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その花は天地の間に咲く 前編  作者: 檜崎 薫
第一部
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極秘行動

 シャルロッテを説得すると、イマヌエルは彼女を乗せ馬で自分の城へ向かった。自分の城ー正確には彼が父親から引き継いだ城だ。グランシェンツ城、カルナッハ城ーこの2つがフォン・プレグマイヤー家の拠点となっている。都近くにある城では、最大規模を誇る古城だ。

 イマヌエルには兄と姉が1人ずついるが、兄は出奔してしまいずっと戻って来る気配がない。姉も既に嫁いでいるため、両親と彼のほかに城で暮らす家族はいなかった。

 「少し寒いが、我慢していてください」

 イマヌエルはシャルロッテに言った。 

 「何、…迎えに来るのに馬1頭なの?」

彼女の言葉にイマヌエルも苦笑いした。

 「急いで宮廷を抜けてきたのです。あなたを探すため」

馬車だと移動が目立つので。ーイマヌエルはそう話すのだった。

 「行動力には感服いたしますがーお1人ではあまり動かないで頂きたい。ーなぜだか解りますか?」

彼はシャルロッテに尋ねた。

 「いいえ。…何かあって?」

 「傍系皇族が動き出したからです。兄上からお妃を奪ったのもその子孫で、ユーゼフ様も彼らの動きには警戒なさっています」

傍系皇族と聞きシャルロッテは眉間にしわを寄せた。ーまだあの人たち何か企んでるの?何が本望なの?ーそういうシャルロッテは、自分の目をつけた相手がその数倍も恐ろしい毒蛇ということを知らなかった。

 「フェルディナンド卿に電報が届きました。アステンブリヤ公がこちらへ向け動いたとー誰と組んでいるか解らないので、様子が落ち着くまで私の親といてください」

 「⋯ご両親は私が伺うのをご存じ?」

 「使いを出して頂きましたから、知っているはずです」

ー妹の安全確保のため人を使うユーゼフと、婚約者を探すために単騎で動くイマヌエル。どちらもすごい執念の持ち主だった。

 自分の着て来た外套をシャルロッテに被せイマヌエルは城まで馬を走らせた。

 「馬で行くの?」

シャルロッテは意外そうだったが、

 「目立たないようにするためです」

としかイマヌエルは言わなかった。行き先はカルナッハー先祖が国を治めていた頃拠点としていた町。ここに彼は両親と暮らしているらしい。

 ー馬の背に揺られながらもシャルロッテは眠るまいとしていたが、彼女はいつの間にか眠り込んでしまった。片手で彼女を抱き締めながらイマヌエルは手綱を握っていた。

 「問題は兄上だな…この可愛い人に近づいていなければいいんだが」

彼は呟く。

 「政務も待っているから、シャルロッテ様のことは当分父上にお願いしよう」

 外はだいぶ暗くなり、回りには人影がなくなっていた。星もなく月光だけが2人の姿を照らし出していたが、イマヌエルにはそれでちょうど良かった。万一アステンブリヤ公に見つかったらたまらない。

 最後の鐘が鳴り始める頃、2人は目的地に着いた。カルナッハ城ー14世紀に建てられたフォン・プレグマイヤー家の居城。この城がイマヌエルの生活拠点だった。

 「着きました」

 イマヌエルはシャルロッテに言った、 

 「少し古いが居心地は良いはずです」 

到着したと言われ、シャルロッテもようやく目を覚まし眼の前に立つ城を見つめた。

 「この城があなたのー?」

 「ええ、…そうです」

当分こちらにいて頂きます。ーイマヌエルは言った。

 「監禁のようになってしまうが、それはこの際ご容赦頂きたい」

 「何だか穏やかじゃないわね」

シャルロッテは不満を漏らすがイマヌエルもそれを聞くわけにいかなかった。彼女の兄が奇襲され命を落としていた。

 「…兄上と同じ目には遭って頂きたくないので、そればかりは」

それでシャルロッテも口を閉じた。翌朝兄の城を訪れ、彼女は兄に何が起きたのかを知ることになる。

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