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ララの古魔術書店  作者: 邑上主水
第二章「想い出になる前に」
56/105

エピローグ

 ヘスが目を覚ましたのは、まるで地獄のような光景の中だった。

 カミラのコテージは瓦礫と化し、辺りは炎に包まれ、焼け焦げた炭の匂いが鼻腔をくすぐる。


「小僧ッ! 一体どうなったんだ!?」


 ガーランドの声がヘスの耳に届いた。

 この事態を把握しきれていないのか、声がうわずんでいる。


「ガーランドのおっさん! これは……」


 まずヘスの目に映ったのは、倒れているカミラとリンの姿。

 そして身構えている、ガーランドとスピアーズの姿。

 ララは、ララは何処だ。

 

「不味い事になった」


 スピアーズが険しい表情で言葉を漏らす。

 ガーランドとスピアーズの視線の先、「それ」の影は炎に揺れ静かに佇んでいた。


「……ラ……ラ?」


 スノーフレークのポンチョ、それに黒いショートボブ。

 紛れもないララの姿。だがーー


「お前は……誰だ?」

「私は……」


 静かに問いかけるスピアーズに、かすれる様な小さな声でララが答えた。

 炎に揺れるララの姿。その目は恐怖に怯えているようだった。


「私は…………誰?」


 かすれるララの声が、辺りを支配した。 

 分からない。何もかも。

 うう、とうめき声を上げながら、恐怖に引きつった顔でララが頭を抱えた。


「……嘘だろ、ララ」

 

 夢の中、扉の向こうでララが言った言葉の一つ一つがヘスの脳裏に蘇る。

 信じない。ヘスが首を横に振った。

 本当にいなくなっちまったのか。ララ自身も、そして、残したかった想い出すらも。


「嘘だろッ! ララッ! 冗談言ってンじゃねぇぞ!」


 ヘスが思わずララの元へ駆け出す。だがそれをスピアーズが制止した。


「なっ、離せオッサン!」

「ララを刺激するな。この家を吹き飛ばしたのは、彼女だ」

「何だって?」

 

 吹き飛ばした? ララが?

 ララの中にある、魔女の力。

 そして、この疼きは、それに反応している?

 ララを見据えながら、ヘスはそう感じた。


「貴方……怖い……」

 

 ヘスの中の「何か」を感じ取ったのか、ララが身をすくめ、恐怖に満ちた目をヘスに向ける。 

 そんなララに呼応するように、瓦礫が一つ、崩れ落ちた。

 炎が舞い散り、火の粉となって降り注ぐ。

 視界が脈打っているのか、炎で赤く染まっているのかわからない。

 ただ、ヘスの胸の奥から湧き出てくるのは、渇き。どす黒い、チクチクと心を揺さぶるような渇きが彼の心にささやき始める。

 ーー彼の者を切り裂き、その血で渇きを潤せ、と。


「ふざけんじゃねぇ……」


 苦悶の表情でヘスが言葉を漏らす。

 その言葉が、誰に向けられたものなのか、スピアーズにもガーランドにも判らなかった。

 

「怖い……私、帰らなきゃ……お母さんが呼んでる……」

「……お母さん?」


 ララが小さく漏らした言葉にスピアーズが反応した。

 ララの母? 母が、呼んでいる? 

 ボスのララへの執着、そしてこの結果。まさかーー 

 スピアーズの脳裏に一つの答えが浮かんだその時、ヘスの身体が崩れ落ちた。


「……! ヘス君!」


 ぐらりと世界が揺れる。

 その歪んだ世界に落ちる、ララの姿。

 ヘスがもう一度見たかった笑顔ではなく、ただ、怯えた眼差しをヘスに投げかけている少女の姿。


 ヘスは感覚で理解した。己の運命と、ララとの運命を。


「ふざけんじゃねぇ」


 小さくそう言葉を吐き捨てたヘスの意識は、深海にゆっくりと落ちていく様に、深い霧の向こうに静かに沈んでいった。

ララコマ第二章はこれにて終了です!

長い間ありがとうございました!!

書かなくてもお分かりかと思いますが、最終章となる三章に続きます。


三部作で第二部はホップステップのステップ部分で、悲しかったり、ピンチになる部だと勝手に思っている主水ですのでこのような形にしました。

(ほら、スター◯ォーズでも旧三部作の二部は「帝国の逆襲」ですし 汗)

大きくジャンプする最終章をお楽しみに^^

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