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第179話 十二星座の宝玉の使い道

 ドラゴン討伐を終えたザガート達一行はソドムの村へと帰還し、村長に事の一部始終を伝える。山に平和が戻ったと知るや村長は大いに喜び、一行が村にいる間の宿代をタダにする方針が決まる。それは何の対価も受け取らずに魔物を倒してくれた魔王に対する、村長のせめてもの報酬だった。


 ザガート達は宿の一室に集まり、これからどうすべきか話し合う。宝玉は十二個揃ったが、肝心の使い道が分からない。使用方法が分からなければ、何の価値もないただの石ころなのだ。


 床に十二個並べられた宝玉を、ザガートがあごに手を当てて眉間みけんしわを寄せたままじーーっと眺める。魔力による解析を行っても、使用方法は突き止められない。

 このままではらちが明かないと考え、宝玉の一つに指で触れた瞬間……。


「……ムッ!!」


 頭の中に映像が流れ込む。過去の勇者が宝玉をどのように使ったか、その鮮明な記憶がインプットされる。


「……宝玉の使い方が今分かったぞ! みんな、今日はゆっくり休んで体力を回復し、明日の戦いに備えて英気を養え! 明日の昼十二時、村の中央にある広場に集合だ!!」


 ザガートはすぐさま立ち上がると今後の方針を伝える。宝玉の使用方法を突き止めた事をみなに教えて、最終決戦に備えて休息するよう命じる。

 魔王の命令に従い、皆はその晩宿に泊まって旅の疲れをいやすのだった。


  ◇    ◇    ◇


 翌日……太陽が空に昇ったぽかぽか陽気の昼下がり。


 村の中央にある広場に一行が集まる。地面には何らかの魔術的な儀式を行おうとするように、十二個の宝玉が円を描くように配置されていた。

 魔王が何かするらしいウワサを聞き付けて、彼らの周囲に村人達が見物に来ていたが、魔王は「危険だから離れてなさい」と村人に距離を置くよう命じる。


「それで魔王よ、これからどうするのじゃ?」


 鬼姫が今後の方針について問いかける。魔王は使い道が分かったと言ったが、仲間達への具体的な説明は行っていない。彼女達からすれば、効果の分からない石ころを地面に並べられてもチンプンカンプンだ。


「……すぐに分かる」


 ザガートは心配ないと言いたげに言葉を返すと、ズカズカと歩いていって地面に並べた宝玉の前に立つ。


「神よりたまわりし十二の宝玉……我をるべき場所へ導きたまえ!!」


 天を仰ぐように両腕を左右に広げると、呪文の詠唱のような言葉を叫ぶ。

 魔王の呼びかけに反応したのか、宝玉達がまばゆい光を放つ。とても肉眼で直視できないほど強い光が周囲を覆った瞬間、ザガート達の姿がテレポートしたようにフッと消えた。

 宝玉も一緒に飛んだのか、一行がいた場所には何も残っていない。ただの地面があるだけだ。


「き……消えた……」


 彼らが一瞬で消えた光景を見て、広場に見物に来ていた村人達はしばし呆気あっけに取られていた。


  ◇    ◇    ◇


 西大陸の最果てにある辺境の地……切り立った岩山にかこまれていて徒歩での侵入が不可能な秘境に、大きな神殿が建っていた。人が立ち入れない場所にあったが、ボロボロにちた様子は無い、立派な建築物だ。


