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チート級転移能力で無敵の敵国王の懐に潜入した少女スパイ~友情を裏切り王を討つ日~  作者: 重井 愛理
一章

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26話:対決

 迫りくる死にルナの体は硬直し、瞼は固く閉じられていた。


 甲高い金属音が響く。

間一髪で、リリィの構えた短剣と、アークの刀が激しく衝突する。腕を交差させて衝撃を受け止める。


 リリィが必死に叫ぶ。


「待って!アーク君!!違うよ!ルナは、」


 一瞬の鍔迫り合い。しかし、アークが体重を乗せて踏み込む。その衝撃で、リリィの体は大きく後ろへと吹き飛んだ。


「がっ……!!」


「何が違うと言うんです!それともあなたはリディア様を疑うんですか?」

赤い瞳が、リリィを睨みつける。


「でも、ルナは!」


(リディア様は生きてた。どうして……ルナは雷に目覚めたの?)


 リリィも答えを持っているわけではなかった。

 ただルナと交わした”約束”が彼女を突き動かしていた。直ぐに起き上がると、短剣を構え直す。


 瞳の赤が増す。


「あなたはカイ様の客人のようですが……邪魔立てするなら容赦はしません!」


 アークは、一度刀を鞘に納めると、地を這うように姿勢を低くした。


(この構えは……!来る!!)


 アークの指先が僅かに動いた刹那、リリィの全身に鳥肌が立った。何もしなければ次の瞬間自分の首が飛ぶ、確信めいた感覚を覚える。

 彼女の目は、アークの動き出しを寸分違わず捉え、意識よりも先に体が反応する。ただ本能的に、自分の首の前で短剣を持ち、衝撃に備えた。


 金属と金属が激突する乾いた音が、周囲の空気を切り裂く。

 左腕の痺れが全身に広がる。体は長時間の訓練の後を思わせるほどに重く、心臓が大きく脈打つ。内臓がずれたかのような吐き気を感じ、肺から空気が押し出される。


(重いっ!!訓練の時とは全然違う!!でも、カイさんが来てくれるまでは……。)


 腕に突如として現れた一本の線から、鮮血が流れる。それでも、その双眸は真っ直ぐにアークを捉えていた。



「今のを受け止めますか……。流石リリィさんです。それなら、”これ”はもう無意味ですね。」


 アークは一旦距離を取ると、躊躇せずに刀と鞘を地面に投げ捨てた。


 ギィ……と地獄の釜が開くような不穏な音を立てて、アークの体から熱気が立ち込め始める。

 腰を落として掌底を構える。


(これが、アーク君の能力……!)


 寸分の狂いなく突き出された掌底を紙一重でかわす。しかし、ジュウ…と、焼けた肌の痛みが頬を走った。


「うっ!」


 思わず自分の頬に手を当てる。それは、熱いというよりは、皮膚が千切れるような感覚だった。


「どうして、ルナを狙うの!?」



「”雷の能力者は有史以来この世界に一人だけ”、それが揺らぐことのない理です。二人目の存在は、必ずこの国に混乱を招きます!」


 アークは雄叫びを上げながら追撃する。

 雄叫びは、彼の全身から絞り出される闘気そのものだった。彼の筋肉は鋼のように隆起し、右足が地面を強く踏み込む。その反動で腰が鋭く捻られ、鞭のようにしなる足に、全身の力が一点に集中していくのがわかる。


 蹴り上げられた左足は、まっすぐな軌道を描き、リリィの頭部に襲いかかる。

 迫りくる高熱を、鍛え上げられた右手の手甲で受け止める。鈍い衝撃音が森に響き渡り、周囲の空気が振動する。手甲が瞬く間に赤く変色し、グニャリと変形する。

 それが、蹴りの衝撃を吸収することはなかった。


 リリィの体は、明白な力に押し戻され、地面を滑る。


「あ゛ぁっ!」


 焼け焦げた樹木に打ち付けられる。ボフッ、と大きな音を立てて、灰が舞い上がった。


 歯を食いしばりながら立ち上がる。まだ熱の残る手甲を外し、右手にも短剣を構える。


「それはあなたの想像でしょ?ルナの存在が、何かこの国に影響を与えた?ルナはまだ何もしてない……!」


 リリィは喉の奥から声を絞り出した。



 アークは腕を大きく広げ、天を仰ぐ。


「何もしていない?この森を見て!?我々一介の能力者と違い、雷の能力者は目覚めたときから天災の如き力を使役する。 そこの少女が目覚めた以上、一刻の猶予も残されてはいません。」


 舞い上がった灰が、再び地面に降り注ぎ始める。リリィは、その灰の雨に逆らうように、力強く地面を蹴り上げた。短剣を頭上に構え、高く、高く、舞い上がる。


 重力に引かれるまま、リリィの体が勢いよく加速する。彼女は、その落下と高さを利用し、両手に持った短剣を、真上から一気に振り下ろした。しかし、アークは、その刃を避けようとはしなかった。彼は、ただ静かに、その両手を広げ、刃を受け止める構えを取る。


 振り下ろされた二つの短剣が、アークの”素手”とぶつかる。

 熱が、短剣の硬度を奪う。

 二人は、互いの呼吸すら聞こえるほどの至近距離で向かい合った。



(リディア様はきっと全部わかった上で私に行かせてくれたんだ……)


 リリィは、彼女の温かな手の感触を思い出す。


「それでも、リディア様はそんなこと望んでない!」


「あなたは何もわかっていません!!」


 アークの短剣を掴む手に力がこもる。短剣が飴細工のように折れ曲がる。

 

「混乱の隙を他国に着け入れられることがあれば……またエレクシアは戦禍に巻き込まれる!私はこの国を守らねばならないのです!!」


 赤い瞳が揺らめき、燃え上がる。

 リリィは肌に感じる異変に、飛び退いた。


 アークの周囲の空気ははっきりと歪み、薄い赤に色づいていた。地面がドロドロと熔け始める。

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