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妄想の帝国

妄想の帝国 その69 英雄の作り方

作者: 天城冴

大衆の前で刺された要人、駆け寄った警備員は…


この小説はフィクションです。実在の人物、団体とは関係ありません。

7月初旬の選挙終盤。とある地方都市での街頭演説に元首相の応援演説が終わり、候補者たちと支援者に握手をしようとした途端、一人の男が近づき

ブスっ

「さ、刺されたー!も、元首相が刺されたー」

「は、犯人を取り押さえろ!」

「け、警備は」

驚く聴衆に、犯人を取り押さえようとする人、救急車を呼ぼうとする人。

そのなかで警備らしき一人が元首相に駆け寄った。

「大丈夫ですか」

「あ、ああ…い、痛い。血、血が」

「…刺さってはいますが、致命傷ではないようですね」

「そ、そうだが…い、」

ブス、ブス

「え?」

信じられないという顔で警備のほうをみる元首相。

一か所だった、傷が増えている。

しかも、前より深く刺さり、内臓にまで達していた・

「あ、あが、…な、何を…」

“やれやれやはり素人ではダメでしたか。暗殺計画を見過ごすぐらいでは成功しないって本当でしたね。だから、私が保険になったわけですけど”

抱き起こすフリをして元首相の体をほかの人にみえないよう、かつ、さりげなくほかの人間たちを近づかせないようにする警備員。その様子はまるで、助けるというより、。

「わ、私を…こ、殺す気…か。い…一体…なぜ」

声を振り絞る元首相。

“ああ、まだ声がだせるんですか。やはり、ジエータイの訓練を受けたとはいえ、単独素人の暗殺計画などうまくいきませんね。まあ、暗殺計画の実行を見逃して、入院してもらうってのでは不十分だそうで。皆さんが保険をかけたのも無理はないですね”

「ほ…保…険」

“元首相には残念ながら息絶えていただかないと困るんですよ。今の情勢では選挙で勝ったとしても安心はできませんからねえ。数々の愚行や誤魔化しなどの追及は一向に緩まないし、オトモダチの性犯罪をかばおうとしたのも暴かれるし、いろいろとねえ”

「ま…さ…か、あ、あ…いつ」

“現首相以下皆さん、困ってるんですよ。病気で首相を降りたことになってるのに、いまだ影響力をもちたがり、現首相と遊説回数を張り合うし。だいたい、今の通貨安をはじめ介在の大失敗、特にロシアなんぞへの支援などで大金をドブに捨てただけでなく、財界にも大損失を与えましたからね。インフレも何もかも現首相が尻ぬぐいをさせられてると内心お怒りだそうで”

「あ…あいつら…だって」

“ああ、確かに同じ穴のムジナですね。貴方を止めずに便乗した甘いするを吸った方々も与党銀の中には多くいますしね。そんな方々に票を入れ続けたほうもバカですよね、私もね。こういう組織では上の方からの圧力がかかるとはいえねえ。他の党に入れといて、しらん顔してれば、給与も、退職金も年金も大幅減額されず、家族と引き離されず、こんなこともしなくてすんだかもしれませんね”

「な…く、くび」

“ああ、警備失敗で責任とらされてクビですよね。でもねえ、きっちり死んだことまで確認、いや犯人がしくじったらフォローするなら…って、別の申し出がありましてね。退職して。しばらくしたら、外国に行って暮らすのに十分な金が手に入るんですよ。通貨安とはいえ東南アジアの某国ならまだ商売ぐらい始められそうですよ、貴方のお仲間のひどいSNS発言のせいでこの国にいづらくなった家族とも一緒にくらせるようになりますしねえ”

「あ…グハ」

“大丈夫ですよ、安心してください。貴方がここで死ねば、悲願の憲法改正とかできますよ。同情票もあるし、貴方の失策、なんたらマスクも領土をロシアにあげちゃったことも、数かすの虚偽発言も全部なかったことにしてくれますよ、死んだら。すべてマスコミが死んだ人間にむち打ちなとかで持ち上げてくれます。それに貴方が惨めに逮捕されたら、貴方を持ち上げてた太鼓持ち連中たちはもうどん底でしょうよ。それより、ここで亡くなってくれたほうが、お悔やみツィートだのなんだので、自分がまだ這い上がれると思ってるらしいですし。まあ、貴方が贔屓にしてた議員たちはまた別でしょうけどね”

「し…死に…」

“人間だれしも死にますよ。それに死ねば生前の罪をチャラにしてもらって祭り上げてもらえるんですよ、この国では。歴史に名を遺す人間になりたいとかいってたじゃないですか。民主主義を破壊する暴力の犠牲になった元首相、それを悼んだ人々が彼の意志をつぎ、改憲を成し遂げるというわけですよ。ここで死ねば英雄になれるんです、貴方が願っていたヒーローにね”

「あ…」

“やっと、死にましたか。長々をしゃべってしまった。やっぱり、私もこの人がきらいだったのかな、納得して死んでもらいたかったから好きだったのか”

警備員は元首相を抱きかかえながら

「きゅ、救急車はまだですか、い、意識がー」

と。元首相の悲劇の死を演出すべく、叫び始めた。


どこぞの国で元トップが亡くなったそうです。お悔やみ申し上げます。しかし、なんというか、真っ当に批判してきた人の方が彼の安全を危惧し、注意しており、マトモにお悔やみしてるのに、ヨイショのユウシキシャモドキとかがここぞとばかりに、それにかこつけて自己顕示欲丸出しの言動をしているのが、さらに哀れに感じますなあ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 極めて不快です。 >この小説はフィクションです。実在の人物、団体とは関係ありません。 こう書いてさえいれば、どれほど現実に似せようと許されるとでもお思いですか? 誰がどう見てもあの…
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