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ぼくは暗闇の中にいた。生半可じゃない暗闇だ。ここがどこなのか、何かあるのかもわからない――暗くて確認できないから当たり前なんだけど。
ぼくが知覚できるのは、今までの人生で一番の暗闇だけだ。光なんて微塵も感じない。光が存在することさえ疑わしい。墨汁を眼球に塗りたくってもここまで黒くはならないだろう。
その暗闇の中、ぼくは何をするでもなく佇んでいた、たぶん……。
「たぶん」ていうのは、あまりにも暗すぎて、自分が立っているのか座っているのか、はたまた横になっているのかさえ確信が持てないからだ。今までの経験から推測するに――足への微かな負担や、身体の緊張感とかだ――おそらくぼくは立っているんだろうけど。
なぜここにいるのかわからなかった。
理由もなくこんなところにいるわけがないから、何かあるんだろうけど心当たりがない。思い出そうとしても、記憶に霞がかったみたいにはっきりとしない。
唯一、はっきりしているのはぼくが暗闇の中にいることだけ……。
それと、暗闇のせいで確認はできないけど、ぼくはひとりぼっちみたいだった。光と同様に、誰の気配も感じないんだ。いつでもどこにいても、誰の気配も感じないなんてことはなかったのに。
その事実がたまらなく怖かった。一人でいることには慣れていて、むしろ好きなくらいなのに。
ぼくのことが嫌いな人間だろうが、知らない人間だろうが、誰でもいいから一人じゃないと感じさせてほしかった。そうすれば、ぼくを苦しめる恐怖から解放されるはずなんだ。
こんな状況ごめんだ。
一人でいることがこんなに怖いことだと知らなかった。
孤独がぼくを苦しめるとは思わなかった。
ぼくはここから抜け出せるのだろうか。