表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/97

第二十章〜終焉の召喚神〜①

ロキは、まるで拍手喝采を受ける舞台俳優のように一礼し、祝福するかのような笑みをみせる。


「おめでとう。おめでとう。実にめでたい日だねぇ。悪魔を退けて、世界は救われた。素晴らしい功績だよ」


黒いローブを身にまとい、悠然と瓦礫の上に立つロキは、無邪気なようにみえて底知れぬ悪意を孕んでいる。


「ロキ……!貴様……!」


怒気を込めてエルクが叫ぶと、ロキはそれを称賛とでも受け取ったかのように、にこやかに応じた。


「そんなに怒らないでよ。キミたちは勝ったんだよ?誰もが望んだ結末じゃないか。ほら、危機は去ったんだから、めだしめでたし」

「ふざけるなッ……!!」


エルクは拳を握りしめ、血走った目でロキを睨みつけた。

だが、ロキはまるで子どもが拗ねてみせるような顔で、肩をすくめる。


「そんなに怖い顔しないでよ。こっちは祝福してあげてるのにさぁ。……ああ、そうか。クロスのこと、怒ってるんだね?」


その名に、エルクの肩がびくりと震える。


「お前がその名を呼ぶなッ!!」

「自分で殺したんでしょ?キミの―――その『手』でさ」

「黙れ!!」


エルクの顔が、苦悶に歪む。

拳を強く握りすぎて、手のひらから血が滲むほどだった。


その様子を見ていたフィールが、一歩前に出てロキを睨みつけた。

そして―――


「ロキ……お前、一体何のためにこんなことを……!!」


我慢ならないというように叫ぶフィールに、ロキはまたしても肩をすくめてみせた。


「ん?前にも言ったよね?僕の目的は『世界への悪戯』だって。退屈でたまらないこの箱庭に、ほんの少しスパイスを加えたくてさ」


その言葉に、仲間たちの表情が次第に強張っていく。

血と汗にまみれた戦場で、命を懸けた彼らにとってあまりにも許しがたい台詞だったのだ。


「……人の命を……スパイスだって?」


バールが低く、唸るように言う。

その目には怒りを堪えた炎が宿っており、握る拳が震えていた。


「お前の気まぐれで・・・・・どれだけの犠牲者が出たと思ってる……!」


詰め寄るようにバールが叫ぶものの、ロキは飄々としたまま楽しげな笑みを浮かべた。

一興とばかりにくすくすと笑い、無邪気に首を傾げる。


「うーん……数えたことはないけど、けっこうドラマチックだったんじゃない?」


その言葉に、誰もが息を呑む。

怒りすら通じない異質な存在に、その場の空気が凍りついたのだ。


「でもさ、僕の完敗って感じだよねぇ……。サタンは倒されたってのは認めるけど―――」


ロキは、考え込むような素振りをみせると、すぐにぱっと顔を上げた。

そして、とんでもない言葉を放ったのだ。


「そうだ!『人類は救われた』けど、『教会は全滅』―――こんなエンディングはどうかな?」


そう言って、ロキは両手をゆっくりと広げた。

その瞬間、空気が重く歪み、視界がぐにゃりと揺れる。

重力が反転したかのような圧が、そこにいる全員の身体を押し潰すように襲いかかったのだ。


「動け……ない……!?」


呻き声が漏れ、みなが地面に縫い止められたように動けない。

そんななか、ロキは音もなく移動し、エルクの前へと現れた。


「ほんとにキミって子は……無力化したはずなのにオーディンと契約しちゃってさ」


嘆くように言うその声は、嘲りに満ちている。

そして、ロキは軽くため息をついたあと、ニヤリと笑った。


「こんなことなら、ネタバラシせずに見張っておけばよかったなぁ」


そう言うと、ロキは膝をエルクの腹に突き刺した。


「ぐっ……!」


膝をついたエルクは、腹を押さえながら顔を歪め、ロキを見上げる。


「お前は……いつも何を考えてるかわからねぇやつだった……でも……信じてた……!」


苦しみのなか、かすれた声で絞り出された言葉にロキはくすくすと笑う。

その無邪気な笑みに、怒気を隠せなかったフィールとライナスが背後から攻撃を仕掛けた。


「うおぉぉぉっ!!」


雷のような叫びとともに、フィールが風の刃を放つ。

そして、ライナスはミョルニルを振り上げたが、ロキは振り向くことなくひらりと躱したのだ。


「おっと、こわいこわい。そんな重たい空気じゃ、動きも重たくなるよねぇ」


楽しげに言いながら、ロキは指先をくるりと回す。

その瞬間、さらに強くなった重力の奔流が、全員を押し潰しにかかったのだ。

地にひれ伏すように倒れ、教会員たちは顔を上げることすらままならない。


「か、身体が地面に縫いつけられたみたいだ……!」

「動けねぇ……!」


そんな声があちらこちらから漏れるなか、ヴァンがかろうじて腕を持ち上げ引き金を引く。

だが―――


カンッ……という金属音とともに、銃弾は虚しく弾かれてしまったのだ。


「あはは……!ごめんごめん、忘れてた?僕、『神様』だからね」


ロキは軽くウィンクしてみせると、ゆっくりと空間から一本の剣を取り出した。

それは、かつてエルクが使っていた―――レーヴァティンだ。


「それ……っ!」

「やっぱり愛着あるでしょ?―――でさ、僕、考えたんだけど……自分が使ってた剣で最期を迎えるって、物語的に完璧じゃない?」


ロキは、楽しげにつぶやきながら剣を構え、エルクへと歩み寄った。

重力の檻の中、動けないエルクはただ目を見開いたまま膝をついている。


「じゃあ―――これでさよならだ、エルク」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