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1.旅の始まりの始まり

注意事項

・文を書くのがドヘタクスォなので、かなり読解力を必要とします。たぶん。

・深夜テンションで書いています。設定上の矛盾などありましたら、嘲笑いながら都合よく解釈してください。

・確認はしておりますが、その他問題点がある可能性が高いです。


これらをご了承の上、お読みください。

 ――ああ、今日も平凡で、退屈で、やたらと疲れる1日だった。


 なんとなく全身、主に手が青臭い。ついでに怠い。全部、薬草採集とかいう依頼(クエスト)のせいだ。

 薬草採集だって大事な依頼(クエスト)だっていうのはわかっている。報酬も低くはないし。でも僕がしたかったのは、もっと刺激的な、例えばワイバーンを討伐したりするような、そんな大冒険なんだ。魔物の1匹もいない森で、狩人に見守られながら這い回るような雑用じゃない。


 もうとっくの昔に陽も落ちている。僕が歩く大通りは、酒飲みたちの陽気な笑い声や、色々な料理の食欲をそそる匂い、仕事終わりの満足げな人々でごった返している。下を向いて歩いているのは僕ぐらいだろう。


「ん? アランじゃねーか」


 酒場の酔っ払いの1人…もとい、冒険者の先輩に声をかけられた。


「どうしたんだよ、そんな顔して。それより一杯どうだ? 奢るぞ?」

「……今日は疲れたのでもう寝ます」

「ん、そうか。ゆっくり休めよ」


 ふと横を見ると、灯りの消えた店の窓に映る自分と目があった。くすんだ茶色の目が僕を見ている。目の下には大きな隈をこしらえていて、ボサボサに伸びた赤毛を後ろで雑にまとめている。浮浪者一歩手前、いや半歩手前か。

 たしかにしみったれた顔だ。


 とりあえず明日に備えよう。ギルドと提携している浴場に行って、体を洗う。宿に帰ったら即寝る。今日は以上。

 明日は朝イチでギルドの支部(ロッジ)に行って、依頼(クエスト)を確認。宿を変える必要があれば、荷物をまとめて次の宿へ。


 いつも通りに。



 ・ ・ ・



 馬車は好きだ。

 僕の場合、荷物は肩掛けカバンひとつで事足りるし、揺れはひどいけど、自分の足で歩く必要がないのはとてもいい。それに、同乗者がいるということは、1人で歩くよりはるかに安全、かつ楽しい。


 僕は今、馬車に揺られて次の町へと向かう途中だ。同乗者の多くは冒険者らしく、依頼(クエスト)の詳細が書かれた紙を見ていたり、怪物図鑑を読んでいたりする。

 今朝までいた街、フォルタスはかなり大きな港湾都市だったけど、目的地であるフィンデルは少し大きい程度の農村だ。町を囲む城壁も無く、冒険者ギルドの支部(ロッジ)は出来たばかりで、同業者もそこまで多くない。

 2回行ったことがあるけど、静かで平和な町だった。


 でも、今回受けた依頼(クエスト)は、そんな長閑な田舎町で起きた猟奇殺人事件の真相解明だった。


 衛兵が現場を見たけど、どう見ても魔物(モンスター)の仕業だったから、知識ある専門家である、冒険者に調査を依頼してきたということだ。

 でも、この事件では誰も犯人を見ていない。つまり、犯人がどんな魔物(モンスター)なのか……本当に魔物(モンスター)がしたことなのかもわからない。


 そこで、僕の出番というわけだ。


 僕はそこらのゴブリンも楽に倒せないほど弱い。これは認めざるを得ない事実だ。

 だから、僕は知識を身につけた。魔術学院の教授たちにも負けない自信がある。この知識を使って事件の犯人を特定するのが、僕の()()だ。


 今回の依頼(クエスト)は、もう1人の冒険者と協力して遂行することになっている。もし僕が犯人と鉢合わせても、バラバラにされてしまわないように守ってくれるとのことだ。しかも冒険者ギルド・フォルタス支部(ロッジ)の受付曰く――


