孤児院の妹分が、実は王女様?
幼少期、僕はお姫様と同じ孤児院で暮らしていた。
お姫様は政争から逃れるために一時的に孤児院に預けられていたらしい。
大人の事情を知らない僕はお姫様のことを本当の妹のように思っていた。
一緒に野山を走り回ったり川で泳いだりして、毎日が楽しかった。
けど、ある嵐の夜、お城から兵隊が沢山やってきて、お姫様を連れて行ってしまった。
「やだ! お城になんて行きたくない!
お姫様になんてなりたくない! お兄ちゃんと一緒が良い!」
「離せよお前等!
シェリーを連れていくな! シェリーは僕の妹だ!」
僕は兵士に掴みかかる。
だが、子供の僕は、あまりにも無力だった。
「待っててシェリー、絶対、助けに行くから!
僕がお城から連れだすから!」
僕はシェリーを救うために、必死に勉強した。
孤児の僕でも賢くなればお城で働けるかもしれない。
王様にはなれないかもしれない。
けど、王様の次に偉い人にはなれるかもしれない。
そうしたらシェリーと会えると思ったんだ。
王国歴百年一月。
ルーリン教会に信託が下りる。
――百日後、王族の血を捧げることにより、魔王が復活する。
信託の予言する未来が真実であると証明するかのように、ある夜、王城からひとりの王族が姿を消す。
その名は、シェリー・ライフスグレッグ・ガーランド。
かつて、僕の目の前からお城に連れ去られた少女だ。
ガーランド国王は国中にお触れを出した。
シェリーを救出し、魔王の復活を阻止した者に、望みのままの褒美を与えると。
文官志望だった僕に、大した戦闘力はない。
しかし僕は冒険者ギルドに行き仲間を募り、旅立つことになる。
シェリーを救い、王様から褒美を貰うのだ。
それは、シェリーと一緒に過ごした懐かしい日々。
これから始まるのは僕の物語だ。
魔王の復活は阻止できないし、騎士団長が実は悪人で敵に回るし、僕は心底へこんで心が折れそうになる。
けど、僕の隣にはいつも、世界最強の頼れる仲間達がいたんだ。
仲間達は挫けそうになった僕に、いつも、手を差し伸べてくれた。
そして、最後、僕は魔王軍参謀になって人類と敵対する。