第一掃目 仄暗(ほのぐら)いダンジョンの底から
つい思いついたので書いた。
今では反省している。
陽の光の届かぬ深い、深い、穴の奥底。
そこには遥かの昔より存在する数多の財宝が存在するという。
しかし宝を守る番人、魔王の生み出せし魔物が徘徊し人類の侵入を拒む。
「くっ!アルフレッド!無事か!?」
軽鎧を身に纏い、自身に群がる魔物をその両の手で持った大剣でなぎ払いながら、若者が叫ぶ。
「ああ!このぐらい何ともねぇぜ!アリサ!?まだ行けねぇのか!?」
その声に返すのは身の丈ほどもある大盾で魔物を吹き飛ばし、逆の手に持ったメイスで手近な魔物の頭を叩き割った、年の頃は60歳位の老齢の男。相応の皺が刻まれた顔からは、まだまだ若い者には負けぬとばかりの力強い声を響かせる。
「待ってよ!もうちょっと…………良し!二人とも下がって!」
二人の男の背に位置する場所で杖を握り地面に蹲っていた、いや呪文を唱えていた一人の少女が答える。
「解った!……行けぇぇぇ!アリサァァァァァッ!」
若者が叫ぶとほぼ同時に少女の持ちし杖より力が解き放たれる。
その紅き力はその場を、その場に居た魔物の全てなぎ払った。
『『『ギシャアアアアアアァァァッ!!!!』』』
戦場に響く魔物達の絶叫。
叫び続いていた紅に飲まれていた魔物達はやがて碧い光に飲まれ、一匹残らず消滅した。
「ふぅっ……流石にちょっとやばかったわね……。」
額から垂れる汗を拭いながら少女は荒い息をつく。
「ああ、流石にここに来るのは『4度目』だが三人で来るのは少々厳しかったな。」
若者はそう言い、二人に申し訳なさそうに頭を下げる。
「仕方ねえだろ。アイツが腰を悪くしちまったし、少しでも早く攻略しないと『復活』するまでの時間が勿体無ぇからな。」
ガハハハ、と豪快な笑い声を上げながら気にするなとばかりにメイスを持った手を振る老齢の男。
「さっさと『財宝』を取って帰りましょう!『前』よりいい物が入ってるといいわね……」
息を落ち着かせた少女はそう言うとさっさと奥に進んでいき、その後ろに遅れまいと二人の男が続いた。
三人が去った後には、
戦闘により破壊された武器防具の欠片や使用した薬などの空き瓶などが捨て置かれていた。
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「む?終わったか……?」
誰も居なくなった荒れた戦場後に女の声が響く。
「は。冒険者達は先程、地上の部隊より全員が帰還したとの報告が入りました。」
そこに、何の感情も込められていない淡々とした報告を告げる男の声。
「うむ。よろしい。ではこれより……。」
女はその片方の手に持った『獲物』を掲げ言った。
「このダンジョンの清掃を開始するっ!」
「「「了解しました!!!魔王様!!!」」」
それに答えるは女の背後に跪いていた異形の魔物達。
その女、『魔王』と呼ばれた者の掲げた手には一本の箒が握られていた――――――――――――――――