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振り向いたら座敷わらし  作者: 日野あべし
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【第十五話】

帰路に就く。今日は残業も短く済み、帰りが遅い時に比べればだいぶ早く帰れそうだ。

ちょっと前の私であれば、夕飯は外食か近所のスーパーの割引シールのついたお弁当を買って帰っていたが、今の私は今晩の献立を考えていた。

(煮物…は作る時間がないか。焼き魚は昨日食べたし…)

そんなことを考えながら帰るようになったのは、家族…と言えるかはわからないが、同居人が出来たためだ。

そう、何故か私についてきた座敷童、福ちゃんである。

さらに言えば隣室のやたらと私に求婚を迫ってくる夏樹さんも食事を共にしている。

福ちゃんと生活をするようになってから、生活が福ちゃんを中心に回るようになってきた。

私はまだ未婚だが、子供がいる生活を結婚をすっ飛ばして体験しているようだ。

その生活は大変と言えば大変だが、それ以上に私の生活に充実感を与えてくれている。

(そうだ、今晩は野菜炒めにしよう。)

帰った時家に福ちゃんや夏樹さんがいることを頭に思い浮かべながら、私は帰路を急ぐのであった。


スーパーで買い物を済まして古いアパートの前に着き、私は我が家であるアパートの二階にある一室を見上げる。部屋の窓からは光が漏れており、福ちゃん達がいるのがわかる。

帰ってくる時に部屋の明かりがついているのが、こんなにも自分を安心させてくれるのだと最近気づいた。

私はアパートの階段を一歩一歩上がっていく、だんだん部屋の福ちゃんと夏樹さんの声に近づいているのがわかる。

部屋の前に着き、中から福ちゃんと夏樹さんの声がする。私は二人の顔をイメージしながら、ドアを開けようとした。

「修介おかえりーーーーーー!」

その声とともに思い切り開け放たれたドアが私の顔面を直撃し、私はしばらくその場から動けなかった。

「おい、どうした修介。」

「…夏樹さん。ドアの前に人がいるんですからそんな開け方をしたら危ないと思いますが…?」

私はしゃがみこんで痛む顔面を手で覆いながら返答する。

「お、おう。すまんな…。」

大の大人がしゃがみこんで痛がっているのをみて、さすがの夏樹さんも少し申し訳なさそうにしている。

「しゅうすけ、大丈夫?」

夏樹さんの後ろから福ちゃんがひょこっと出てきて私のそばに駆け寄ってくれた。

「あ、あぁ。大丈夫だよ福ちゃん。」

「しゅすけ、おかえり。」

「ただいま、福ちゃん。」

そうして私は痛みと充実感とともに我が家に帰ってきた。


「しかしこの生活にもだいぶ慣れてきましたね。」

「うむ!これで修介といつ結婚しても大丈夫だな!」

「やっぱり、なつきとしゅうすけは結婚するの?」

「…福ちゃん。結婚っていうものはそんな簡単なものではないんだよ?」

そんないつものやり取りをしながら夕食を囲んでいる。

夏樹さんは相変わらずガツガツ食べていて、片や福ちゃんは大家さんから食事の食べ方を色々教わったので綺麗に食べている。

「しかし修介、福には私や修介や春江さん、他にも本屋のご主人や喫茶店のマスターとか友達は色々いるが、同年代の友達が一人ぐらい居てもいいんじゃないか?」

「う~ん。それは確かにそうかもしれませんね。」

言われてみればそれも一理ある気がした。

友人に年齢は関係ないとは思うが、同じぐらいの年齢の感覚をした友人が一人ぐらい居てもいいかもしれない。

「福ちゃんは福ちゃんくらいの年のお友達欲しい?」

「同じくらいのお友達…よくわからない。だけどお友達は欲しい。」

「そっかぁ…。」

だが問題が一つある。

福ちゃんは座敷童である。その座敷童である福ちゃんをまず認識できるかどうかによるのだ。

幸いここら近辺で視える人は何人かいるようであるが、

「あの…この子が視えていますか?」

と誰もいない空間を示すような真似は、視えない人からすれば狂気の沙汰である。

「ふ~ん、どうしますかね。」

「公園に行ってみよう!」

「へ?」

私は一瞬目が点になってしまった。

夏樹さんは立ち上がって拳を振り上げた。

「今ここで考えていてもしょうがない!幸い明日は休日だ!公園に行けば誰かしら視える子がいるだろう!あとは何とかなる!」

がっはっはと夏樹さんが豪快に笑う。

「公園、楽しみ!」

福ちゃんが夏樹さんを見て目をキラキラさせている。

私は小さなため息をはぁとつく。

「そうですね。まずは行ってみましょう。」

そうして福ちゃん公園で友達探し大作戦が決まったのであった。


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