しい。
僕はとりあえず最近使っていたテーブルに腰を下ろす。
「到着した騎士団も優勢みたいですし、もう大丈夫だと思います」
「それは当ギルドでも連絡を受けています。それより傷は大丈夫なんですか?」
「これくらいならすぐ治りますよ。あと、討伐証明部位です。妖魔の角とか牙は良い素材になるって聞いたので」
「あ、はい。でもケイさんは使わないんですか?」
「自前の装備なら今ので十分ですから」
鑑定の結果、かなり品質が良かったらしくて結構な額になった。
これなら街で倒した妖魔からも取っておけば良かったかもしれないけど……。
うっかり騎士団と揉めたりするのも嫌だし、仕方ないか。
「妖魔討伐の特殊依頼、難度AAAを七つですから……あ、少々お待ちください」
これまでの普通の魔物討伐とかも合わせると、冒険者ランクはEEEってところかな?
一度引っ込んだセルジュさんは、分厚い書類を捲って何か調べているみたいだった。
「はい、お待たせしました。ケイさんの冒険者ランクですが……」
セルジュさんの説明によると、僕の冒険者ランクは予想通りEEE。
なんか特例の条件を満たしたとかで、今度ランクBまでの昇格試験を一気に受けられるらしい。
「今度……って言うと?」
「当ギルドで受けるなら、平常運転に戻って試験官の出来る冒険者の方が来られた時になりますね」
他にも、試験官の依頼を受けてくれる冒険者がいれば他のギルドでも受けられるらしい。
ギルドカードを提示すれば証明になるんだとか。
洞窟以外じゃリティオをしばらく拠点にするつもりだから、ここで受ければ良いか。
そういえば僕って人化してる訳だけど、普通の医者に診てもらって平気なのかな?
少し気になってサーシャに尋ねてみると、人化してる時の身体は普通の人間と変わりないから大丈夫らしい。
謎ではあるけど、そういうものだってことで良いか。学者なんて柄じゃないし。
「ところで、今来てる騎士団の強さって大陸じゃどれくらいに位置してるんですか? 世間知らずなもんで良く分からないんですけど」
「そうですね……この国の精鋭ではありますが、大陸全体となると……中の中あたりでしょうか」
うーん、微妙。
今回の大発生が特殊だったのもあるけど……。
そんな話をしていると、やがて朱鷹騎士団が妖魔を全て退治したとの報告が入った。
「じゃあ、今日はこれで」
「はい、お疲れ様でした」
久々にリティオを去り、僕らは駆影術で洞窟まで帰った。




