待ち人、来たらず
今日の海風は少し強めだろうか。
目を細めて水平線をなぞる。
漁に出ているであろう船、カモメ、照りつける太陽。
いつもと変わらない景色を、いつもと変わらず見つめ続ける。
……人を、待っているんだ。
ここで会おうと約束した人を。
どれだけの時間が経ったのか分からない。
でも、彼の人の足音が聞こえた。
待ち人に振り返る。
大きくなった背丈、大人びた服装、そして透き通った瞳に映る水平線。
それを確認できたのなら、もう十分だ。
静かに、静かに去ることにする。
「約束、したでしょ」
「置いていかないで」
強い海風が身体を揺らした。