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1:予知夢で知りました。

 わたくし、とある王国の第一王女という身分にあるシアノと申します。この世界では神様がおられまして、どんな人にもギフトという祝福を与えて下さいます。ギフトというのは、神様が生まれた人間全てに与える不思議な力ですが、万能では有りません。使うに辺り制限がございます。簡単に言えば使用出来る範囲って事ですね。また、使い方次第では凶器になるものも有りますので、使う者の心根次第では、神様から取り上げられてしまいます。


 簡単に言えば、ギフトを使って他人様の物を盗む、とか、人の命を奪う、とか、他人を貶めて成り上がる、とか、不正な手段でお金を手にした人、とか。そういった者には即座に神様が罰としてギフトを取り上げ、同時にギフトを取り上げた事を周囲に知らしめるように全身が光ります。ええ、夜でも昼のような明るさで全身が光るので、その人がギフトを取り上げられる程の悪人だと解ります。


 でも。悪人だからといって死なせるわけにはいきません。いえ、違いますね。悪人だからこそ、生きて罪を償わせるのです。それが神様の思し召しで悪人が見つかり次第、強制労働所へ連れて行き、その罪に応じて働かせるのです。悪人になる、というのは悪人だけでは成り立ちません。その被害に遭われた方がいらっしゃるのです。その被害者の方達への罪の償いとして、悪人が働いた分のお給金を被害者の方達に支払う。


 それが神様の望む罪の償い方なのです。ずっとずっとこの世界はそのように成り立って来ました。常日頃より正しい考えと正しい言動を取るのは難しいですし、そのようになれ、と神様は仰っているわけでは有りません。多少の悪事は見逃されています。一定を超えたら神の罰が降るのです。その線引きは難しいので、酒の飲み過ぎとか、多少の賭け事とか。そういった部分は見逃される要素みたいですね。


 さて。そんな世界で、わたくしが神様から頂きましたギフトは【予知夢】です。当然わたくしの予知夢にも制限が有りますが、予知夢が外れた事はありません。但し、後から振り返ればあの夢はコレだったのか……という些細な物から、とても鮮明で細かな事まで夢に見て、その夢から現実に対策を取って未然に防げたもの、或いは未然に防ぐ事も出来ずに夢通りに起こってしまって後悔したもの。様々ですが、外れた事はありません。


 未然に防げた物は外れたという考え方も出来ますが、その夢通りに起こるから、未然に防げたわけで、そういった意味では外れたとも言えない。だからわたくしの中では外れたとは考えておりません。そんなわたくしの予知夢は、国王陛下であらせられるお父様にきちんと報告致します。その夢を見たその日のうちに予知夢通りになるのか、はたまた1年以上も先になってから予知夢通りの出来事か起こるのか。それは凡人たるわたくしには解りかねます。


 ですので、見た夢を全てお父様に報告し、夢から推測される出来事に備えるやり方で、我が国は幾度となく危難をやり過ごしております。例えば、10歳に見た予知夢では、豪雨により家が流されたり畑が沈没したり……という国民の生活に対策を取りました。15歳で予知夢で見た通りの現実が起こりかけました。家を流された国民は居たものの、畑が沈没しないように水路を作って水を逃がす対策をしたので、畑は無事でした。


 こういった形でわたくしの予知夢はお父様と国のために役立っている、と自負しております。そのわたくしが今朝見ていた夢が、自身の結婚に関するものでした。

 あらまぁとしか言えません。だってわたくし、今年18歳では有りますが、結婚する気なんてなかったのですもの。


 他国では男子のみに王位継承権が与えられる、とか。男女問わず第一子が王位を継ぐ、とか。そんな法がございますが。我が国は【国王の座に最も相応しい者】に王位が与えられます。……基準がさっぱりなのですが、ずっとそういう方針なのです。ですので、男女問わず王族は皆に王位継承権が有りますので、わたくしも王位継承権を所有する者として生きています。国内ならともかく、わたくしが今朝見た予知夢は、他国の国王陛下の妻……つまり、王妃、でした。


 正直、王妃に興味も有りませんし、結婚にも興味がありません。万が一国王の位を戴く事になりましたら、義務として結婚する必要が有りますが……。わたくし、国王の位に興味が有りますけど、予知夢のおかげで14歳からずっと国政に関わって来ておりましたので、少々疲れたのです。まぁお父様もお疲れでしょうけれども。ですので、国王よりも今はお休みが欲しいのですわ。となれば、当然、他国の国王陛下の妻……王妃になったら休めないですわよね……。


 だから夢を見ながら、休む事は諦めておりました。


 ところがです。

 その夢を見続けていますと、わたくし、その国王陛下のお飾りの王妃になるようなのです。お飾り。王妃としての公務や執務をしなくていい。白い結婚なので子を産む必要もない。彼の国は何年か前に起きた災害の立て直しで懐が寒いご様子。我が国からの支援金を頼りにわたくしとの結婚を所望している。典型的な政略結婚。

 しかも、国王陛下には既に正妃なのか側妃なのか愛妾なのかは存じ上げませんが、愛する方がいらっしゃるので、我が国からの支援金の返済目処が付き次第、わたくしを子が出来ない者として離縁をする。


 これは、なかなかに好条件ではないでしょうか⁉︎


 わたくし、結婚に興味がないので、現在も数多ある結婚申し込みをのらりくらりと交わしております。国内外からですが、我が国大好きなわたくしは、国外へ行く気は毛頭有りません。国王の位に着くか、臣下に降り領地をもらって領地経営に勤しんで生涯を終えたい、と常々思っておりますの。


 ですので、彼の国に嫁に行き、お飾りの王妃となって何年かで離縁して我が国に帰って来られる。子が出来ないのはどうしようもない事ですので、帰国したら、わたくしへの縁談はゼロになると思われます。となれば、生涯独身で領地経営しながら死ねる……。領地はどなたかに譲るか国に返せば良いわけですし。


 これは理想の人生への足がかりになりそうです。というわけで。彼の国からの結婚申し込みが来ましたら、是非! 嫁ぎたいと思いますわ! ああ、今から楽しみです!


 あら……でも、これが悪事に思われたら、わたくしのギフトが奪われて全身光りますかしら……? いえ、でも、予知夢を見続けるのは、結構疲れるのですよね。それも、未来が判ってしまうので、未来への希望みたいなのもあまり無くて……。でもギフトが奪われたら未来を見なくていいのですものねぇ。ギフトが無くて全身光る事と、ギフトがある生活と……どちらが良いのかしら?

お読み頂きまして、ありがとうございました。

あまり長くならない予定です。15話前後。

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