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第三章 〜再会の森〜④

「ちょ…エルク!夜の森って怖いんだけど!?」


視界がぼんやりと霞むなか、エルクとフィール、ヴァンは静かな森の中に足を踏み入れていた。

エルクのコートの裾を掴むフィールに、ヴァンが不安げな表情をしている。


「おま…子どもかよ…」

「怖いものは怖いんだよっ…!」


湿った土の匂いや葉のあいだを抜ける風の音が、今夜ばかりはやけに遠く感じる。

すると、遠くに洞窟のようなものを見つけたのだ。


「中に入るとか言わないでよ…!?」


エルクの背中にぴったりとくっつくフィール。

何事もないかのようにエルクは、彼を背中につけたまま洞窟に向かって足を進めた。


「なぁ、灯りが見えないか?…ほら、洞窟の奥…」


エルクの声に、フィールは恐る恐る前を見た。

すると、確かに洞窟の中から微かな光が見えたのだ。


「むっ…村の人が使ってるとか…っ?」

「こんな森の中に?」

「かっ…可能性はゼロじゃないと…っ…」


フィールが怯え狂うのを無視するエルクは、無情にも


「行くぞ」


と、言い放った。


「えぇぇぇっ…!?」

「来ないなら置いていく」

「ちょ…!それは無理!!」

「なら行くぞー」


三人は音を立てないよう草をかき分け、その灯りを目指す。

洞窟に足を踏み入れながら、エルクは剣を手に取るように腰に手を置いた。


中は少し入り組んでおり、灯りはその奥にあるようだった。

息を呑みながら進んでいくと、灯りに照らされて巨大な影が現れたのだ。


(こいつが怪物…)


エルクは、怪物がこんな洞窟で何をしているのか気になり、少しのぞき込む。

すると、その怪物はその体格に似合わない長い手でパンを食べていたのだ。


(怪物がパンなんて食うのか…?)


そう疑問に思った瞬間、怪物の動きがピタリと止まった。

そして…ゆっくりと振り返り、低く―――しかしはっきりとした声でこう呟いたのだ。


「…兄……貴……?」


その声に、空気が凍りついた。

怪物は手にあったパンを振り返りざまに落とし、エルクたちはすぐさま戦闘態勢に入る。


「ロキ!!こいつを抑えろ!!」


エルクは大剣を抜き、ロキは裂けた空間から姿を現す。

しかし、彼はいつもと違ってエルクの声に従わず、洞窟の上部に腰を下ろしてしまった。

そして、何もすることなくニヤニヤと興味深そうに眺め始めたのだ。


「さて…どうしようかな?」

「チッ…!」


そんな様子を見ていたヴァンがしびれを切らし、リボルバーの引き金を引く。


バンッ!!


洞窟内に銃声が響き、弾丸は怪物の足に命中した。


「グゥッ……!」


怪物は苦悶の声を漏らして膝をつく。―――が、その傷口はみるみるうちに再生するのを三人は見ていた。

そして、一呼吸置いたあとまるで何事もなかったかのように怪物は立ち上がったのだ。


「再生……!?」


怪物の能力の一部を知った三人は、一斉に動く。

エルクは大剣を振り下ろし、フィールが風を集めて一撃を放つ。


だが―――


怪物はそのすべてを巨大な大鎚―――ハンマーで受け止めたのだ。

そして、怒声のような声が洞窟に響き、怪物は驚く言葉を言い放った。


「俺だって言ってんだろ!わかんねぇのかよ!―――兄貴!!」

「なにわけのわかんねぇこと言ってんだよ!!」


さらに攻撃を仕掛けようと、エルクが再び剣を構える。

だがその瞬間、怪物の周囲に稲光が走り、まるで防壁のように三人を弾き返した。


「聞いてくれ!!兄貴…!俺なんだ!!」


なおも叫ぶ怪物の声は、歪んだ咆哮となって洞窟にこだまする。


「もう一度撃つぞ!!」


ヴァンが銃口を上げたとき、フィールが声をあげた。


「待って!!」

「なにしてんだよフィール!今が攻め時―――」

「違う!!攻めるべきじゃない!」


フィールは叫びながら二人の前に立つ。


「こいつ、こっちに一度も攻撃してきてないんだよ!動きも…避けるばかりだ!明らかに、戦う気がない……!」


その言葉に、エルクは怪訝な表情を浮かべた。

目は険しく、言葉でない怒りを語っている。


「お前はあいつが怪物じゃないっていうのか!?人の言葉を喋ってるだけで信用すのかよ!」


しかし、エルクの声にも迷いが混じる。

そのとき、洞窟の上部に腰を下ろしていたロキが口を開いた。


「へぇ…おもしろいことを言うじゃないか」


ずっと傍観していたロキは、くつくつと楽しそうに笑いながら続ける。


「少なくとも、殺す前に話くらい聞いてもいいんじゃない?その『怪物』があんなに必死に何かを喋ってるんだからさ」


その言葉に、エルクがロキを睨みつける。


「なぁに、おもしろ半分だよ。でも―――あいつの声、似てない?ほら…キミの弟の…」

「!!」


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