表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チート級転移能力で無敵の敵国王の懐に潜入した少女スパイ~友情を裏切り王を討つ日~  作者: 重井 愛理
一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/32

30話:友達

 リリィは、彼に背を向けると、ルナの元へ走った。ルナまでは20mと離れていなかった。しかし、今はその距離が長く、もどかしかった。


「リリィ!」


 激しい戦いの末、その場に倒れ込む小さな体を、ルナが慌てて支える。


「ルナ、最後の投擲完璧だったよ。」


 リリィは、体中の火傷をものともせず、笑った。


「どうしてリリィはいつも私を守ってくれるの?」


 ルナは、リリィの目をじっと見つめながら問いかける。頬の火傷の跡に、そっと手を触れる。


 リリィの瞳が光の形を映し出す。


「大好きな友達だから。それじゃダメかな……?」


 ルナは、抱きしめたリリィの震える体に、自分の体温を分け与えるように、さらに強く抱きしめた



 二人を、青白い柔らかな光が照らす。

 いつしか厚い雲は晴れ、満月が二人を見守っていた。


 沈みかけの船から見た光は。

 満月だったか、稲妻だったか。

 それすらわからず、しかし、確かにこの瞬間だけは。

 羅針盤は自らその針を影に溶け込ませ、姿を消していた。




 二人は、焼けた地面にどちらからともなく座り込むと、お互いの肩にそっと寄りかかった。


 リリィは、満月を見上げるルナの横顔に、静かに視線を留めた。風に揺れる金色の髪が、月の光を浴びて、淡く輝く。赤い髪飾りの輪郭が滲む。


「ルナ……。月、綺麗だね。」


 繋いだ手は脱力したまま、指の一つ一つが、ただ温度だけを伝え続ける。


 ルナはリリィの身体を改めて見つめた。

 傷だらけの身体。

 それでも、群青色の瞳に映っているのは……。

 桃色のペンダントが遠くなり近づく。


「私、来年もリリィと見たい…約束だよ!」


 ルナは、やっと、その言葉を絞り出した。


「うん……!」


 その日、二人は、新たな約束を交わした。





 アークは、倒れたまま王立治療院での会話を思い出していた。


『カイ様。私のような能力の制御もままならない人間を近衛兵になどと、お戯れはおやめください。』


『アークはあと一歩のところまで来ているよ。守るべきもののためならお前はもっと強く在れるはずだ。』


 地面に転がった一本の短剣と、熔解した自分の刀の残骸を交互に見比べる。起き上がる体力もなく、その手は誇りに届かない。




 数分後、カイが到着した時には全てが終わっていた。

 彼は、地面に残る雷の痕跡を辿った。その痕跡が途切れた場所に、二人の少女が寄り添いあって座っていた。

 彼は、大きく、深く、息を吐いた。


「ルナ。君は直ちに王宮で保護する。リリィも一緒に来てくれるね?」


 ルナとリリィは、互いに顔を見合わせて頷いた。


 カイは、二人の前に静かに膝をついた。地面にそっと手をかざす。大地から、細かな砂が湧き出し、砂のベッドを形作る。二人は、ふかふかの柔らかなベッドに身を投げ出した。



 次に、彼は、地面に残る灼熱の痕跡を辿った。その痕跡が続く場所に、一人の青年が倒れていた。


「アーク。雷は関係ない。子供たちは皆、私たち兵士が守るべき、仕えるべき存在だ。」


 アークは、右手で目元を覆い、かすかに肩を震わせた。


「私にとって仕えるべきは、ただ一人、雷神王リディア様です……!ですが、彼女らにも守りたいものがあったのですね。」


 周囲の大地は夜の冷たい空気に触れ、凝固していた。


「カイ様、私は守るべき民を傷つけました。私を拘束してください。」


「……私は消火に能力を使いすぎた。今の体力ではルナとリリィを運ぶので精一杯だ。アーク、お前は自分の足で歩けるな?」


 カイは煤と泥にまみれた軍服を手で払うと、2人だけを連れて王宮へと踵を返した。

 彼は、いつの間にか、遠く離れていたはずの刀と鞘が、自分の近くに転がっていることに気づく。


「はい……っ!」


 ゆっくりと立ち上がる。

 刀身のほとんどが失われた刀を鞘に収め、腰に下げる。

 硬い大地を踏みしめて、彼は歩き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