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その花は天地の間に咲く 前編  作者: 檜崎 薫
第一部
51/96

切り離し

 ーユーゼフと対面したゴットフリートは、執務室で話を続けていた。

 「僕はさすがにそうは思わない。ただ、君が後妻の身内だから、妹はそういう感覚で君のことを見ていたんだろう。それはこちらでもどうしようもないことでね」

ユーゼフが言うと、ゴットフリートは一言

 「痛み入ります」

と答え、それからユーゼフにこう告げた。

 「このままでは任務に差し支えるので爵位をお返ししたい」

 「それはどうしてかな?」

ユーゼフは親友に問いかけた。

 「ー使用人が口を利いてくれず、城の管理が滞っています」

 「そうか。⋯」

少し思い巡らしながらもユーゼフは彼にこう答える。

 「1人でやったのではなさそうだな⋯大人がついていたんだろう。でも誰だ?」

 「母は、ー『ここに来てから愛人の物言いが滑らかになった』と」

ゴットフリートが言った。

 「その男は、僕たちと同じような服装だったかい?」

 「ーいいえ」

ユーゼフに聞かれゴットフリートは答えた。

 「家で廃嫡になったそうですが、⋯その家がどこにあるかまでは」

彼は子供時代を思い出しながら話をした。

 話をしながら、ユーゼフは妹のことをまた思い出した。婚約者の顔が誰かに似ている、見覚えがあると言ってシャルロッテがずっと隠れ回っていたのを。もしかしたらあの家の長男だったのかーいや思い違いかも知れないから黙っていよう。いろいろ考えながら彼は話を続けた。

 「シャルロッテのことだが、⋯イマヌエルに探してもらっている」

 「そうでしたか。ー公女殿下は,式にご参列なさらないと私は伺いましたが」

誤報ですよね?ーゴットフリートは言ったがユーゼフは真面目な顔でいや、と答えた。

 「どうも本気らしい」

 「ご兄弟のお祝いごとに不参加を通されるとおっしゃったのですか?」

 「本気になると止められないからね。それで僕も困ってる」 

 ユーゼフは少し区切ってから話し始めた。

 「妹が使用人を入れ替えたのは、反応を見るためじゃないかと思う」

 「私の反応ですか?ーそれとも」

 「先代と君両方のだろう。⋯もちろん子供の頃のことだから、どこまで考えてやったかは解らないが」

自分の兄さんがいなくなって寂しかったのもあるんだろうな。ーユーゼフは言った。

 「⋯我々は何も」

養父の娘が死んでしまったことは母に聞いて知りましたが⋯。ゴットフリートは言った。

 「解っている」

ユーゼフはうなずいた、

 「侍女が証言してくれた。ー夫人の口添えで少年は実家に匿ってもらったと。ただ母親は先代と後妻の愛人が手にかけたという話だ」

ゴットフリートは押し黙った。自分の母親がそこまで恐ろしい男を相手にしていたというのが、彼には信じられなかった。

 そこでしばらく沈黙が生まれた、その後にユーゼフが話し始めた。

 「⋯君は爵位を手放したいと言ったが、その意思は変えられないのかな」

今は大変な時期で、実力者が抜けてしまうとこちらは動けないんだ。ーユーゼフの言葉。

 「人が集まるまでお待ち頂ければ⋯」

ゴットフリートが答えると、ユーゼフは

 「今はどうしてる?」

 「領地だけは6人の侍従・側近と手分けして回っています。ー中は何も」

 「⋯手がつかないのか」

ユーゼフが残りの言葉を引き取った。

 「中にも手入れは必要だから、⋯そうだな、引退した侍女たちにそこへ行ってもらおう。そうすればいくらか違うはずだ。ーそれからもう1つ」

そう言いながら彼は再び書状を取り出した。

 「⋯君が婚約者を手放さないと先代は嘆いていた。だが、どうしてもあの人は他の貴族に渡せないんだ。これがその理由だよ」

ー彼は書状をゴットフリートに差し出した。

そこにはルドヴィカと子供の名前、その脇に彼も見覚えのある男の名前があったー

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