13.リティオ-4
念の為に森の浅いところで魔物を狩って依頼達成数を稼ぐこと数日。
ギルドの職員の皆の対応もだいぶ普通になってきた。
そんなこんなで騎士団の到着予定日を迎えたわけだけど――。
生憎、ギリギリのところで間に合わなかったみたいだ。
妖魔たちが襲来してきたのは、朝ギルドでいつもの依頼を受けようと手続きをしているときだった。
外で上がった悲鳴に飛び出すと、西の空に見えたのは空を覆い尽くさんばかりの無数の影。
……十体近く?
いや、百体はいるだろ! なんだあの量!?
――と。そこまで考えたところで、不意に視界が暗転した。
「ちょっ……サーシャ!? ギルドに戻らないと!」
「……ストップ」
僕はいつの間にか街の離れたところに転移させられていた。
急いで戻ろうとする僕をサーシャが掴んで止める。
「……目立てば、妖魔の群れを引きつけることになる。護りたいなら尚更、距離を置くべき」
「っ……!」
言い返そうにもサーシャの主張は正論で言葉に詰まる。
でも、それじゃ一体でもギルドに行ったら……!
「……勿論、脇に逸れる妖魔は流れ弾で消す」
「…………分かった。ゴメン」
そんなやり取りをしている内に、妖魔の群れは一体一体が視認できる距離まで迫って来た。
僕の目基準ではあるけど、十分射程内だ。
相手は……僕の知っているもので表現すると、紫色のガーゴイルって感じ。
個体差といえば頭が獣だったり人だったり、あとは持っている武器も異なっている。
陽動ってことは、ある程度ギルドから離れたところまで待ってから突っ込む感じかな?
そう思っていると、隣でプレッシャーが急激に高まった。
洞窟を出てからは消していた狐耳と尻尾を出し、サーシャは足元の影に触れる。
一本釣りのように全身を使って腕を振り上げると、辺り一帯の影がついてきた。
いや、元あった影も残っちゃいるけど格段に薄くなってる。
……ある程度は影を操れる身だから分かるんだけど。
影から力引き出し過ぎ!
「……『斬影の投網』!」
ネット状になった影を、妖魔の群れへ豪快に投げつけるサーシャ。
……えーっと。
百七体いた妖魔の内、六十九体が細切れになって。
三十体はぐるぐる巻きに拘束され墜落して。
残る八体は影に絡みつかれたけど、振り払ったな。でも弱ってるみたいだ。
それでも戦意は衰えないようで、寧ろ激昂してこっちに来る。
「……手応えだと。こっちに来る八体は、どれもレベル70後半くらい」
だいぶ倒したと思ったけど、僕と同レベルのが八体かー。
サーシャもあの大技でだいぶ消耗したみたいだし……あれ、ピンチ?
とりあえずギルドの心配はいらなくなったっぽいしサーシャだけでも守ろうと気合を入れ直し、僕は双槍を構えた。
ケイが妖魔の数を正確に把握してるのは……ニワトリだからです。。




