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前編

このパターンあまり見ない。

今に始まった事ではないが婚礼の打ち合わせに婚約者が来られなくなったそうだ。

風に揺れるレースのカーテンの隙間から見える空は暗い色の雲がゆっくり広がり始めている、雨になりそう。


三文小説に良くあるお話ならば良かった。

物語では待ち合わせのタイミングで『病弱な』義姉妹や幼馴染の体調が悪くなりそちらを優先した結果ヒロインは蔑ろにされる。

現実は違う。


2年前に先に卒業した婚約者は王宮で文官として働いている。

侍女が差し出したシルバートレイに彼からの簡素なメッセージカードが乗せられている。

『仕事の上司からの指名なんだ…解って欲しい。』

ええ…解っております。

メッセージに心の中で返事をした。

祖父同士が飲み友達で決まった婚約に物語の様なドラマは無い。

私の恋愛感情も勿論無い。


彼を毎回指名して呼び出す上司は王族の我儘な末姫ではない。

少し疲れた印象の40歳前後の()()()()と同じ部署に勤務している文官から聞いている。

何処を気に入ったのか分からないけど視察や休日出勤の相方に彼を指名してくる。


本来なら数ヶ月後に控えた私の卒業後に婚姻予定だけど彼が卒業してから一度として約束が守られていない。

両親は最初『仕事の付き合いなのだから』と諫めていたが流石に2年連続で新年の挨拶も誕生日プレゼントも贈られて来ない関係性を疑問視している。


私からは彼に対し誕生日など節目の贈り物はしている。

ネクタイピンやカフスボタンに色硝子のペン。

どれも私の瞳の色を意識した物。

彼からは花一つ贈られていない。


ザン…と音を立ててカーテンが宙を舞った。

湿った風の香り。


もう雨は降り始めたようだ。

落ち葉を巻き上げて荒れ狂う風景を窓硝子を閉めながら見ていたが心は反対に凪いでいた。


誤字報告ありがとうございました、対応済です。

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