出仕
世界史大好き人間です。
ー頭に思い浮かんだものを
セリフや文章にして書いています。
…気が向いたら読んでやってください。
以上です。。
ゴットフリートは、服喪を切り上げ早めに登城した。午前中は空いているとユーゼフは言っていたが、必ずしも昼まで話をできるという保証はない。朝の食事を簡単に済ませ、彼はペトロネラと一緒に出発の準備をした。
「ーお前には殿下に仕えてもらおう」
ゴットフリートは言った。
「殿下、ですか?」
ペトロネラは不思議そうな表情だった。
「ロッセラーナの皇女だ。ー前に俺と婚約していた」
「ルドヴィカ様にお会いできるのですね」
「…ああ」
ー侯爵家の侍女だから、誰が主人と婚約していたか彼女もよく覚えていた。捜索兵が城に遣わされた時も彼女は様子を見守っていた。
ルドヴィカについていた侍女が結婚のために役を降りると聞き、自分のところから連れて行こうとゴットフリートは決めたのだった。
「ーユーゼフ様にもお伝えしてあるから、お目通りさえすれば」
「ありがとうございます、旦那様」
公爵領から都までは馬車だと2日掛かってしまうので、ゴットフリートは、特急列車の二等席を2つ取った。ー貴族だから一等席を予約してもいいのだが、一等席は国外からの来賓も乗るため避けたかった。駅まで馬車に乗って、列車で都へ向かうのだ。荷物は脇に載せ、ゴットフリートと向かい合って座ったペトロネラだが。
「あら、⋯旦那様?」
仕事熱心な主人が何故か窓を見つめている。気づくと彼を見つめてしまい、視線を感じたゴットフリートは、彼女に問いかけた。
「どうした?ー何か変か?」
「ごめんなさい」
ペトロネラは慌てて謝った。
「窓をずっと見ていらしたので、お考え事の最中なのかと⋯」
「それでだったのか」
ゴットフリートは苦笑いした。
「ずいぶん会っていないから、あれからどうしたかと思って」
殿下と婚約したと聞いたきりだ。ー彼は少し目を伏せた。
「⋯皇女様ですか?」
「ーああ」
それから2人は口を閉じた。2刻ほど乗ると駅に着いたので、2人は改札へ急いだ。都はこれから列車に乗って四半刻はかかる。
特急列車で都へ向かうと、いつもとかなり様子が違った。乗客たちも顔を見合わせ息を潜めている。宮廷警務兵が複数乗り込み厳重に身元確認をー。ゴットフリートは席の小机に身分証を載せて順番を待った。
「いつもこうなのですか?」
ペトロネラは言ったが、ゴットフリートは
「いやー」
と言ったきり口を閉ざしてしまった。ー絶対何かあった。中の雰囲気から何か起きたのだと彼は感じたのだ。これだけ列車の雰囲気が物々しかったことは一度もない。
「お久しぶりです、侯爵閣下」
ー警務兵が回ってきた時、自分の身分証を見せながらゴットフリートは彼らに尋ねた。
「今日はいつもと違うな。何があった?」
「妃殿下が逝去されました」
「それはいつだ?ー昨晩か、今朝か?」
ゴットフリートは身震いした。ー俺の登城を待って動いているな。いったい何者なんだ。
「ー今朝です」
「殿下のご様子は?」
「検死を急がせておられますが、ご拝謁する分には特に支障ないかと」
「解った。ーありがとう」
ゴットフリートに敬礼し、警務兵は2人の前を立ち去った。ペトロネラはすっかり体を強張らせている。
「この状況で宮廷に上がって大丈夫でしょうか?」
彼女は言うが、ゴットフリートは
「大丈夫だ。ー宮殿にも殿下の城にも衛兵が交代で詰めている。心配するな」
ーその言葉にペトロネラも解りましたと答え軽く笑顔を見せた。ゴットフリートもそれを見て少し口元を綻ばせた。列車は2人が話をしているうち都に到着した。




