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第249話 神の教義/Dogma

 神殿の最奥にある玉座の間へと辿たどり着いたザガート……神殿の主である神ヤハヴェと対峙する。当初は紳士的な対応を見せた神であったが、図星を突かれると発狂し、揺るぎない殺意をき出しにして魔王に槍を投げ付ける。

 魔王は自身に向けて投げられた槍を一瞬で消し去ると、宣戦布告を行う。


 今ここに人類を創造した神と、異世界から召喚された魔王の戦いが勃発ぼっぱつする事となる。


「ヤハヴェよ。勇者アランは貴様に都合のいい、便利なごまとして扱われて命を落とした……人を人とも思わぬ非道な行い、万死にあたいする!!」


 ザガートが正面に右手をかざして相手の愚行を糾弾きゅうだんする。自分を始末するために異界の勇者を差し向けて、彼らの死を招く結果となった神の判断のあやまりを強い口調で非難する。


「勇者アラン……か」


 神が一瞬悩んだ素振りを見せた後、勇者の名を口にする。そう言えばそんなのもいたなぁ、と言いたげな態度を取っており、緊張感など欠片かけらも無い。彼の死を全く気にかけていない事は火を見るより明らかだ。


「思えば彼には気の毒な事をした……なにしろ彼が元いた第八世界を滅ぼしたのは、この私なのだから」


 勇者の故郷を滅ぼしたのは自分なのだと、ことの真相を打ち明ける。


「……!!」


 衝撃的な真実を伝えられた魔王が顔をこわばらせた。一瞬相手が何を言ったのか全く理解できず、思考を停止させたまま銅像のように固まる。


 勇者は滅びた世界を取り戻す為に魔王と戦った。魔王を倒したら世界を元に戻してもらう契約を神とわした。

 その世界を滅ぼした張本人が神自身なのだとしたら、マッチポンプも良い所だ。

 魔王は自身の動揺を誘うために神が嘘をついたんじゃないかと、そのようにすら考えた。


もっとも、私が直接手を下した訳では無い……第七世界からあふれ出た人間のの感情、それが生み出す膨大なエネルギーが、第八世界に深刻な悪影響を及ぼし、世界が崩壊するレベルの大災害を引き起こしてしまった……」


 神が世界を滅ぼした行為について弁明する。第八世界の崩壊は彼が意図したものでは無かった事、第七世界の人類を根絶やしにしようとした行いが、結果的に他の世界の滅亡を招いた事……それらの因果関係を詳細に語る。


「だがそれも仕方のない事だ。彼らは我が理想をかなえる為のとうとい犠牲になったのだ……彼らもきっと分かってくれるだろう」


 他の世界が滅びた事に責任を感じた素振りを見せながらも、最後は自分の計画の為に必要な犠牲だったのだと、開き直りとも取れる発言をした。


「………」


 神の話を聞き終えて、ザガートがしばし押し黙る。下を向いて重苦しい表情を浮かべたまま、苦悩するあまり言葉をまらせた。


 魔王は勇者に対して友情に近い感傷を抱いた。敵対こそしたが、彼の境遇にあわれみを感じた。彼を救えなかった自身の無力さに打ちのめされたりもした。

 それら全てが神のもたらした結果なのだと知らされた時、心臓がキューーッと締め付けられて、はらわたがグツグツと煮えくり返り、脳の血管が怒りで爆発寸前になる。


 しばらく無言のまま棒立ちになっていた魔王であったが……。


「神のがわにどんな叶えたい理想があったとしても……その為に犠牲になっていい命など、一つとしてあっていいはずがない」


 顔を上げて神の方を見ると、ゆっくりと口を開く。最初は聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で、だんだん声が大きくなっていき、やがてハッキリと聞き取れる声量になる。


「ヤハヴェ……貴様は今までたくさん人を殺しすぎた!! その罪、死をもっあがなってもらおう!!」


 最後は神が犯してきた罪の責任を取らせる意思を強い口調で叫ぶ。表情は殺気に満ちあふれており、神殿中に響かんばかりの大きな声で神の愚行を糾弾きゅうだんする。


「復讐するはわれにあり……人が神を裁けぬのなら、魔王オレが裁きを下す!!」

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