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第144話 激突! 最強の騎士 vs 最強の魔王!!

 謁見の間に足を踏み入れた魔王一行はついに不死騎王ブレイズと対面する。宝玉の所在を問うと、彼が所持していた宝玉をこころよく渡してくれる。

 苦もなく八つめの宝玉を手にしたザガートだったが、それだけで収まりはしない。不死騎王を仲間に加えたい欲求がムクムクと湧き上がり、決闘の提案を持ちかける。

 不死騎王は決闘の申し出を受諾し、両者の戦いは避けられない状況となる。


「ふん……この程度の男、魔王がいちいち勝負するまでもなかろう。ブレイズとやら、不死アンデッドの王と呼ばれておるらしいが、この東の妖怪の王たるわらわが相手してやろう」


 鬼姫が喧嘩けんかを売る言葉を吐きながら前に一歩踏み出そうとした。自分もそれなりの大物である自負じふがあり、不死者の王を前にして対抗意識が芽生えたようだ。


「よせ鬼姫ッ! 俺の見立てが正しければ、そいつの強さはギルボロスを上回る。お前が戦いを挑めばなます斬りにされてしまうぞ。お前は決して弱くないが、今回ばかりは相手が悪すぎる」


 魔王が右手をサッと横に振って、前に出ようとした鬼姫を慌てて止める。かつて戦った魔神の名を引き合いに出して、無茶な戦いを挑もうとする女を制止する。最後に彼女が弱い訳ではないとフォローを付け加えた。


「む……むう。お主がそう言うなら、そうなんじゃろう。いささか不本意ではあるが、なます斬りにされるのは嫌じゃ。仕方あるまい、ここはお主を信じて任せるとしよう」


 魔王の言葉を聞いて鬼姫が大人しく引き下がる。納得が行かない心情はあったものの、魔王の考えが正しい事は理解しており、やむなく忠告に従う。不満げに顔をむくれさせながらも男に全て任せる。


(フム……相手の実力を推しはかり、仲間に危険な戦いをさせぬのも、一流の王たる証か)


 二人のやり取りを眺めていて、ブレイズは戦いが始まる前から魔王に一目いちもく置く。相手の強さを瞬時に見抜いて、仲間を気遣う態度を見せた事に深く感心する。


『では魔王よ……邪魔が入ったが、改めて戦いを始めさせてもらうぞ』


 仕切り直すように宣戦布告を行い、戦闘開始を告げる。

 さやから刀を引き抜くと、鞘を床に放り投げる。


『最強の妖刀ムラマサの切れ味に何処まで耐えられるか、確かめさせてもらおう』


 一振りの刀を両手で握って構えると、刀の切れ味に絶対の自信を抱く。

 世界に三振りあると伝えられた妖刀、その最後の一振りの所在がここに明らかとなる。


 不死騎王と魔王、両者は数メートル離れたまま対峙する。ブレイズは刀を構えたまま、ザガートは棒立ちになりながら、相手をじっと見る。女達は戦いに巻き込まれぬよう離れた場所で待機する。


 両者は相手の出方をうかがうように制止する。そのまま数秒が経過したが……。


「ウオオオオオオッ!」

『ヌォォォォオオオオオオーーーーーーッ!!』


 二人がほぼ同じタイミングで叫びながら、前方に向かってダッシュする。次の瞬間両者は黒い影のような物体になり、残像を残しながら高速移動する。正面からドガッドガッと何度もぶつかり合って後方に弾かれたり、Xエックス字に交差して斬り合ったりしたが、それにも飽きるとF1レースのように並走しながら部屋中を駆け回る。しばらくすると走るのをやめて、再び激突が始まる。


「な、なんてスピードだッ! 力はほぼ互角かッ!!」


 とても目で追えない速さにレジーナが驚愕する。


「いや……互角ではない。ブレイズは全力で走っておるが、魔王はまだ本気を出しておらぬ。つまり魔王の方が実力は上という事じゃ」


 鬼姫が王女の言葉を否定する。彼女だけは二人の戦いを目で追えており、彼らがどれだけ力を出したかも見抜いたようだ。


 スピード勝負は数分ほど続いたが、このままではらちが明かないと踏んだのか、両者は部屋の中央でピタッと止まる。再び一定の間合いを保ったままにらみ合う。

 ザガートは何事も無かったように平然としていたが、ブレイズは焦りがあったようにかすかに息が上がる。


(何という事だ……まさか本気を出したそれがしが引き離せぬとは。いや、引き離せないという次元の話ではない。わざと手を抜かれて……遊ばれているッ!!)


 ブレイズが相手の実力に驚愕する。はたから見ると互角の攻防を繰り広げたように見えても、当人同士の間では力の差があった事を瞬時に悟った。

 吸血鬼王バンパイア・ロードを一瞬で仕留めた自分が速さにおいて遅れを取った事実に深く動揺する。


(正直、相手の強さを見くびっていた……これは持てる力の全てを出して挑まねばなるまい)


 魔王の強さが想定をはるかに上回った事を素直に認める。ほんの肩慣らし程度に付き合ってやるかと安直に考えていた姿勢を悔い改めて、格上の相手に挑む不退転の決意へと切り替える。


 刀を両手で握ったままジリジリとにじり寄るように進んだが、突然フッとワープしたように姿が消える。

 次の瞬間ザガートの背後に刀を持ったブレイズが姿を現す。目に見えない速さで移動した訳ではなく、本当にテレポートしたようだ。


『その首、もらい受けるッ!!』


 死を宣告する言葉を発すると、刀を横ぎに振って相手の首を落とそうとした。


 自分の首めがけて振られた刃を、ザガートが後ろを振り返らないままその場でしゃがんで避ける。相手が一瞬で背後に回り込んでも驚く素振りを見せず、冷静に対応する。


「フンッ!」


 かつを入れるように鼻息を吹かすと、振り向きざまにブレイズの腹に正拳突きを叩き込む。


『ヌォォォォォォオオオオオオオオーーーーーーッッ!!』


 腹に強烈な一撃を食らった黒騎士が大声で叫びながら豪快に吹き飛ぶ。強い衝撃で地面に叩き付けられて横向きにゴロゴロ転がる。しばらく大の字に横たわる。

 攻撃を食らって吹っ飛んでも、刀は右手にしっかりと握られたままだ。その事は見事と言うべきか。


「ブレイズ……お前は確かに強い。俺がこっちの世界に来て、今まで戦ってきた中ではお前が一番だろう」


 地べたに倒れたまま起き上がらない黒騎士をザガートが遠巻きに眺める。相手の実力を高いと感じた事を素直に認める。


「だがそれだけの力があっても、俺にはまだ届かんッ!!」

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