 期待の新星。凄腕の弓使いであり、短剣の達人。

 数少ない狼系の獣人であり、一際目を引く白髪が印象深いことから、「アルバーシルの白狼」と呼ばれている、と。

 アルバーシルは、ここから遥か北にある辺境だ。1年の半分近くは雪が降ると聞く。フォルタスからは飛空艇でも1週間はかかる、極寒の地。


 そんな遠くからでも、噂は聞いたことがある。飛行中のワイバーンの目を射抜いて撃ち落としたとか、高位悪鬼(ウルク)の戦士に剣での決闘を挑まれ、一撃で勝利したとか。現実味のない噂だ。一体どんなホラ吹きがそんな話を広めたのか。

 きっと、僕なんか目線だけで殺してしまうような恐ろしい化け物だ。


「お客さん方、そろそろフィンデルだよ」


 御者の声に顔を上げると、前方に小さな家々が見えた。

 馬車はゆっくりと町へ入っていき、町の中心の広場にある井戸の前で止まった。

 待ち合わせ場所は広場に面した、ギルド併設の酒場。昼間だけど、客がいないわけではないらしく、賑やかな話し声が漏れている。


 酒場に入ると、やはりまあまあの人数がいた。なんとなく全体が酒臭い。酔っ払いを躱しながら「白狼」を探す。白髪に狼の耳を。


「なあなあ、獣人の――」


 ひとりの酔っ払いの声が聞こえた。

 この辺りには獣人は滅多にいない。

 声のした方に行ってみると、酔った若者(僕より年上に見える)が、白髪の獣人に声をかけているところだった。でも、なんというか……


「君みたいな()()()()()()()は、こんなとこにいるべきじゃないだろう? 」


 あの娘は本当に「白狼」なのだろうか。想像していた殺戮マシーンとはかけ離れている。というか、女の子だったのか。僕より年下なんじゃないか。

 端のテーブルのさらに端の席に座っているのは、たしかに白髪で、狼の耳を生やした少女だった。白磁のような肌と、絹糸のような白髪。淡いピンク色の柔らかそうな唇。大きな瞳はアメシストのような透き通った紫色。顔立ちにはあどけなさが残るけど、解読不能の無表情に芸術品のような気高い美しさがある。黒いローブからちょこんと出ている白い両手でジョッキを持っている。…何を飲んでいるんだ?


 思わず見惚れていると、こちらと目が合った。彼女はジョッキを一気に傾けると、滑らかな動作で立ち上がり、


「え、ちょま」


 ナンパ男を華麗に避けて僕の目の前まで来た。僕より頭ひとつは小さい。カウンターの店員に代金とチップを渡して、僕の目をじっと見てくる。……とても恥ずかしい。


「アラン・ウォーカー?」

「あ、うん…」

「来て」


 そう言うやいなや、彼女は僕の手を引いて歩き始めた。

 少しひんやりとした感触が左手から伝わってくる。小さいけど、鍛え上げられた硬い手だ。

 酒場から出て、人通りのない路地裏でようやく解放された。


「ごめんなさい。あまり人に名前を聞かれたくなかったから」


 そういえば、誰からも「白狼」の実名を聞いたことがなかった。聞かれたくない事情でもあるのだろうか。


「私はヘレン。ヘレン・レナルト。よろしく」

「うん。よろしく、ヘレン」


 握手を求められたので、喜んで応えた。無表情だけど、意外と親しみやすい性格らしい。


「アラン、早速だけど、現場を確認しに行きたい。荷物は?」

「ああ、大丈夫」


 僕は肩掛けカバンをヘレンに見せた。

 ヘレンは不思議そうにカバンを見ていたけど、ネタばらしは後にしよう。この技術はあまり知られたくない。


「行ってみようか」

「……うん、わかった」

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