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その花は天地の間に咲く 前編  作者: 檜崎 薫
第二部
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意思確認

 「シャルロッテを結婚させろ?〈結婚を〉見守れというのではなくて?」

 妻に話を聞いてユーゼフは驚いた。

 「言い回しを間違えていないか?兄だから命令はできるけれど、だからといってそれをそういう形で使いたくない」

ー彼はそう言ったが、ルドヴィカは、

 「…お膳立てしてあげたら良いのです」

と話を続けた。

 「イマヌエル卿に報いるためにも、妹君を彼にお与えになって」

 「…2人の気持ちも揃っているのかな」

 「一緒になってしまえば自然と」

ルドヴィカは言った。

 「自然とそうなる?」 

 「なると思います。…いきなり嫁げと言っているわけではないのですし」 

 「それはそうだが…」

なぜ急にそう言い出したんだい?ーようやくユーゼフは聞く気になった。

 「こちらへお2人が戻られてから、お妹に触れたくてたまらなくなったそうなの」

 「ーあのイマヌエルが?」

 「ええ。…だから」

妻から話を聞いて、そういうこともあるのかとユーゼフはまた考えている。

 「あちらでは、姫のおしゅうとになる方が披露宴をご準備なさっているそうです。私が言ったせいもありますけれど、それはやはり一方ではご嫡男のお祝いになりますし」

先に進めてしまってごめんなさい。ー説明をしながらもルドヴィカは謝ったのだった。

 ユーゼフは考え込んでいる。ー話は進めてもらえてよいのだと彼自身思っていた、ただ妹の本心をまだ図りきれていなかった。この先イマヌエルと一緒になって、妹は彼の妻としてうまくやっていけるのだろうかー。そういう不安がユーゼフにはあった。

 「確かに別れたいなどと妹がいうのを僕は聞いたことがない。ただ…」 

 ユーゼフはルドヴィカに話した。

 「進んで一緒になりたいとも聞かなかったから、心配は心配なんだ」

 「…もう一度お2人に話をしてみます?」

それで合わなかったら考えましょう。ー夫の言葉にルドヴィカが言った。

 「そうだね」 

ユーゼフも同意した。ー宮殿の小さな部屋へ彼は妹とその婚約者を呼んだ。大公も息子の横に座り話を聞くことになった。そこで彼はイマヌエルとシャルロッテからそれぞれ話を聞いた。

 「改めて妹の護衛ありがとう」

 ユーゼフはイマヌエルに言った。 

 「君についていてもらえて助かった。じき妹も成人だがー今回の小旅行で、妹について思うところは変わったかな」

それとなく切り出され、イマヌエルも緊張で固まった。

 「…率直に教えてくれていいんだが、今でも君は妹を妻にほしいかい?」 

 「…はい」

少し目を伏せながらイマヌエルは答えた。

 「クレステンベルクにも、ー妹と2人見に行ったと聞いている。…クラウス卿の養父が、妻の国に属する人なので少し難しいかと僕は思っていたが君も伯爵もよくやってくれた」

ユーゼフは笑顔で話を続けた。 

 「僕は君になら妹を預けてもいいと思っているし、妻もそのつもりでいる。それで今回君たちを一緒にさせようと考えたんだが君はどう思う?」

シャルロッテを君に嫁がせろというのは妻が言いだしたことなんだ。ーそこまで聞いて、イマヌエルの声が裏返った。

 「妃殿下が…私に嫁がせろと?」

 「うん」

 イマヌエルは一瞬答えられなかった。

 「ーシャルロッテ様が来てくださるというなら、それで決心もつきます」

彼はやっとそう言った。ーユーゼフはここで再び微笑んだ。

 「…なら、後はシャルロッテ次第だ」

だがシャルロッテはまだ準備できないと言い出てきそうになかった。

 「そなたの義理の姉も、…18で母親となったのだ」

 大公は娘に言った。

 「比べるものでもないがー身分ある者ほど早く結婚せぬと相手は見つかりにくい。その肩身の狭さをそなたに味わわせたくない」

 「私は遅い方なの?」

シャルロッテは父親に聞いた、だが大公は

 「あれだけそなたを思い気にかけてくれる男も他には見つかるまい。ーそなたは相手の気が変わる前に嫁ぐが良い」

と言うだけだった。ー彼の気が変わる前に?ー父親に言われシャルロッテは悩んだ。もし向こうの気が変わってしまったら、婚約者も探し直すことになる。それだけは困る。だがまだ結論は出せないのだった。イマヌエルに嫁ぐことをシャルロッテが決めたのは、兄の姿をルドヴィカから聞いた後だった。

 「お付き合いしてそれからというわけでも自然に結婚する意思ができたわけでもなく、そうすることが私のためにいいと兄が決めたそうで」

 シャルロッテは目を丸くした。

 「冗談か本気か、私をさらえとまで、兄は卿に言っていたそうよ。…殿下はそれほどではないでしょうけど」

 「一番信頼できる友人にそなたを託したいということだ」

 「兄様がそこまで…」

 

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