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第十五章〜光の復元と闇の喪失〜④

こうしてマリアたちが一斉に攻撃へと転じたころ、ルーインは薄暗い廊下の奥で剣を構えていた。

先ほどから姿を消しているアスモデウスと思しき男に向けて、神経を研ぎ澄ませている。


「……また気配が消えましたね」


静寂と緊張が重く支配するなか、ルーインは息を整えた。

まるで獲物を待つ狩人のように、集中を高めていく。

そのときだった。


「―――!」


廊下の先で倒れていた教会員のひとりがふらりと立ち上がったのだ。

その表情は虚ろなものの、どこか違和感がある。


「……来ましたね」


ルーインは目を細めた。

そしてノルンの力を使い、そのわずかな違和感の正体を見極めようと集中する。

すると、未来の断片が視え―――数秒後、その教会員がルーインめがけて襲ってくる光景が映し出されたのだ。


「やはり……!」


ルーインは剣を構え直し、即座に身構えた。

予知されたとおり、教会員の姿をした男の顔が突然歪み、口元が不気味に吊り上がっていく。


「気づかれちまったなァ?」


声を聞いたルーインは―――確信した。

目の前にいる教会員の姿を模した男が、森で戦ったアスモデウスだと。


「あなたの本質は知っています。どんな姿になろうとも……ここで仕留めます!」


剣を構え直すルーインに、アスモデウスは不気味な笑みを浮かべた。

そしてーーー


「じゃあ……これはどうだ?」


そう言うと、アスモデウスは教会員の姿のまま、その身体をぐにゃりと歪ませた。

まるで水面に映る像がぶれるように動き、次の瞬間―――左右に二体、まったく同じ姿をした教会員が現れたのだ。


「三体同時……!」


ルーインは眉をひそめた。

三体は、まるで鏡写しのように微笑を浮かべている。

すると三体は、各々勝手に話し始めたのだ。


「どうだァ?」

「あちこち見ながら戦うとか、めんどくせぇだろ?」

「三方向からぶっ叩かれて、これで生きてりゃ大したもんだぜ?」


「……卑劣な真似を」


剣を握る手が強くなっていくなか、三体のアスモデウスは静かにルーインを包囲していく。


「さぁ、一発目……誰から受けたい?」


アスモデウスは同時に口を開き、声を重ねる。

森で聞いたあの声が響いてくるような感覚に、ルーインの背筋に冷や汗が伝う。


「ふっ……なら―――降ってきた攻撃をすべて斬ればいいだけのこと」


ルーインの足が動いた瞬間、三体のアスモデウスが同時に反応した。

鋭い斬撃が前後から迫る。


「勝負!!」


こうしてルーインとアスモデウスが交戦を始めたころ、フィールとベル、枢機卿のハイントスマンはルシファーと対峙していた。

崩れかけの石壁の前で、三人は無言のまま武器を構えている。


「……ルシファー」


ハイントスマンが低くその名を呼ぶと、ルシファーは無造作に肩にかついだクロスを傾けながら、口元をわずかに動かした。


「枢機卿……ぬしが出てくるとは、少し意外だな」

「貴様らの存在が地上に降り立った以上、我らは黙して見過ごすことなどできぬ」

「『我ら』……か。それは滑稽というもの。神の名を借り、なおその神に近づけぬ者たちが何を言うか」


冷たい声に、フィールが一歩踏み出す。

そして―――


「僕たちはここでお前を止める。この力が神に届かなくても、立ち向かうことはできる!」


と、その瞳にはっきりとした怒りの炎を宿したのだ。


「ならば見せてみろ」


ルシファーの声が落ちた瞬間、空気が震えた。

次の瞬間、彼の足元から影が蠢きだしたのだ。

その影は石壁や柱の陰、天井の梁からも溢れ出し、まるでこの空間すべてが彼の支配下にあるようだった。


「来るぞ!!」


影は無数の剣や槍、鎖などの武具へと変貌し、三人へと狙いを定める。

音もなく走り出す影に、ハイントスマンは咄嗟に光の障壁を展開した。

すると、影の槍が幾重にも突き刺さるが、光の壁はそれらをかろうじて受け止めたのだ。


「フィール、ベル!今のうちにルシファーに攻撃を!」


ハイントスマンが叫ぶと同時に、二人は頷き左右から仕掛ける。


「行くよ、ベル!」

「うん!こっちは任せて!」


フィールは風を纏い、影のなかを疾走した。

それを援護するようにベルは水で刃を作り、近づく影の武器を切り払っていく。


「……その程度の突破力でどうにかなるとでも?」


ルシファーは冷笑を浮かべ、肩に担いでいるクロスをやや傾けた。

するとその瞬間、地に落ちるすべての影がざわめき始めたのだ。

石壁の影や倒れた柱の影、フィールとベルが踏みしめる足元の影までもが揺れ動く。


「っ!?来る……!」


フィールが直感で飛び退いた刹那、地面から無数の影が飛び出し、まるで生き物のようにフィールを囲った。


「そんなの、させないんだから!!」


ベルが手を広げ、轟音とともに水の槍を放った。

それは影の束を裂き、刈り取っていくが次から次へと新たな影が現れる。


「キリがないわ……!」


ベルが歯を食いしばるなか、ルシファーは冷たく笑った。


「所詮はその程度か。どれだけ抗おうと、貴様らの力など神の模倣品に過ぎぬ。最高神が死んだというのに……ウヨウヨと湧きおって」


嘲るように吐き捨てると同時に、ルシファーの背後から膨大な影が爆ぜるように立ち上がった。

まるで空を覆い尽くす闇の波に、フィールたちは息を呑む。


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