蹴散らしてやんよ!
キュリアの装備は今まで使っていた不思議の国シリーズの改になっており、数値が上がっていた。
白兎Mk-ⅡもMk-Ⅲに変わっていた。
そして、姫にも半生パンは装備を作っていたのだ。
「えっと…猫ちゃんの名前はなんて言うんだ?猫じゃ悪いだろ?」
「こいつは姫って名前にしてるんだ。森猫姫だからね。最初からずっと姫って呼んでたから今更変えるのもあれかと思って」
「姫ちゃんな。それじゃ、姫ちゃんの専用装備を渡すな。これだ!」
ギンガムがテーブルに置いたのは4つのグリーブだった。
シウはこれを鑑定してみる。
防具 モンスター専用装備
四至の護り レア度6 耐久値450/450
VIT+45 AGI+50 HP+100 MP+100
専用スキル
【魔爪ブースト】
4つのグリーブの中央には色違いの宝石が埋め込まれている。これについてギンガムは説明をしてくれた。
「パンから伝言な。このグリーブは動物系の上位種が使うスキル【魔爪】を強化する為の装備だってさ」
さらに、魔爪は属性を持っておらず無属性なのだが、魔爪ブーストによりMPを消費する事により各属性を付与する事が出来るとの事。
「それならこれからは属性攻撃が出来るってことになるのか。良かったな姫!無属性だけじゃ無くなったぞ!」
(妾も活躍出来るのじゃぁぁ!!)
「魔爪はかなり強いからな?シウはそこんとこ知ってたのか?」
ユーキングがさりげなく俺に聞いてきたが俺は当然のように答えた。
「俺がそんなこと知るわけないだろ!てか魔爪ってそんなに強いの?なんで?」
「魔爪ってのは爪に魔力のコーティングをして相手を切り裂くんだけど、意外にも攻撃判定がどれでも行けるんだわ。爪で相手を切り裂けば斬、殴りつければ打、爪で突けば突。どのタイプでも行けるんだわ、そこに相手に不利な属性を付けたら2倍どころか3倍のダメージは期待できるんだな」
ユーキングは俺に細かく説明をして一応は納得した。
姫の防御力も上がり、更に攻撃方法まで増えたのである。
姫の足には既にグリーブが装着されており光り輝いていた。
初の装備に姫はその場で尻尾を振りながらクルクル回っていた。
「はぁぁぁぁ!!!可愛いわぁ…すごく喜んでるのがわかるわぁ…シウくんシウくん!姫ちゃんの写真も1枚だけ撮らさせて!!」
「駄猫にも装備が行き渡ったのです…裸族のままでよかったのです…ちっ…」
(妾は裸族では無いのじゃ!毛皮という鎧を着ていたのじゃぁぁぁ!!!)
「にゃんにゃん吠えてる姿も可愛いわぁ…この際だからキュリアちゃんと姫ちゃんのツーショットも1枚だけ!ね!!」
2人と1匹は普段通りの暴走ぷりを発揮していた。
この光景を俺、ユーキング、ギンガムはため息をつきながら見ていたのだ、
「とりあえず…お前はこれからどこに進んで行くんだ?」
ユーキングは俺に今後の事を聞いてきた。
「聞いた話なんだけど…この先に獣人だけの村があるみたいだから探してみよーかなーとか思ってたり。それ以外ならアインスドットの南を進んでみてもいいかなーとかも考えてんだよな。北はとりあえずハルファス鉱山までは行ったから次は南かなって」
ディーネとヴォルに聞いた獣人の村を当面の目的地にはしているのだが、まだフィノス湖までしか進んでいない南のエリアを進む事も俺の頭にはあったのだ。
「それならまずは南でも行ってみたらいいんじゃねーか?港町まではひたすら道を進んで行くだけだしすぐに行けるだろさ。獣人の村は俺もあるのは知ってるけど行ったことが無い…てか、見つけたとしても入れないみたいだし、まぁ聖都の先にある欲深き森の中にあるとは言われてるから掲示板で調べたらわかるかもな」
「ふむ…とりあえず戻ったら掲示板でも確認しておくわ」
「そうそう、それとお前に聞きたいんだけど…錬金のレベも上がってるよな?」
「ん?上がってるけども?それがどーしたんだ?」
「ならそろそろ転移石とか作れねーか?作れるようになったら買い取らせて欲しいんだよ」
「レシピがわかんねーからなんとも言えねーぞ?とりあえず師匠の所に顔出す予定だからダメ元で聞いてみるわ」
獣人の村には人やエルフなど、獣人以外は立ち入りが禁止されておりユーキングも入った事がなかったのだ。
ユーキングのクランメンバーにも獣人プレイヤーは勿論居るのだが、1人でも獣人以外の者が居たら村には入れてくれないとのこと。
そして、村近辺には結界も張られているためなかなか見つけられないらしい。
それに伴い簡単に行ける南を最初に行くのを勧めて来たユーキングだった。
転移石もユーキングは欲していた。聖都、王都にはダンジョンが存在しており、緊急事態の時に転移石があればすぐに戻る事が出来るため欲しがっていた。
店でも買えるのだがなかなかの金額でありメンバー達に全員に渡せない為シウに作れないか聞いてきたユーキングだった。
「ならまずはアインスドットに戻ってから南に行ってみますかね。師匠の所にも寄りたかったしちょうどいいかな。錬金の事も聞かなきゃだし、そうと決まれば即行動だぜぇぇぇ!!キュリア!姫!南にレッツゴーだぞぉぉぉ!!!」
「はいなのです!やっと暴れられるのです!」
(このちみっ子は戦闘狂なのじゃ…でもこの装備の性能をはやく試したいのじゃ!)
