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女性のくびれが好きな魔王の話

作者: 守 秀斗

 私は魔王だ。

 この世界を一応支配している。


 なぜ一応かと言うと私には嫁がいる。

 お妃様ということになる。

 こいつが強い。

 私の千倍は強力な魔法を使える。

 逆らったら私は殺されてしまう。

 実際のところ嫁の方が魔王だな。


 さて、唐突に告白するが、わたしは女性のくびれが好きである。

 大きな胸と盛り上がったお尻の間にある芸術的な曲線。

 素晴らしい。

 永遠に見続けていても飽きない。


 しかし、このことは周りの誰にも教えていない。

 女の腰のラインフェチと分かってしまっては、魔王の威厳に関わる。

 

 ちなみに我が妃様はスタイルがいまいちなんだな。

 寸胴体型ですね。

 顔はなかなかの美人なんだが。

 惜しいなあ。


 じゃあ、なんで嫁にしたんだって?

 向こうが勝手に押しかけてきたんだよ。

 結婚しなければ殺すって。


 さて、わが百階建て魔王城には大勢のメイドさんがいる。

 魔王の手下にふさわしく真っ黒系の恰好が基本だ。


 頭蓋骨デザインのペンダントをぶら下げたり、首にはトゲトゲの鋲が付いている首輪、意味もなく手枷、足枷を付けたり、顔面はゴスメイク。

 黒いスカートには深いスリットが入っている。

 失明してないけどわざと片目に黒い眼帯をつけていたりと、いろいろだ。

 メイドさんなのになぜか腰にはナイフを装着。

 ナイフの柄にも骸骨のデザインがされている。

 けど、私にとって正直そんなものはどうでもいい。


 全員にコルセットを着用させている。

 これが肝心である。

 もちろん腰のくびれが見たいからである。

 それさえあればいいや。

 他のいろんな付属品は嫁対策だ。

 嫁には、「どうだ、禍々しくて魔王城のメイドに相応しいだろう」と言い訳している。


 本当はゆっくりと女性の腰のくびれを触って堪能したいんだがなあ。

 私の嫁は嫉妬深いんだよ。

 ちょっとメイドさんを見ただけで、私はボコボコにされてしまう。

 仕方がなく、嫁に気づかれないよう、なるべく視界の端っこで見ることにしている。


 ある日、メイドさんに触ってしまった。

 わたしがうっかり床で滑ってよろけて、偶然肩に触っただけなんだけど。

「この不埒もの!」と嫁が魔法攻撃。

 そのメイドさんは嫁に瞬殺されてしまった。

 かわいそうに。


 私も嫁の魔法で吹っ飛ばされ、壁にたたきつけられた。

 全治百年となってしまった。

 百年間ベッドで寝たきり状態。


 百年後、ようやく魔王の間に戻ると愕然とした。

 メイドさんたちが全員上下黒いジャージ姿。それもダブダブ。

 顔もすっぴん。

 くびれも見えないし、色気も何もあったもんじゃない。

 浮気防止のためらしい。

 おもろーないぞ。


 仕方がないので、大きい砂時計を買ってきて眺める毎日だ。

 なぜ砂時計かと聞かれれば、丁度中央の辺りが狭くなって女性の腰を連想させるからである。

 我ながら情けないですな。


 ある日、嫁が支配地域に視察へ行ってくると城を出て行った。

「浮気したらボコってベッドに寝たきり状態にしてやるからね」と言い残して。

 やれやれ。

 それにしても視察とは珍しいな。

 まあ、嫁が実質支配者だからな。

 お任せするよ。


 さて、黒ジャージ姿の寸胴体型メイドを見ても仕方がないので、砂時計をぼんやりと眺めていると部下が飛び込んできた。

「勇者が城に侵入してきました」


 今時、勇者とは珍しいな。

 まあ、久々に相手にしてやるか。

 毎日、嫁の尻にひかれているのでイライラしている。

 鬱憤晴らしにボコボコにしてやろう。


 魔王の間で待ち構えていると、なんと女がたった一人で乱入してきた。

 なんだか随分肌を露出した恰好だな。

 なかなか勇敢な女だが、驚いたのはそのスタイルだ。

 素晴らしいくびれだ!

 顔も美人だが、とにかくスタイルのいい女だ。

 殺すには惜しいな。


 けど、こういう仕事している女性って、肌を過剰に露出してる人が多いけどなんでやろうね?

 危なくないのかね。

 男から見ると嬉しいけど。


 おっと油断大敵。

 たった一人でこの魔王城の百階まで来たんだから相当強いに違いない。


「覚悟しろ、魔王!」と女勇者が剣を構える。

「ハッハッハ、かかってこい勇者よ」

 今回は正統派で剣を使って戦うか。


 剣を交えると、意外にもあまり強くないな。

 片手でも簡単に倒せそうだ。

 利き腕で剣を振り回し、女勇者の剣をよけつつ、空いた方の片手で女の腰をさりげなく触る。

 感激だ。

 何百年ぶりのこの感触。

 素晴らしい。


 ついに女勇者は力尽きて床に這いつくばった。

「フフフフ、どうやら勝負あったな、勇者よ」

 女勇者が震えている。

「魔王様、お願いですから命だけはお助け下さい」


 うーむ。

 本当はいろいろといやらしいことしたいんだけどな。

 しかし、どこに嫁のスパイがいるかわかったもんじゃない。

 嫁本人が魔法を使って監視しているかもしれん。

 私は女勇者にそっと囁いた。


「腰を触らせろ、そしたら命は助けてやる」

「え、それだけでいいんですか」

「それだけでよい。とりあえず死んだふりをしろ」

 

 床に横たわった女勇者。

 何度も言うが素晴らしいくびれだ。

 さて、生死を確かめるふりをしながら、さっそくこの腰のくびれを堪能しようと思ったら、あれ、いつのまにか寸胴体型になっている。

 顔見ると、なんと我が嫁ではないか。


 私は仰天して腰を抜かす。

「なんで、お前がいるんだよ」

「勇者に化けて、あんたが浮気しないか確認しにきたのよ」


 私は恐怖にかられて魔王の間の隅っこに逃げ出した。

「浮気したらボコってベッドに寝たきり状態って言ったよね」

 怒った嫁がゆっくりと近づいてくる。


「ちょ、ちょっと待て。だますなんてひどいじゃないか」

 このままだと千年ベッドに寝たきり状態になってしまう。


「これは浮気じゃないぞ」

「じゃあ、何よ」

 もう真実を言うしかない。


「私は女性の腰のくびれが好きなんだよ」

「は?」

「だいたい、お前、あんなスタイルがいい女に化けることが出来るんなら、腰のくびれなんて簡単にできるんじゃないのか」


「なんだ、そうなら最初から言えばいいじゃない」

 嫁が魔法でスタイル抜群の体型になった。

「おお、これだよ、これ。感激だ」

 私は思わず嫁の腰にすがりつく。

 もう我慢できなくなって、その場で押し倒そうとすると、

「ちょ、ちょっと待って、寝室に行きましょうよ。交えるのは剣じゃなくてね」

 どうやら嫁も機嫌がよくなったようだ。


 やっぱり夫婦は、お互い意思疎通をちゃんとしなきゃいけないね。


(終)

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