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プロローグ
遙かな昔、その惑星には私達と同じ人類が暮らしていた。神は彼等に無限の恩寵と知性とを与え、彼等は神から与えられた知性により高度な文明を築き上げ、発展させていった。
だが、文明が発展していくに連れて彼等は神を忘れ傲慢になり、果ては己の主義主張や利権を巡って戦争を繰り返すようになった。
神は人類を滅ぼすことを決意した。
人類を罰するため、神は一匹の獣を創り出した。《バベル》と名付けられたこの獣は七つの頭と七つの尾を持ち、神から無限にも等しい力を与えられた。そして彼は地上に降り立ち、国という国、都市という都市を次々と破壊していった。
こうして、文明は神の怒りの前に滅び去るかのように見えた。
しかし、そこにひとりの少女が現れた。
今ではもう、その少女の名を憶えている者は誰もいない。ただその少女のことを知らない者も誰ひとりいない。
すべて、今となっては遙か昔のこと。
それでも彼女は確かに世界を救った。
感謝と尊敬、そして愛を込めて、今を生きる者達は彼女をこう呼ぶ。
“母”と。