俺達はユーキング、ギンガム、アゲハにしっかりとお礼を言いクランハウスを後にした。
聖都の中央にあるポータルまで行きアインスドットを選択して、2つ先まで戻るため5万Gを支払い、一瞬で始まりの街 アインスドットまで戻ってきた。
戻ってすぐに向かったのは錬金の師匠の店であり工房の森の隠れ家にやってきた。
「師匠いますか〜可愛い弟子が戻ってきましたよ〜」
店に入ると師匠は店番をしておりすぐに会うことが出来た。
「可愛いかどうかは別にして…何日ぶりかね。無事で何よりじゃ、今日はまた工房に籠るのかの?」
師匠は俺に尋ねるが今回は師匠に聞くことがあり店に来たのである。
真面目な顔をして口を開いた。
「師匠に錬金について聞きたいことがあって今日は来たんだ。そろそろ本格的に錬金について教えて欲しいんです!」
「ほぉ…それなら工房で話を聞こうかね。ほらいくよ!」
師匠の後をついて行く俺達。
工房に入ると師匠は尋ねてきた。
「お前さんもそろそろ次の段階に行ってもいいと思っておったからの。それで?お前さんは錬金で何を望むのかの?金か?殺戮兵器か?それとも全てを望むか?」
「俺は別に何も望んちゃいないんだけどな…ただ単に自分で使えるアイテムを作るか知り合いに頼まれて作るぐらいしかしてないしなぁ…まぁ望むとしたら、俺たちの身の回りの安全だけかな」
「錬金術は貴重な物まで作れてしまう。それをお主が作ったとして、周りにその事が見つかってしまい寄越せと囲まれたらお主はどうする?」
俺は悩みながらも素直に自分なりの答えを出した。
「んー…誰か1人にあげるつもりもないし、てか誰にもあげないしね。そんな状況になればとりあえず蹴散らすかな。邪魔になるだけだし」
笑いながら師匠の問いかけに答えた。
「そうか…お前さんの心は穢れておらぬから大丈夫じゃろうな…それならコレを今度は作ってみるがいい」
師匠は1つの石を俺に向かって投げてきた。それをキャッチして鑑定してみると
転移石 レア度7
「これが転移石か…簡単に作れる物なの?」
「素材さえ集めれば直ぐに出来るぞよ。しかし…素材があつまれば、の話じゃがな」
転移石の素材を教えた師匠は、俺に声を掛け笑いながら店に戻っていく。
「どれも貴重な物じゃから流石のお前さんでも直ぐには見つからんじゃろ。気長に見つけるんじゃな!その転移石はお前さんにあげるから有効活用するんじゃぞ」
師匠が工房から出ていき、俺は聞いたことも無い素材を覚え忘れないようにしていた。
「どれも知らねー素材やん…しかもどこにあるんだよ…それぐらいのヒントをくれてもいいじゃないか…こうなりゃ…見たくないけど掲示板を見るしかないか…」
店に戻り、店番をしていたキュリアと姫と合流して店をあとにした。
時刻はそろそろ正午。一旦ログアウトをする為に宿屋に向かった。




