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第43話 ラブホ探検


《有間愁斗―視点》


 土下座した俺に彼女は言う。


「まだ許してません!」


 だよな……。最も彼女を信じなきゃいけない立場の俺が疑って、しかも心配して怒ってくれたのに罵声を浴びせた……謝罪くらいじゃ償いきれない。


「誤解を解きに広島まで来てくれたの?」


 顔を上げた俺が尋ねると彼女は拗ねた顔でそっぽを向いた。


「有間さんにバカ女って言われたのが納得できなくて来たんです!」

「うっ……俺がバカだった。あの時は紫陽花が浮気したと勘違いしてたから……。本当にごめん」

「私が浮気するわけないじゃないですか……」

「そうだよな……でも本当に良かったよ。浮気してないってわかって、今凄く嬉しくてヤバい。会いに来てくれてありがとう」


 申し訳ない気持ちはありつつも紫陽花が浮気していなかったことが嬉しくて、この場で飛び上がって「よっしゃー!ひゃほーい!」と叫びたいくらい喜んでいる自分がいた。


「ぷっふふふ。有間さんが喜んでくれたなら私も良かったです。それで……今夜、私はどうしたらいいと思いますか?」


 もうすぐ10時になる。帰りの電車はないからこっちに泊まってもらう他ない。

 俺が泊まっているビジホの空き部屋か……。


「俺のビジホはシングルで同じ部屋に泊まれないから……ラ、ラブホ行く?」

「ラ、ラブッ……べ、別にいいですよ。ビジネスホテルに帰らなくて大丈夫なんですか?」

「大丈夫だけど着替えだけ取りに行くよ。じゃぁ遅くなっちゃうから行こうか?」

「そうですね。あっ、ホテルは安いところでいいですよ…お金勿体ないので」





 ネットで調べたがこの辺りはラブホが少なく駅周辺に2件しかなかった。

 一方は価格が高くHPは綺麗で、しかしオンラインで確認すると満室になっている。もう一方はかなり安くてHPが怪しい。建物も古い洋館。空室状況はネットではわからない。

 俺は紫陽花にスマホを見せて。


「ここしかなさそうなんだけど、大丈夫かな?」

「お化け屋敷みたいですね……」

「そうだね……ビジホのシングルにする?」

「それだと有間さんと別部屋ですよね?」

「まぁ……そうだね」

「じゃあ、ここにします」


 シングルに二人泊まるのは禁止されている。深夜に勝手に移動しても怒られなさそうだけど、今のご時世防犯カメラがあるから止めといた方がいいだろう。会社の名前で泊まっるしな……。


 10分くらい歩いてラブホ?に到着した。中に入るとザ・中世のお屋敷みたいな吹き抜けの広いフロントホールで二階に上がる階段もある。カウンターに部屋の画像が映ったパネルが並んでいて料金が書いてあった。宿泊で3900円~4500円とかなり安い。


「紫陽花はどれがいい?」

「……有間さんにお任せします」

「うーん、ここでいい?」

「……うん」


 ベッドや風呂、テレビの写真がパネルに映っていて、念のため一番高くて、広そうな部屋を選んだ。

 パネルにはボタンが付いる。これを押せばいいのかな?初めてラブホに来たから勝手がわからん。


 取り敢えず押してみるとパネルの照明が消えた。

 そして無人だと思っていたのに……。


「こっちじゃけぇ~」


 老婆の声が聞こえる。

 声の方を見ると板で閉じられたカウンターに小さな穴が空いていて、部屋番号のフォルダーが付いた鍵を握った手がその穴から出ている。俺はそれを受け取った。


「ありがとうね」

「お世話になります」


 207号室か……。


 フロントホールの階段を上っていると紫陽花が。


「異世界転生のアニメに出てきそうな建物ですね」

「確かに……ファンタジーだな」

「ふふっ、冒険者になった気分です」

「冒険者になるなら職業は何がいいの?」

「やっぱり1000年以上生きた銀髪エルフの魔法使いですかね。魔力を抑えて、魔族を欺いて騙し討ちするんですよ」

「ははは、卑怯だね」

「それがいいんです」


 そんな話をしていると部屋の前に着いた。

 鍵を差し込み扉を開けると中は綺麗で広い。二人で入口から中を見回して。


「なにがあるか見てみようか?」

「はい」


 紫陽花はにっこり笑う。思ったより良い部屋で安心したのかも。


「ベット広いですね~。いつも私のベットだったからのんびり寝れそうですね」

「一緒に住むようなことがあったらこういうベットが欲しいよな」

「有間さんって天然でグイグイ来ますよね。あっ、ゴ、ゴムが置いてある……」


 君も大概人のことは言えないと思うよ……、ゴムなんて言われたら意識してしまう。


「お風呂も広いですよー!」

「お湯入れちゃおうか」


 俺は浴室に入って蛇口を捻った。


「あとは……」


 紫陽花は謎の自販機を覗き込んでいた。


「おーい、はっこん?わぁ!こ、これ……アレ、ですね……」


 俺もチラっと見たらピンクローターとかバイブが売っていた。確かに……アレですな。

 一通り見終わって俺は紫陽花に声を掛ける。


「先にお風呂入っちゃいなよ」

「わかりました」


 紫陽花が脱衣所に入って、少し経つとバスタオル巻いた彼女が脱衣所から出てきた。


「有間さん……」

「ど、どうしたの?」


 こ、これ、タオルの下は裸だよな?






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