 神殿の入口近くにある地面が眩く光ると、宝玉の力で転送された六人が姿を現す。一緒に飛ばされた宝玉が役目を終えたように光を失って地面に転がる。


「ここは……私達は何処に飛ばされたんだ?」


 レジーナが周囲を見回しながら魔王に問いかけた。自分達の身に起こった状況をすぐには把握できず、男に聞かずにいられない。


「俺も全部知っている訳じゃないが……俺達は宝玉に導かれてここへやって来た。つまり今俺達の前にあるこの神殿……これこそが大魔王の城へと通じる手がかりに違いない」


 ザガートが神殿の入口を指差しながら王女の問いに答える。十二の宝玉は神殿にワープするための手段であり、神殿の中に敵の城に行く手がかりがあるのだと推測を交えて語る。

 さすがにこの神殿が大魔王の城という訳では無さそうだ。


「そうと決まれば、早速さっそく中に入りましょう」


 ルシルが神殿に足を踏み入れるよう提案する。皆が彼女の言葉に従い、ズカズカと神殿の入口へと入っていく。


  ◇    ◇    ◇


 神殿内部の通路をぞろぞろと進む六人……歩きながら周囲をキョロキョロ見回す。

 建物内に人の気配は無く、シーーンと静まり返る。一行が床を歩く音だけがカツカツと鳴る。魔物が襲ってくる気配は微塵も感じられない。


 神殿は古代ギリシャの建築物のような古い建物だが、全く経年劣化しておらず、完成した直後のようなれいさを保つ。床はツルツルに磨かれており、汚れは一切見当たらない。神聖な力で守られていて、風化を防いでいたのだろうか。


 神殿の中をただ黙々と歩き続けた六人は、大広間と思しき開けた空間へと出る。

 大聖堂のような部屋、その天まで届かんばかりの高い天井を見上げた瞬間……。


「よくぞここまで辿り着きましたね……貴方達が来るのを待っていました」


 何者かが一行に呼びかける声が聞こえた。人間の高貴な女性のようなんだ声色だ。


 直後、天井から巨大な何かが降りてくるのが見えた。風に乗るようにフワッとゆっくり落下していたが、それでも床に着地した時にはドスゥゥーーーンッと大きな音が鳴る。


 一行の前に降り立ったのは、古代の恐竜ティラノサウルスより大きな孔雀クジャクだ。外見はオスだが、先ほどの声から察するに女性のようだ。羽はたたんでいる。

 優雅で美しい見た目をした鳥は、魔王達をただじっと眺める。敵意のようなものは感じられない。人語を解する辺り、高い知能を持っている事をうかがわせた。


「……アンタが、俺達を大魔王の城へと導いてくれるのか?」


 美しい鳥を前にしてザガートが口を開く。この大きな孔雀が何らかの使命を帯びているに違いないと考えて、聞いて確かめようとする。

 魔王の問いに孔雀がコクンとうなずいて言葉を発する。


如何いかにも……私は神より遣わされし者、神鳥ガルーダ!!」


  ◇    ◇    ◇


 一方その頃、大魔王の城……その最奥にある玉座の間。

 アザトホースが瞑想するように目を閉じたまま黙り込んでいると、何者かがドカドカと早足で走ってくる音が聞こえた。


「大魔王様ッ! たった今、魔王軍十二将が全滅したと部下から報告がありました! ヤツらはもうすぐここに攻めてきます! 何卒なにとぞ敵を迎え撃つ具体策についてご指示を!!」


 城の警備隊長オークロードが鉄製の大扉を開けて、慌てて部屋へと駆け込んでくる。大魔王の前まで来てひざをつくと、今後の作戦について指示をあおぐ。


「フフフッ……何ヲソンナニ慌テテイルノダ。オークロードヨ……」


 かなり焦っている様子の豚頭をあざ笑うように、何者かが声を掛けた。

 その言葉は正面にいるアザトホースから放たれたものではない。オークの真横にある空間から放たれた。


「ああっ! 貴方……いえ、貴方がたはッ!!」


 声が聞こえた方角を振り向いたオークが、目ん玉が飛び出んばかりに驚く。とても信じられないものを見たと言わんばかりに血相を変えてうろたえる。


 そこにいた四体の魔物にオークロードは見覚えがあった。それもそのはず……。


「デス・スライム……グレーターデビル、ギルボロス……魔女ワルプルギス……アビスウォーム。我ラ四将軍、大魔王様ノチカラニヨリ、ココニ復活セリッ!!」


 黒い大きなスライムが、人型の上半身を出しながら大きな声で叫ぶ。

 ……オークロードの前に立っていたのは、いずれもかつてザガートに倒された魔王軍の幹部に他ならない。

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