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第十七章〜終わりの始まり〜②

ハイントスマンたちがベルフェゴールを打ち倒したころ、ルーインたちは教会の中庭でじわじわ迫る気配に神経を尖らせていた。

石畳に落ちる雨粒が弾け、濡れた石の匂いと確かな異変が鼻にまとわりついている。


「この静けさ……逆に嫌な感じですよね」


フィールが囁くように言いながら、風をよむように空を見上げる。


「敵が潜んでいるのなら、どこかでこちらをうかがってるでしょう。陽動か、それとも―――」


ルーインは、剣を手にしたままじっと中庭の隅を見つめていた。

徐々に雨が強さを増し、視界が悪くなっていく。

そのときだった。


「みんな!大変だ……!」


遠くから駆けてくる足音とともに、誰かの声が響いた。

一同が振り返ると、そこにフードを脱いだ『ヴァン』の姿がある。


「何かありましたか?」


濡れた肩を揺らし、焦った様子で走り寄ってくる『ヴァン』に、ルーインが尋ねる。


「バール班にサタンが現れたんだ……!」


その言葉に、ルーインたちは目を見開いた。


「天使のサマナーたちが危ない!応援を寄越すから、どこにいるのか教えてくれ……!」


焦りを滲ませながら叫ぶその姿に、誰もが一瞬たじろぐ。

だが―――


「なるほど―――。ところでキミは誰ですか?」


そう鋭く問うたのは、ルーインだった。

その声音に、空気が一気に張り詰める。


「……は?俺はエクソシストから派遣された『ヴァン』で―――」


必死に紡ぐようにして言葉を出す『ヴァン』。

しかしここで、フィールが口を開いた。


「ヴァンなら……そもそもここに来てないと思う。自分の役割を、途中で放り出すようなやつじゃない」


その言葉は、とても静かだった。

だが確信に満ちており、仲間として信頼している証だったのだ。


「何言ってるんだ、フィール……時間がないんだぞ!?天使のサマナーたちが殺されてもいいって言うのか!?」


『ヴァン』は声を荒げながら一歩前に出る

しかし、ルーインたちは微動だにしなかった。

冷たい風の吹く中庭で、ルーインの静かな声が響く。


「……その手にはひっかかりませんよ。残念でしたね―――アスモデウス?」


その名を呼んだ瞬間、『ヴァン』の顔がピクリと歪んだ。

一瞬の沈黙が流れ、ゆっくりと肩を揺らし始める。


「……ククク……バレちまったかァ……」


張り詰めた空気のなか、『ヴァン』の姿がぐにゃりと歪んだ。

四肢が伸び、口元が裂け、禍々しい角と鋭利な爪が現れる。

そして、人の姿を模していた皮が完全に剥がれると、獣のごとき異形の悪魔が姿をさらしたのだ。


「全員構えなさい!来ますよ!!」


ルーインの声に、フィールとベル、ジンがそれぞれ戦闘態勢へと入る。

その瞬間、アスモデウスが咆哮とともに突進してきたのだ。

その圧力に風が震え、雨が弾ける。


「さあ、来い!!」


ルーインは剣を構え、一歩も引かずに迎え撃った。

振り下ろされた鋭い爪を受け止めると、金属音が激しく中庭に響く。


「重い……!」


剣越しに伝わる力に、ルーインは思わず顔をしかめた。

それでも押し返すと、背後から吹きつける風と水がアスモデウスに直撃したのだ。


「ちっ……面倒くせェなぁ……」


アスモデウスは舌打ちとともに身をよじらせ、ルーインの剣を振り払うと大きく飛び退いた。

次の瞬間、身体をぐにゃりと歪ませ、三体へと分裂していったのだ。


「フィールとベルで一体、私とジンで一体ずつ相手しましょう!!」


ルーインの判断のもと、各々距離を取るように散開した。

雨が降り続く中庭の足場は滑りやすくなっているものの、誰一人ひるむ者はいない。


「みなさん、行きますよ!!」


誰よりも先に飛び出したルーインは、ノルンの力を使ってアスモデウスの動きを先読みした。

鋭く飛んでくる爪撃を紙一重で避け、首元へと剣を振り下ろす。

だが、アスモデウスはわずかに身をひねり、その攻撃をかわしたのだ。


「くっ……!」

「おいおい、初手から来るなァ?ヒトのくせにやるじゃねぇか」


アスモデウスは裂けた口を歪め、楽しそうに嘲笑う。


「なら、この姿はどうだァ?」


アスモデウスを形どる輪郭が歪み、再びその姿が変貌する。

その四肢が伸び始め、石畳を這うようにうねった。


「これは……厄介ですね」


ルーインがノルンの力を発動しようとしたそのとき―――


「ッ!」


ふいにその伸びた腕が一本、地を這う音すら残さずに迫ってきたのだ。

反射的に剣を振るい、ルーインは間一髪でそれを弾き返す。

だが、その衝撃は思った以上に重く、足元の石畳が砕けた。

水たまりが激しく跳ね、ルーインは後退しながら体勢を整える。


(今……ノルンの力を発動しようとしたその瞬間を狙われた……?)


その予測を確証づけるため、ルーインはもう一度ノルンの力を発動させる。

すると―――


「おまえ……『何か』してるんだろォ?んな隙、与えなきゃいいだけのことだよなァ?」


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