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32番目の夏と17歳の彼女

作者: あしか

 ねえ、もう一度17の頃に戻りたいって思う?


 32番目の夏、私は17歳の女の子を車で空港まで送り届けようとしていた。

彼女とは、いままでに3回、一緒に食事をしたり、映画を見たりした。

 彼女とは友達だった、愛人というには彼女はあまりに若すぎたし、恋人というには私は……あまりに歳を取り過ぎていた。

 32歳という年齢はそれほど歳を取りすぎていた、というほどの年齢ではないのだけれど、それほどまでに彼女は若かった。

 つまり、私と彼女の間には15年の時間が眠っていて、それは決して短い時間ではないということだった。


 空港までの道は、とても混み合っていた。それはきっと、今日が2006年真夏の2時30分で、しかも隣に彼女がいたからだ。もし、私一人だったのなら、もう空港に到着していただろう。でも、今空港へ行かなければならないのは私ではなく彼女で、彼女は17歳だった。


 車は一分に5メートルしか進まなかった。だから、空港までは、気が遠くなるほどの時間がかかった。

 その長い時間の退屈を、私と彼女は世間話をして潰した。でも、その時間はあまりにも長すぎた。

 そして、5分ほどの沈黙の後、彼女はこう切り出したのだった。


 ねえ、もう一度17の頃に戻りたいって思う?


 私は少し考えた後、こう答えた。


 思わない。それにそんなことはできないよ。


 すると彼女は不思議そうな顔をしてこう言った。


 どうして?


 私はその質問にこう答えた。


 私は私でしかないし、君は君でしかないからだよ。


 彼女は不思議そうな顔のままだ。


 つまりさ、朝、目を覚ましながら眠ることはできないし、真昼の太陽を眺めながら深夜の月を見つけることもできない、それと同じように、大人でありながら、若くなることもできない……なんだか変な話だけどね。


 彼女は不思議そうな顔のまま、こう言った。


 ふうん。


 そしてまた沈黙が私と彼女を包んだ。でもそれは暑い夏の真昼に吹く涼しい風のような沈黙だった。


 ねえ、もう一度、17の頃に戻りたいって思う?

 そんな言葉が、私の中で響いている。


 車は少しずつ進み始めた。もうしばらくすれば、私と彼女は空港に辿り着くだろう。予定の便の時間には遅れてしまったけれど、その次の便がやってくれば、それに乗って彼女はどこか遠いところへ行ってしまうんだろうな……。


 もし、私が32番目の夏と一緒に17番目の夏を迎えて、彼女と一緒に飛行機に乗ることができたらどんなに良いだろう……。

 しかし、私の17番目の夏は、もう15年前に、小走りに過ぎ去ってしまった。


 いまは、32番目の夏でしかない。

 私は彼女を送り届けた後、家に帰って、冷たいビールを飲むだろう……。


 私はそんなことを考えながら、空港へ車を走らせた。

 隣では、彼女の小さな寝息が聞こえた。

拙い文章ですが、楽しんで読んで頂けたなら、幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして。 このタイトル凄く好きです。 作品の雰囲気や季節感にぴったりだなぁと思いました。 内容も二人の微妙な関係を思う主人公の気持ちが伝わってきました。 ただ、前でも述べられてるように…
[一言] 率直に、文章がくどいです。同じ言い回しを繰り返すあたりがあったと思うのですが、いい効果にはなっていなかったですね。ストーリーの面では、とても興味を持てるというか個人的に近い部分があって読ませ…
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